第147話 懐かしい顔ぶれ


 ブラッドリーの街の冒険者ギルドを出て、もう一度エガートンの街に転移してリリスさん達のパーティハウスに伝言を残し、そのまま冒険者ギルドにも伝言を残しておいた。


 一度元の世界に戻って母さんと守さんに明日から4日間出掛けることを伝えておく。今週がまだ夏休みの間でよかったよ。……いや、今回の場合はたとえ夏休みでなくても、学校をズル休みしてでも異世界に行っていたか。


 明日からギルダートさんが訓練相手を集めてくれているが、それまでに俺もすることがある。俺の使える手札の再確認だ。


 今までは魔物を相手にすることが多かったが、今回は対人戦だ。大魔導士の家にある装備や魔道具の中で対人戦に特化したものを選んでおこう。そして俺が使える魔法の中で対人戦に使える魔法や戦略を考えよう。


 別にこの国がバードン国になろうと、第一王子や第二王子が処刑されようと俺にはどうでもいい。だがサーラさんが処刑されるなんてことだけは決して許すわけにはいかない!






 そして次の日の朝、まずはエガートンの街へ向かい、リリスさん達のパーティハウスへ向かった。


「おう、マサヨシ。久しぶりだな!」


「お兄ちゃん!」


「マサヨシ様、お久しぶりですね」


「マサヨシ兄さん、伝言見たぜ」


「リリスさん、ネネアさん、ルルネさん、ノノハさん! よかった伝言見てくれたんですね。急にこんな頼みごとをしてすみません」


「ちょうど依頼が終わって昨日街に戻ってきたところだったから運がよかったぜ。それにマサヨシからの頼みごとだからな! 何をおいても最優先だからな!」


「ありがとうございます、本当に助かります……ってあれ!?」


「おう、マサヨシさん。久しぶりだな!」


「マサヨシさん、久しぶりっすね!」


「イアンさん! それに鋼の拳のみなさんも! お久しぶりです」


 ここはリリスさん達のパーティハウスの前なのに、なぜかイアンさん達も一緒にいた。イアンさんはCランク冒険者パーティである鋼の拳のリーダーだ。パーティメンバーである他の3人もいる。


 運悪くワイバーンの群れに襲われていた時にたまたま出会ったんだよな。解体の仕方を教えてくれたり、冒険者ギルドで絡まれていた初心者冒険者の指導をお願いしたことがある。


「今日の朝いきなりパーティハウスにやってきたんだ。話を聞いたらマサヨシの知り合いだと聞いたぞ」


「冒険者ギルドに行ったら、たまたまマサヨシさんからリリスさん達宛の伝言を見つけてな。何やら対人戦闘の訓練相手を探しているって話じゃねえか。ちょうど今は依頼もないからな。リリスさん達程じゃねえけど、ちっとは手伝わしてもらうぜ!」


 そういえばイアンさん達もこのエガートンの街を拠点にしていたんだっけ。それで冒険者ギルドにあったリリスさん達宛ての伝言を見てわざわざ来てくれたのか。


「ありがとうございます、とても助かりますよ!」


「俺達もあの後いろいろとあって今じゃBランクパーティに昇格したからな。あの時マサヨシさんがワイバーンの群れから助けてくれたおかげだ」


「おお、それはおめでとうございます!」


「あのあともいろいろと大変だったよ。なにせ受ける依頼の3割くらいであの時みたいにイレギュラーな魔物が現れたり、魔物の群れに出くわしたりしたんだよ。間違いなくリーダーの運がないせいだからな」


「おい! だからあれは俺のせいじゃないって言っているだろ。たまたま運が悪かっただけだ!」


「なんとか毎回生き延びて、無駄に経験を積んだおかげでBランクになれたから、ある意味リーダーのおかげなんだよな」


「だから俺のせいじゃねえって!」


 相変わらず仲の良いパーティだ。そうか、イアンさん達と出会ってから数ヶ月は経っている。いつの間にか冒険者パーティのランクも上がっていたらしい。


「それじゃあ時間もないんだろ。俺達は何をすればいいか教えてくれ」


「はい、伝言にも書きましたが、みなさんにはこれから3日間の間俺と戦闘訓練をしてほしいんです」


 リリスさん達はAランク冒険者パーティで、その実力は何度も見ている。今回対人戦の訓練をするにあたってどうしても頼みたかった人達でもある。それにBランク冒険者パーティになったイアンさん達の力も借りられるのも大きい。


「まずはブラッドリーの街の冒険者ギルドまで移動しますね。そこでギルダートさん達と合流します」


「おう!」


「だがマサヨシさん、エガートンの街まで結構な距離があるぜ?」


 そうか、イアンさん達はまだ俺が転移魔法を使えることは知らないんだったよな。今は非常事態なので、もうそのあたりの情報は隠している暇はない。


「そのあたりは大丈夫です。それでは行きますよ」


「んん?」


「どういうこと?」


 そのあとは転移魔法を使い、一瞬のうちにブラッドリーの街付近に移動した。さすがに俺を含めて8人も長距離転移させると極大魔法ほどではないが、多少の疲労感は出るな。


 ものすごく驚いている鋼の拳パーティの人達やリリスさん達に現状の説明をしながら、ブラッドリーの街の冒険者ギルドを目指す。


 みんなからも大魔導士を継ぐ者の情報を集めたのだが、さすがに今までで知っていること以上の情報は出てこなかった。

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