第26話 セレブな人達


 いろいろ騒動のあった後、意外なことに特に大きな問題になることなく解放された。最悪警察も呼ばれる覚悟をしていだが、後から来て事情を聞いたお偉いさんに茂木さんが怒られただけで、むしろ俺は偉い人達に謝られた。


 散々謝られた後に解放されて、ようやく最初の目的どおり川端さんと佐山さんと近くにあるファミレスに入った。


「立原さん、この度は本当にご迷惑をおかけしました!」


「佐山さんのせいじゃないから気にしないで。それよりこっちも問題を大きくしちゃってごめん。もし茂木さんが何か言ってきたら俺の名前とか学校とか教えていいからね」


「何を言ってるんですか! おかげさまで茂木さんも大人しくなりますよ!あの人こっちの迷惑とか全然考えずに言い寄って来るんですよ。親がこっちの業界で有名だからって調子に乗っちゃっていい気味です!」


 おっ、おう。佐山さんがものすごい勢いでまくし立てる。よっぽど、不満が溜まっていたらしい。


「あっ、失礼しました。それよりも護衛の件、どうぞよろしくお願いします!」


「うん、できる限り協力させてもらうよ。川端さんには話したけど、たまに緊急の用件が入るかもしれないからその時は少しだけ抜けさせてもらうね」


「はい、大丈夫です! 立原さんの空いてる時間だけでもとても助かります!」


「うん、それじゃあ詳しい話を聞かせてくれる?」


「はい! えっとまず初めに変だなと思ったのは……」


「ちょっと2人ともまだ時給とか経費とかについてまだ話してないわよ」


「あっ、そうだった、忘れてた!」


「川端さんには何度か助けてもらったこともあるし、いらないんだけどな」


「立原くんの気持ちはとっても嬉しいけどそういうのはしっかりしなくちゃ駄目よ。さっきだって怪我してもおかしくなかったんだからね!」


「うん、いくら立原さんが強くても、危ない仕事なんだからちゃんと報酬は受け取ってほしいの! のぞみ、こういう仕事の相場ってどれくらいするの?」


「さっき来る途中に調べてみたけど、民間のSPとかに頼むと1時間4000円〜5000円くらいね。ただし今回みたいに危険度が高かったりアイドルとか有名人の護衛ならその倍はかかるわね。立原くんは学生だし専門家ではないから、その半額の時給4000円くらいでいいんじゃないかしら?」


「時給4000円ね、わかったわ! 立原さん、それくらいでどうかしら?」


「いやいやいやいや!!」


 何言ってるのこの人達!時給4000円とか意味わからないから!


「もちろん経費や交通費とかも全額支給よ。あとは土日とかで1日8時間を超える場合には残業代も支給になるわね。さすがにこれ以上になるとちょっと高額だと思うんだけど……」


「逆、逆だから! 学生アルバイトにそんないらないから! 時給1000円くらいもあれば十分だから!」


 このセレブな人達は学生バイトの相場を知らないのか!? このあたりなら時給1000円を超えるだけで高額バイトだぞ! それに佐山さんもそんな大金簡単に払えるの? アイドルってそんなに儲かるもんなの?


「それは冗談にしても安すぎるわよ。ただの掃除や皿洗いじゃないのよ。いくら学生だからといっても危険がある分、他のアルバイトよりも高額になるのは当然じゃない」


「そうですよ立原さん。それに私はお金なら結構もらっているんで大丈夫ですよ!」


 そっちが大丈夫でもこっちが大丈夫じゃない! 大魔導士から無料でもらった能力なのに、それでそんなに桁違いな報酬をもらうのは罪悪感に押し潰されてしまう!


「それじゃあせめて時給1500円で! これでもこの辺りのバイト代の倍はあるから!」


「何を言ってるのよ、立原くんのあの強さなら普通の金額でもいいくらいなのよ?」


「そうですよ! あんなに強いならもっと高くてもいいくらいですよ!」


「そこをなんとか、助けると思って! いくらなんでも貰いすぎて罪悪感に押し潰されちゃうから! せめて2000円でお願いします!」


 ……普通時給交渉って逆なんじゃないかな?


 そのあともしばらくは時給の交渉が続いた。その結果、時給3000円の交通費、経費は支給。残業代は勤務時間が8時間を超えた場合に25%アップ。俺が怪我をした場合の治療費は全額佐山さんが負担するという条件でお互いギリギリで妥協した。そして事情を聞いて明日から本格的に護衛をスタートすることになった。

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