第四話

「光一くん、二分遅刻です!」

「ご、ごめん……」と俺は待ち合わせ場所である公園内にある時計台へとやってきた。


 先ほどまで真奈と会う勇気がなく、葛藤をし続けた結果遅刻してしまった。


「まあいいです。それでは、いきましょう」


 ニコリと微笑みながら、俺に右手を伸ばす真奈。


 手を繋ごということだろう。


「うん……」と俺はその手を握った。


 本当は真奈は俺のことをしっかり見てくれていないんだよな。


 そう思うと心が痛い。


 真奈が見ているのは俺ではなく間男なんだよな。


 俺と真奈は歩き始め、学校へと向かった。


 一体、間男は誰なんだ。

 やっぱりわからないな。


「あの……そんなにこちらをまじまじと見られると恥ずかしいですっ」と頬を赤く染めて言う真奈。


 どうやら、考え事をしているうちに真奈をじーっと見てしまっていたらしい。


「ご、ごめん!」と慌ててそっぽを向く。

「い、いえ……嬉しいですので、むしろ私がありがとうですね」と笑顔で俺を見る真奈。


 その姿は可愛らしかった。


 けれど、彼女の目にはもう俺なんて映ってないだろう。

 間男しか映ってないんだろう。


 だめだ、真奈を責めちゃ。

 俺にだって責任はあるだろ、真奈が間男を選んでしまうほどに俺には魅力がなかったんだ。

 

「真奈、最近仲良くしてる男の子とかいっているか?」

「仲がいい男の子ですか……? う〜ん」と悩む真奈。


 どうせこれも演技だ。


「すみません、特にいないと思います……」


 これも演技なんだ。


「そっか、ううん。なんでもないよ、今日は一緒に帰れる?」

「はい、今日は帰りにどこかへ寄って帰りましょう」

「うん、そうする」


 だから俺も演技をする。

 なるべく不審に思われないように、今まで通りの"黒宮光一"であり続けるために。


「ふへへっ、それは嬉しいです。今日も一日頑張れそうです!」

「俺もだよ、真奈と寄り道ができる俺は幸せ者だ」


 もう俺のことなんて見ていない彼女を奪ったやつを見つけ出すために。


「そ、そんな……わ、私の方が光一くんより幸せ者ですっ!」


 だろうな、だってヤりまくってんだからよ。

 まあ、俺も人のことは言えないのか。


「いいや、俺の方が幸せだ!」



 自分のクラスである、2年4組の教室へとやってきた。

 真奈は2年3組と隣のクラスである。


 スクールバッグを自分の机の上に乗せると、俺は座る。


 多分、3組に間男がいる可能性が高いよな。


 そんなことを考えていると。


「おいーす! おはようよ、黒宮!」と背中をピシンと叩く一人の男子。


 こいつは斉藤涼、スポーツから勉強までと器用にこなしている親友である。

 現在は帰宅部であり、運動部に入らない彼が不思議でしょうがない。


「ああ、朝から痛いなお前。おはよう、斉藤」

「なんか、今日は体調が悪そうだな」

「ん、そうか?」

「ああ」と隣の席に座る斉藤。


 はあ、さすが親友だ。

 すぐに体調が良くないことを見抜きやがった。


「んまあ、気のせいだな。なんせ、お前にはあの白石さんという美少女彼女がいるのだから!」

「あ、はは……」

「本当にずりいぜ」

「それを浜辺さんに聞かれたらお前多分ボコられるぞ」


 浜辺さんとは浜辺美咲、斉藤の彼女である。

 3組と真奈と同じクラスである。

 

「そりゃー怖いぜ。まあ、気分が悪かったら俺に言えよ」と席を立ち上がる斉藤。

「ああ、悪いな」

「おうよ」


 と、自分の席に戻っていった。


 はあ……間男を探すとするか。

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