第九話

 今日も一緒に登校するために時計台の前に行くと、すでに真奈と。


「おはようございます、先輩♡」とニコリと微笑む夢芽がいた。


 二人を見ると少し夢での出来事を思い出してしまう。

 

 何考えたんだ俺は。

 あれは夢だぞ、二人でするなんて……。


「ああ、おはよう夢芽と──」


 俺は真奈と目を合わせ、ニコリと微笑み。


「真奈」

「はい、おはようです♪」


 心臓がドキドキとうるさい。


 大丈夫だ、落ち着け俺。

 夢芽と真奈の間男を見つけるんだろ。


 そう自分に何度も言い聞かす。


「光一くん、そのっ。ごめんなさい、夢芽が今日は一緒に登校したいからって」

「すみません、先輩っ。私、ワガママですね」

「いや、そんなことないよ。じゃあ、学校に向かうとするか」


 むしろ、夢芽がいてくれた方がありがたい。

 昨日の今日であり、真奈と二人きりというのは精神的に辛い。

 こんなにも清楚な見た目からは未だにビッチだということ思いさせない。

 あれが全て嘘であってほしい。

 そんなことをふと願ってしまうほどにだ。



「姉さん」と私に耳に向かって小声で囁く夢芽。

「どうしたの?」


 今日も光一くんと二人っきりで登校しようと思ったのに夢芽も一緒に登校したいだなんて……。

 せっかくの楽しみの時間が……。

 まあ、可愛い妹としてこのくらいは許すとしよう。


「そのっ、姉さんは先輩とシたこととかあるんですか……?」


 突然のそのセリフに私は足を止めて、頬を真っ赤に染め。


「ししし、シてませんっ!」


 夢芽も足を止めて、ニヤリと微笑んだ後。


「そうなんですね、変なことを聞いてすみません」


 なんで今、ニヤリとしたんだろ。


「ほら、二人ともどうしたんだ?」と私たちに気づいたのか後ろを振り向く光一くん。

「ななな、なんでもないですよ」

「はい、先輩っ、なんでもないです」


 もしかして、夢芽は光一くんのことが好きだったり?

 それで光一くんを私から寝取ろうとしてたり?

 ううん、そ、それは流石にないよね?


「ほら、姉さん? 早く追いつきましょっ」

「う、うん」


 それは流石に深く考えすぎだよね、夢芽そんなことをするような人じゃないわけだし……。


「ね、ねえ……夢芽?」

「なんですか、姉さん」


 念のため。


「一応、聞いておきたいのだけれど、夢芽は光一くんのこと好きだったりする……のかな?」


 すると、ハハっ、とお腹を抱えて笑い出す夢芽。


「何言ってるんですか姉さんは。先輩は姉さんの彼氏じゃないですか? 好きになったりしませんよっ♡」

「そ、そうだよね……!」


 夢芽がそんな寝取るなんてことするはずがない、私の考えすぎだ。



「ほら、一万」と私に一万円札を渡す、喜一先輩。


 学校から徒歩十分ほどにあるカラオケの一部屋にて。


 その一万円札を私は受け取ると、財布にしまった。


 ごめんね、光一くん。

 私、光一くんを裏切ることをいつもシてるの。


「じゃあ、今日はメイド服買ってきたから、それ着てするか」

「はい♡、喜一先輩っ♡」


 でもね、これはアルバイトみたいなものなの。

 喜一先輩からお金をもらう代わりにするっていう……だから、これはカウントされないよね? 

 私って処女と同じ扱いだよね?


「俺は思うよ、人生、金を持つ奴だけが得できるって。今だって、金のおかげでこうしてこんな可愛い女の子とヤれるんだしさ」

「はいっ喜一先輩♡」

「あっ、今度、俺のダチと3Pな。あいつ、くそでかいから覚悟しとけよ。ああ、金は五万にするからお前の家な」

「わかりました♡」


 ごめんなさい、光一くん。

 こうしなきゃ、私と夢芽は生きていけないのっ。


「じゃあ、ヤるとするか♪」


 こんなにも汚れた私だけど、これはアルバイトみたいなものだから許してください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る