第42話 ドラゴンとのバトル


「ウインドカッター」


「GURU?」


 昨日ワイバーンを倒した風初級魔法を10放ってみる。だが俺のウインドカッターはドラゴンの鱗に弾かれ、ダメージはまったく与えられてなさそうだ。さすがにワイバーンよりは硬いか。


「GYAOOOOO!」


 今度はドラゴンからの攻撃だ。どうやらウインドカッターを放ったことにより俺を敵と認識したらしい。さっき助けた獣人は仲間たちと一緒に少し離れた岩場のところに隠れている。


 空中から俺に目掛けて突進をしてきた。見切りスキルで狙ってきた爪をかわしたが、ものすごい風圧に少しだけよろめく。


 というか空中からずっとヒットアンドアウェイをしてくるのってズルくない?魔法を使えない人はさっきの突進に命懸けでカウンター攻撃を仕掛けるしか方法がないぞ。さっきのブレスが何発も撃てるなら、もう完全試合の達成である。だがあいにくこちらは大魔導士の魔法があるんでな!


「サンダーストーム!」


 ドラゴンの真上に雷雲が発生する。雷中級魔法のサンダーストーム。この魔法は広範囲に雷を落とす範囲攻撃魔法だ。これだけ的が大きければ雷もよく当たってくれるだろう。


 ピシャアアア


 ピシャアアア


「GYAAAAAAAA」


 おっ、さすがにこれはダメージがあるようだ。何本もの雷がドラゴンを襲う。


「すげえ、なんだよあの魔法!?」


「あれは中級魔法のサンダーストーム……でもどう見ても私の上級魔法より遥かに威力が高いですわ!」


 獣人冒険者達が驚いている。そりゃまあこの国で一番の大魔導士の魔法だからねえ。


「GUUUUU」


 そしてこのドラゴンは10発以上の雷に耐え切りやがった。ドラゴンの表面の鱗は所々焦げているが、まだ空を飛ぶ余力は残っているようだ。というか大魔導士の中級魔法に耐えたのはこのドラゴンが初めてだ。どうやらこのドラゴン、破滅の森の魔物よりも格上らしい。


 ドラゴンが翼をバサバサと大きく揺らし始めた。なんだ、何をする気なんだ?


「GRUOOOOO!」


 うおっ!!


 あっぶねえ!まさかとは思ったが、ドラゴンが風魔法を使ってきやがった!俺が最初に放ったウインドカッター、それよりも遥かに鋭い風の刃が俺を襲ってきた。障壁魔法がなければ俺の身体はスパッといっていたぞ!!


 いくらドラゴンといえども大魔導士の中級魔法一発でいけるかと思っていたが、全然考えが甘かったな。


「サンダーストーム、ウインドストーム、アイシクルストーム!」


 雷、風、氷のストーム三連荘だ! これならどうだ!


「そっ、そんな!! あれほどの規模の魔法を3つも同時に!?」


「GYAAAAAAA!」


 よけようと思っていても、さすがにその巨体ではよけられまい。


 さすがに中級魔法の三発同時は効いたようで、ようやくドラゴンが地に降りてきてくれた。よし、もう一息でいけそうだな。


 スウゥゥゥゥ


 ドラゴンが息を吸い込む動作を見せる。これはまたブレスが来る!


「GYAAAAAA」

 

 またドラゴンのブレスがきた。だが先程の中級魔法でしっかりとダメージがあったようで、今回のブレスでは障壁魔法が一枚も割れていない。後ろの方にいた獣人冒険者達も持っていた大きな盾でドラゴンのブレスを防げたようだ。


 さっきもそうだが、神雷の腕輪並みに威力のあるあのドラゴンのブレスを防げるとはよほど良い盾なのだろう。あるいは炎に特化した盾なのかな。いずれにせよ、さすがドラゴンに挑もうとするだけのことはある。


「ってあれ!?」


 ブレスを防ぎ、後ろの獣人冒険者達を気にして一瞬目を離した隙にドラゴンが消えた!


 いや、よく見ると先程よりも遥かに高い高度にドラゴンはいた。さてはあのドラゴン逃げる気だな! そりゃ俺だって危なくなったら撤退しようと思っていたわけだし、ドラゴンだって命の危険が迫っていたら巣なんか捨てて逃げ出そうとするよな。


 だが逃がさん! 確かにこれだけ距離を取られてしまうと攻撃魔法は当たらないかもしれない、だがこれならどうだ!


「ホーリーチェイン!」


「GUUUUU」


 遥か上空にいるドラゴン、そのドラゴンの周りから突如光の鎖が現れドラゴンを拘束する。


 拘束魔法であるホーリーチェイン、この魔法は下級拘束魔法であるバインドの上級魔法版だ。


 ドスン


 翼を封じられたドラゴンが地面に落ちてきた。あれだけの高度から落ちてきたというのに、ほとんどダメージを負ったようには見えない。やはり鱗が相当硬く、物理攻撃は効きにくいのだろうか。


 だが、さすがのドラゴンといえども、先程までのダメージもあり、大魔導士の上級魔法には歯が立たないようだ。光り輝く大きな鎖に拘束され、身動きひとつできていない。


 無防備なその首筋目掛けて大魔導士が作った剣を構える。硬化魔法で剣を強化し、ただでさえ強い身体能力を更に身体能力強化魔法で強化する。


「ごめんな……」


 ザンッ


 ドスン


 ドラゴンの大きな頭が地に落ちる。やはり人を害する魔物であっても、直接この手で首を落とすと少しくるものがある。いや、それは風魔法で殺したワイバーン達も一緒か。それにドラゴンを狩りに来たのに謝るのというもただの偽善だな。


 それにしても間違いなく今まで戦った魔物の中で一番強い相手だった。大魔導士の魔法にあれほどまで耐えるとはな。




「す、すげえ!」


「まさかたったひとりであのドラゴンを倒してしまうだなんて!」


 そういえば咄嗟のこととはいえ、ドラゴンを倒す場面を獣人冒険者達に見られてしまったな。また昨日の冒険者達と同じで少し報酬をあげて黙っててもらうとするか。それにこんなでかいドラゴンを一人で解体するとか考えたくもない。

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