第53話 パーティへの勧誘
「……ああ、美味かったな」
「……おなかいっぱいニャ」
「……もう動けねえ」
「……動けませんわ」
「……満足ですね」
あれから1時間後、リビングに大の字になっている5人がいた。
俺もドラゴンカツを食べてみたが、大満足の味だった。焼いた肉に塩胡椒、黄金の味、おろしのタレも美味かったが、カツにソースも全然アリだ!
獣人のみんなも満足してくれたようで、かなりの量のドラゴンの肉を消費した。とはいえさすがにもともと取れた肉の量が半端じゃなく多いので、まだまだ余裕はあるがな。
「悪かったな、まさかこんなに美味しいとは思わず、貴重なドラゴンの肉なのに食べられるだけ食べてしまった」
「いえ、これだけ美味しそうに食べてくれるとこちらもとても嬉しいですから」
料理をする人にとって美味しそうに食べてくれる人を見ているだけでも嬉しいものである。それに加えて今回は俺自身もドラゴンの肉を楽しめたので言うことなしだ。
「……なあマサヨシ兄さん、このままうちらのパーティに入るとかどうだ? 料理に釣られたわけじゃないけど、マサヨシ兄さんなら強いし、何よりうちらとうまくやっていけそうだ」
「いいな、それ! リーダーの座なら迷わず譲るぞ! 一緒に冒険しないか?」
「賛成ですわね! いかがでしょう、マサヨシ様?」
「お兄ちゃん、一緒に冒険しようニャ!」
「………………」
突然のパーティの勧誘に少しだけ驚いた。まだみんなとは出会って少しなんだが、パーティに入っていいとまで言ってくれるなんて嬉しい限りである。
「……とっても嬉しいお誘いなんですけれど、実はとある理由がありまして、ずっとこの街に留まることができないんです。大変申し訳ないのですが……」
パーティへの勧誘はとても嬉しいのだが、俺には元の世界での生活もある。冒険者になってしまうと数日かけて遠征することもあるだろうし、放課後や土日しかこの世界に来ることができない俺にとっては難しい。
さすがに元の生活をすべて捨ててこちらで生活するということは今は選ぶ気もない。
「そっか、残念だ。だが、気が変わったらいつでも言ってくれよ! 俺達はいつでも大歓迎だからな!」
「ありがとうございます! あっ、でも冒険者の活動とかは興味があるので、もしよろしければ今度時間があるときに皆さんの依頼にご一緒してもよろしいですか?」
「大歓迎だニャ!」
「ええ、いつでも歓迎しますわ!」
パーティへの加入は難しいが、依頼に参加とかはできそうだし、冒険者体験とかやらせてもらおうかな。
そのあとはのんびりと過ごしながら、みんなのこれまでの冒険譚を聞かせてもらった。さすが若いながらにA級冒険者に上り詰めただけあっていろいろな話が聞けてとても楽しい時間を過ごせた。
「それではとても楽しかったです。また時間のある時にお邪魔しますね!」
「ああ、いつでも来てくれよな」
「いつでもお待ちしておりますね」
「お兄ちゃん、またね!」
ネネアさんがまた抱きついてきた。この子は結構な甘え癖があるのか、さっきパーティハウスにいた時も俺だけじゃなく、リリスさん達にもすぐに抱きついていた。一人だけ小柄だと思っていたが、孤児と言っていたし、もしかしたら彼女だけ結構年が離れているのかもしれない。
「うん、またすぐに来るね!」
「ふにゃあ!」
ネネアさんの頭を撫でる。頭と一緒にモフモフとした彼女のネコミミを撫でると、とても気持ちよさそうな顔をしてくれる。俺にも妹がいたらこんな感じなのかもな。おっと、あまり撫ですぎると何かに目覚めてしまいそうだ。
「それでは失礼しますね」
「……マサヨシ」
「は…………ええ!?」
ギュッ
「リ、リリ、リリスさん!?」
いきなりリリスさんが抱きついてきた!女性特有の柔らかな感触が鎧越しに伝わってくる。そしてふわりとしたいい匂いのする髪が鼻をくすぐる。
「……ああ、すまん。ちょっと飲み過ぎて足がふらついちまったみたいだ。いろいろと本当にありがとうな! またいつでも来てくれ!」
そう言いながらスッと離れていくリリスさん。
「えっ、あっ、はい! こっ、こちらこそいろいろとお世話になりました。また来ますね!」
なんだか気恥ずかしくなって、足早にみんなの家から離れた。
びびび、びっくりした! うわ、たぶん今俺の顔は真っ赤になっている気がする。リリスさんも普段は男勝りな性格をしているんだけど、やっぱり綺麗な女性なんだよな。
すっごくいい匂いもしたし、お酒も飲んでいたからだと思うけど、顔もちょっぴり赤くなってとても可愛らしかった。ネネアさんみたいに頭のネコミミを撫でたい衝動に駆られたが、なんとか我慢することができた。
……お酒に酔ってふらついたって言ってたけど本当なのかな?くそっ、女性とあまり触れ合ったことのない俺にとって女心なんて微塵もわからない。うわ〜なんだか悶々するな!
「……リリス」
「……ずるいですわ」
「……ずるいニャ!」
「なっ、なんだよ! おまえらだって昼間はあんなにくっついていたんだから俺だっていいだろ!」
「まったく、油断も隙もないな」
「……でも残念でしたわね、マサヨシ様がパーティに入ってくれればよかったのですが」
「マサヨシ兄さんもあれだけ強ければいろいろやることもあるんだろう。もしかしたらそれこそ国の命運をかけた依頼とかも受けてるかもな」
「また会いには来てくれそうだし、今はそれでよしとするか」
「そうですわね、結局またお世話になってしまいましたし、今度は私達がマサヨシ様の力になれると良いですわね」
「早くまた会いたいニャ!」
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