第134話 アルバイト2日目の夜
「疲れた……もう動けん……」
「昨日よりも忙しかったわね。初めてアルバイトしたけれど、やっぱり働くって大変なんだね」
「僕も動けない……物販の仕事も意外と大変なことがよくわかったよ。立原くんはどうだった? 今日はずっと裏で働いていたみたいだけど」
「ああ、裏方も結構大変だったよ。あと卒業したらぜひうちで働かないかって誘われた」
「すげえな!?」
そう、今日は一日中裏方の仕事を手伝っていたのだが、仕事が終わった後に俺に指示を出してくれていた人から、卒業後はウチに来てほしいと言われた。社交辞令かと思ったのだが、名刺までくれたし、たぶんガチだ。確かに他の人の倍くらい働いてたからな。
「何にせよこれでバイトも終わりだな。昨日今日頑張って働いた分、明日はガッツリ遊ぼうぜ!」
「そうだね、海で遊んで夜は花火とかもやろうよ!」
「ゆかりも明日は1日休みだから一緒に遊べるって。あと夜は一緒にバーベキューをしないかって」
「おお、最高じゃん!」
海で遊んで夜はバーベキューをして花火とか最高すぎる! しかも川端さんに佐山さんと、可愛い女の子が2人もいる。これはついに俺もリア充の一員となれたと言っても過言ではないのだろうか。
「おっと、そろそろ時間だな。悪いけどまた茂木さんの相手をしてくるよ」
「ああ、いってらっしゃい」
「怪我しないように気を付けてね!」
茂木さんの練習相手になっていることはみんなに伝えてある。最初は川端さんに見学したいと言われたけれどさすがに断った。
昨日連絡をもらった時も茂木さんは真剣そうだったから、女の子はいないほうがいいだろう。というより茂木さんが気にならなくても、俺がいいところを見せようと変に動いてしまいそうである。
「はあ、はあ……。兄貴、ありがとうございました。マジ勉強になりました」
「少しは役に立てたみたいでよかったよ」
今日もひたすら茂木さんとスパーをした。この2日間で茂木さんも少しずつ俺の速さに慣れてきたようで、最初の頃よりもだいぶ反応できるようになってきた。速さに慣れるという意味では少しだけ役に立つことができた気がする。
昨日と同様にタクシーで宿に送ってもらう。俺の宿に寄ってもらってから、茂木さんのホテルへ向かってもらう予定だ。
「それにしてもマジ凄いっすね。昼間あれだけ働いて、今もあんなに動いたのにまったく疲れてないじゃないっすか!」
「なんだかんだで裏方だったからね。後半はそれほど重い荷物もなかったし。それよりも茂木さんのほうこそ控え室ですごい忙しそうだったけど大丈夫なんですか?」
「いえ、俺のほうの準備はヤバい忙しいんすけど、当日は衣装を合わせて最終確認するだけなんでたいしたことないっすよ。それにライブが終わっちまえば後片付けもほとんどないんで楽なもんですよ」
とてもそんなふうには見えなかったけどな。ライブ前はあれよりも忙しいのか……やっぱり働くってことは大変なんだな。
「今度試合があるんでぜひ見に来てください。今回はガチで優勝目指しますんで!」
「時間が空いてたらね」
格闘技の大会かあ。正直に言ってそこまで興味はないんだけどな。とはいえ一度くらいは見に行ってみたい気もするし、時間があったら行ってみようかな。
「ん!? 運転手さん、ちょっと止めてください!」
「は、はい!」
「兄貴、どうしたんすか!?」
「気のせいかな……今向こうのほうでチラッと誰かが喧嘩していたのが見えた気がする。運転手さん、ちょっとだけ見てくるので、ここで待っててください」
「わ、わかりました」
「兄貴、俺も行きます!」
さっき通った路地裏の奥の方で誰かが殴られていたように見えた。薄暗く遠くて狭い道で、車に乗っていたため一瞬しか見えなかったが、身体能力が上がっている俺の目で捉えることができた。
気配察知スキルを使って確認すると、やはり人の気配が7つ反応している。仲間内での軽い喧嘩だったらいいが、本気の殴り合いとかだったらさすがに止めに入ろう。
「茂木さんは少し下がっていてください。様子を見て仲間内での軽い喧嘩とかなら戻りましょう」
「了解っす!」
「ち、シケてやがんな。3万しか持ってねえじゃん!」
「そんだけしか持ってねえなら、さっさと出せば痛い目見なくて済んだのによお」
「嘘こけ、素直に出してもサンドバッグの刑は執行していたくせに」
「あ、バレた? 今日はパチンコで3万も負けてイライラしてたんだよね。ちょうどいいカモを見つけてラッキー! ついでに10万くらい持ってりゃよかったのによ」
「た、頼む……もう許してくれ……」
「はい残念〜ま、運が悪かったと思って諦めな。おら、もう一発行くぞ!」
「ひいいいい!」
「死ねええええ!!」
バキッ
「ぐわっ!」
「ちょ、待ってくださいって! 俺が行くから待ってと言ったじゃないですか!」
「いくら兄貴の命令でもこれは聞けないっす! 俺はこうやって大勢でひとりを囲むやつらが一番ムカつくんすよ!」
「いや、だからって今あなたが手を出したらまずいでしょうが!」
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