第51話 大きな借り

 

 というか、ドラゴンの肝からできた秘薬をほとんどもらえるのなら、こちらが受けた損害などほとんどないのだが。


「結局ドラゴンの肝からできた秘薬分はほとんど頂けたのでそれで大丈夫ですよ。そうですね、それでは秘薬1瓶の2000万Gだけいただきますね」


 テーブルに置いてある大金貨100枚から20枚分だけいただこうとする。


「いや、それはいくらなんでも少なすぎるぞ!」


「いえ、お金に関してはドラゴンの他の素材や、ワイバーンの素材も大量に手に入れられましたから、今はそれほど必要としていないんですよ」


「そうは言っても俺達の命を救われているし、あまり遠慮はしないでほしい」


「う〜ん、とはいえリリスさんが危なかった時も少し前から様子を見ていましたからね。そもそも、もっと早くに加勢していたらよかったわけですし……それにみなさんが先にドラゴンと戦って体力を削ってくれていたおかげで、俺もドラゴンを倒せましたから」


「いえ、勝手に加勢して後で報酬を請求する寄生パーティもおりますから、声をかけてから加勢するか、そのまま加勢しないのが当然ですわ」


「それに残念だが俺達の攻撃じゃドラゴンにはダメージを与えられていた様子もなかったよな。ルルネの上級魔法をあそこまで耐えて地面に落ちないのはさすがに計算外だった」


「……そうですわね。さすがの私もあれはショックでしたわ。戦う以前に地面に落とすこともできないなんて……」


「ルルネちゃんのせいじゃないニャ! ネネアもドラゴンが飛んで攻撃してくる時になにもできなかったニャ……」


「俺もタンクなのに最後はリリスを守ることができなかったな……」


「はっ、俺なんか挑むべき技量ではないのにドラゴンに挑んで、撤退のタイミングは間違えるわ、最後はマサヨシが助けてくれなきゃ死んでいたぜ……」


 ズウゥゥゥゥン……


 なぜかいきなり反省会が始まり、いきなり空気が重くなってしまった……


「ま、まあ結果オーライですよ! 結果的に領主様も含めて全員助かったわけですから! それに皆さんがドラゴンに挑んでいなければ、領主様がドラゴンの肝を必要としていることを俺は知らなかったので、領主様を助けることはできませんでしたから!」


「……そうですわね。結果的にマサヨシ様に助けてもらえたわけですから」


「……結果的にはマサヨシ兄さんにも出会えたわけだしな」


「そうですよ! ほら、みんなよかったということで! それじゃあ、2000万Gだけ受け取ってあとは貸しということにしてくれませんか? 今お金はそれほど必要ではないので、俺が困った時に力を貸してくれるととても助かります」


 さっきの鋼の拳のイアンさん達みたいに、困った時に冒険者に知り合いがいるとすごく助かる。なにか食材を依頼するのもいいかもしれない。


「……大きな借りだな。でも本当にいいのか? 俺達にできることなんてマサヨシならなんでもできそうだと思うが」


「実は旅をしているので、この国にあまり知っている人がいないんですよ。何か起きた時に頼れる人達がいると安心できますから」


 正直今回のドラゴンを倒したことで、こっちの世界のお金は十分なほどに集まった。それこそ家賃もかからないから普通に生活していれば、一生を過ごせるくらいにはありそうだ。


「……わかった、感謝する。もちろん現金が必要になったら、すぐにでも用意するからいつでも言ってくれ」


「ええ、何か困ったことがあったら声をかけさせてもらいますね」


「いつでも声をかけてくださいね!」


「ああ、俺たちにできることならなんでもするぞ!」


「ネネア達に任せるにゃ!」


 よかった、どうやら奴隷うんぬんの話は忘れてくれそうだ。……少しだけ残念とか思ったりしなくもなくもない。


「そういえばマサヨシの方の目的は達成できたのか?」


 ギクッ! そ、そういえば俺はなんか崇高な目的があると勘違いされていたんだった!


「何言ってんだよリリス、あんな強いマサヨシ兄さんが達成できない目的なんてないだろ」


「そうですわね、ノノハの言う通り、あれほどの大魔法を使えるマサヨシ様が果たせない目的なんてありませんわね」


 ……そもそもそんな大それた目的自体なかったんだけどな。普通にドラゴンの肉を食べたかったのと、人を襲うドラゴンを討伐したかっただけだ。


「え、ええ、おかげさまで無事にこちらの目的も達成することができました。そうだ、無事に領主様が回復してきたお祝いに皆さんも一緒にドラゴンの肉を食べませんか?」


 本当はサーラさん達の屋敷で料理人の人にお願いしようとしていたが、せっかくだしひと足先にリリスさん達と一緒に味わうとしようか。俺にとっても待ちに待ったドラゴンの肉である!

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