文章asmr

珊瑚水瀬

海の近くで君は色づく

泡の音がぶくぶく、ぶくぶく黒く染まった私を浄化する。

色なんて初めからなかったかのように。

黒く濁った絵の具を体の中から取り除くみたい。

ふわふわして気持ちが良い水に全身が包まれる。

水の音と私だけ。

大の字に体をゆっくり広げると世界で私一人になった感覚に囚われる。

この世界はもしかしたら私のためにあったものかもしれない。

シュワシュワと何かが少しずつ溶けていく。

私の体も水と同化してに染まって消えていく。

まばゆい光が、体の中心に集まって、そして離れていく。

みずみずしい果実を噛むように、何かがあふれ出す。

水の底の底で僕はひたすら静かに音を聞く。

ゆっくりと深呼吸をすると深く息がすえる。

キラキラと煌めく光と水。

サイダーが注がれるようにシュワシュワ、シュワシュワ

何も考えなくても良い。私は私。

何も持ってないただの私。

水の中では肩書も性格も何もいらない。

ただ、自分が自然と一体化していることを感じる。

カチカチなる時計を止めて。

全てを忘れることに集中する。

ポコポコ、ポコポコ。

そこまで落ちていくのを感じたら、そのまま目をゆっくり閉じる。

ただ、暗い、暗い水の底で、自分がいるのを感じる。

カラコロカラコロ水の雫が落ちていく音が聞こえる。

ゆっくり、ゆっくり呼吸を整える。

大丈夫、明日のことは今は忘れて。

シュワシュワ、カラコロ、トトットトツ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る