第126話 尋問


「社長、助けに来やしたぜ!!」


「バインド!」


「ぐわ、なんだこれ!?」


「ぎゃあ!」




「おら、本当に撃つぞ! さっさと手を挙げろ!」


「バインド!」


「うお! なんじゃこりゃ!」


 さっきから日本刀を持ってきたり、銃を持ってくるのはいいんだが、いきなり襲ってきたり全員で同時に攻撃したりはしてこない。


 アメリカでもあるまいし、平和な日本でいきなり刀を振り回したり銃をぶっ放すなんてこと、いくら犯罪者集団でもやれないか。それに詐欺師集団だし、実際に銃を撃ったことがあるのかも怪しい。


「ち、ちくしょう、ふざけやがって!」


 ダァン


「な、なに!?」


「バインド!」


 などと思っていたら銃を撃ってきたやつもいたが、障壁魔法によって弾丸は俺に届くことはなかった。


 とりあえず気配察知スキルで誰かがやってくるたびにひたすらバインドで拘束していく。そして20人ほど拘束したところで誰も上の階に上がって来なくなった。


「さて残りのやつらを捕まえにいくか」


「お、おまえは何なんだよ!」


 騒いでいるやつもいるが、無視してさっきみたいにスマホで連絡を取れないようきつめに拘束をした。仲間を呼ばれたところで問題ないが、一応な。


 気配察知スキルによると残りはあと10人ちょっとか。さっさと捕まえに行くとしよう。




「ひい、どうしてここが!?」


「バインド」


 残念ながらどこに隠れていても気配察知スキルがあるから、場所は丸わかりなんだよな、これが。残りは5人でビルの入り口にいる。


「どうしてだよ! なんで開かねーんだよ、クソが!」


「ここから出せよ!」


 自動ドアは開いている。何もない空間、しかしそこには見えない壁があった。ビルの入り口と窓にはフー助が張ってくれた障壁魔法による見えない壁がある。


「バインド!」


「きゃあ!」


「うお!」


「よし、フー助、ありがとな。悪いけどこのビルに入ってくるやつがいたら、とりあえず中に入れて障壁魔法で閉じ込めておいてくれ」


「ホー!」

 

 このビルにいたやつらは全員捕まえることができた。結局怪我をすることもなかった。やはり異世界とは違って、こっちの世界では魔法が使えるだけで圧倒的だ。


 だが今回はむしろこれからが本番だ。トラ丸のおばちゃんのお金を取り戻し、あの女の子に乱暴しようとしたこいつらに2度とこんな犯罪行為をさせないようにしなければならない。






「……ふざけやがって! 絶対にてめーの正体を突き止めて地獄を見せてやる!」


「くそったれ、ぶっ殺してやるからな!」


 とりあえず下のフロアで拘束したやつらは放っておいて5階フロアに戻った。最初に武器を持ってこの部屋に踏み込んできたやつらは、拘束されているにも関わらず威勢がいい。


 だが頭にきているのはこちらも同じだ。詐欺行為だけでなく、女の子にまで乱暴しようとしたこいつらは許すわけにいかない。まずはこいつらを黙らせて、お金のありかと、女性に乱暴した動画を消さなければならない。


「とりあえず黙れ。これからお前らに聞きたいことがある。聞かれたことにだけ黙って答えろ」


「うるせーボケが! ぶっ殺してやる!」


 最初にこの部屋に突っ込んできた大柄な男が叫び出す。多分こいつが荒事などを対応しているのかもしれない。つまり、こいつを黙らせれば他とやつらも静かになるということだ。


 大柄な男の腕の拘束だけを外して、男の右手を掴んだ。

 

「ああん!? なにしやがるんだてめえ、離しやが……ぎゃあああああ!!」


 ゴキバキボキ


 大魔導士から継承した力で、大柄な男の右手をおもいっきり握り潰すと骨が砕ける嫌な音と感触がした。冷静沈着スキルを使って心を落ち着かせていても少し嫌な気分になる。


「あがが……」


 男の腕は変な方向にねじ曲がり、プレス機で潰されたようにひしゃげている。


「ヒール」


「うぐぐ……な、なに!? いきなり折れていた右手が治りやがった!?」


 回復魔法を唱えると大柄な男の潰れていた腕が一瞬で元通りとなった。それを見て本人も周りにいたやつらも目を丸くしている。


「知っているやつもいるかもしれないが、俺は超能力が使える。今のは回復能力だ。つまり俺は何度でもお前らを。他に試してみたいやつはいるか?」


「「「………………」」」


 さすがに脅しがきいたようで、先程まで騒いでいたやつらが一気に黙った。この回復魔法は拷問にも使えてしまうんだよな。


「さて、まずは女性への暴行の動画はどこにあるか教えてもらおうか?」


「「「………………」」」


 今度は黙秘か。お互い顔を覗き合い、この状況で話していいものなのかを考えている。特に社長と呼ばれていた男は他の者を睨みつけ、何も話すなと言わんばかりに睨みつけている。


 本来なら1人ずつ個室に分け、誰が自白したか分からないようにしたほうがよいのだろうけど面倒だ。それにこんな犯罪者集団に気をつかう必要もない。そこの社長とやらに協力してもらおう。


「な、なんだ、なにをする気だ。言っておくが俺に手を出したら俺の仲間が黙っていないぞ! お前だけでなく家族や友人まで破滅に追い込んで……」


 パキャ


「ぎがあああっ………………」


 社長と呼ばれていた男の股間に足を置き、


 男は一瞬で悶え、一言だけ悲鳴をあげてそのまま気絶してしまった。おう、玉を潰されるとこうなるのか……


 冷静沈着スキルを使っている俺でも股間がヒュンとなってしまった。仮面があってよかった、あくまで他のやつらには冷酷な姿を見せなければならない。そして俺はここでを告げる。


「さて、この男は気絶してしまったか。では黙秘する者には順番に同じことをしていくとしよう。それでも喋らないようなら、回復能力を使って今の地獄の苦しみを味わってもらうとするか」


 そこから先は気絶した社長を除く全員がすんなりとすべてを話すようになった。

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