第5話 優しさ…


 少し遅めの朝ご飯を食べ終えた俺たちは出発した。今日も良い天気だ。雲一つない。今が何月なのかは分からないが、気温的に冬ではないだろう。春か初夏くらいだろう。








 アニムの後ろを歩いてついて行く。町までほぼ一直線で行くとアニムは言っていたが、俺が前に出て行くことはない。


 俺は自分が方向音痴だと言うことを認識している。日本にいたときも、地図のアプリを見ていてもよく分からなかったし、電車では行き先と逆のに乗ることなんてざらにあった。いつもがいつもおかしいというわけではないが、感覚的にこっちかな?で行ってみるときもある。


 だから基本的に自分が自由なとき以外は、誰かについて行くようにしている。まぁたまにこの人も目的地は一緒だろうと考えて、ついて行ったら全然違ったってこともあったが。


 まぁ俺が方向音痴なのは置いといて、ただ森の中をまっすぐに進むのは味気ない。だって動物がでてこないからね!!虫もほとんど見ない。


 この世界には虫が多くないという。いやいるにはいるが、魔力に適応し、進化して、魔物として扱われるのがいる。地球にいたような小さな虫はつらい世界みたいだ。虫は別にGを抜けばそこまで嫌いでもない。好きでもないが。Gは無理だ。Gだけは無理だ。見た瞬間叫んで逃げ出す。小説によく出てくる、大きい奴がいたら、見たら失神する自信がある。


 考えただけでガクブルだ……うぅぅキモい




 


 さてさて、なんで俺の方向音痴の話が出たかというと、アニムが向かっている方向は本当に合っているのか?という疑問が生まれたからだ。


 日本の友達がいたらきっと、「方向音痴がでしゃばんな」とか言われるだろう。


 でも考えると、地図がなく、太陽の位置は分かるとしても森の中だ。本当にまっすぐに歩いているのか不安になってくる…………………


 いやあんまりだな。不安ではあるが、それは道が合っているかどうかであって、違ったら違ったで「おいっ」でおわる。食料とかの心配も、襲われるような危険も今のところないないもんな。町に着くのにどんなに時間がかかったところで、これといったって感じだもんな。


 だが気になるし聞いてみるか…


 「なぁ、アニム」


 「ん?なに?あ、そこ木の根が出てて段差があるよ」


 ………………………アニムは意外と優しさがある…………………………


 「お、ありがと。

  あのさぁ、どうやって町に向かって歩いているの?」


 「んん?どうゆうこと?」


 アニムが立ち止まり、振り返る。言っている意味が分からないかのように首を傾げながら。


 「そのままの意味だよ。地図もないで歩いているから気になってね」


 これでもよくわかっていないような感じだ。


 「大丈夫だよ。ディアナ様に、転移地点のそばに崖があるから、その反対に向かえば町に続いている道にでると言われたから」


 「へ~~…………え、でもそれだと道・町がある方向を聞いただけじゃない?」


 「そうだよ。それを教えてもらったらね」


 「え、じゃあどうやって向かってるの?」


 「???見ての通り、崖の反対側にまっすぐ、町向かってに進んでいるだけだって」







 ………………………………………はぁ?!




 「え?じゃあなんか太陽の位置で方向が分かるとか?」


 「らしいね。私は見てないけど」


 「じゃ、じゃあ、探知系の魔法を持ってたり、鑑定魔法で分かったり?」


 「気配を探るのは得意だけど、道とかが分かるような魔法は持っていないし、鑑定魔法でそんなことはわかんないよ」


 「え、??てことは、最初の崖以降正確な道は分かってない?むしろ、あってるか分かんないけど、昨日はこっちから来たと思うからこっち、的な感じで今日歩いてたってこと?」

 

 「そうだって。さっきから何言ってるの?大丈夫?」


 え、この子ガイドとしてやばくないか???


 ほとんどまっすぐとはいえ、木や藪、大きい岩をよけたりしたからくねくねしていた。一度小さな川も渡った……………………本当に道はあってるんだろうか……まぁ良いか急いでもないしな…………







 









 「今日はこの洞で休もう」


 「了解」


 日が暮れてきたあたりで、ちょうど良さそうな、大きな洞のある大きな木を見つけた。異世界っぽい。中で火を焚くことはできないだろうけど、寝るのには良さそうだ。


 木の洞に入ってみると、人が4人は楽に寝られるんじゃないかくらいの広さがあった。


 


 



 「ふぅ、やっぱり1日中森の中歩くのは疲れるな」


 「お疲れ様。そんなに疲れたんなら軽めに回復魔法かけようか?」


 「いやいいよ。別にどこかが痛いというわけでもないし、ただ足が疲れただけだから」


 これでも元体育会系である。1日中歩いたからと言って回復魔法かけてもらうのは情けない気がする。それにまだ若いしな。


 「ふーーん。あ、そういえばさ」


 「ふわぁぁ。なに?」


 眠い……とてつもなく眠い。まぶたに文鎮がぶら下がっているくらいに重い。いや眠い。


 「ソーマさぁ」


 「うん」


 「ディアナ様から長寿の薬もらっていたけど飲まないの?早めに飲んどいた方が良いと思うけど」


 「う~~~ん」


 眠くて頭が回らない………確かに長生きしたいなら、今飲んどいた方が良いかもな………………これから体の成長はほとんどしないし、これから老いていくだけだもんな……今が人生で一番若いとき……って誰かが言ってたな……………………誰だ?まぁいいか


 「そうだねぇ。のんでおこうかなぁ」





 このときソーマは眠すぎて、アニムの顔を見ていなかった。イタズラが成功したときのような、ざまぁとでも言うかのような含みのある悪い笑みを_____ 













 「ブフォッ…まっ……………………ずっっっっ!!!!!!!ゲホッ……ごほっ……………ウェェェ…………」

 

 「だ、大丈夫?ソーマ大丈夫?……フフッ」


 アニムがソーマの背中を優しくさする………笑いを堪えながら……








 「あ、ありがとう。もう大丈夫。不味すぎて…体が拒絶するような…死ぬんじゃないかっていうくらいやばかった…………なにあれヤバすぎ……」


 「はい、水でも飲んだら?」


 「うぇ…ありがとう」


 今度こそ水のおいしさで泣けるかも……………………………






 「ブハァッッ!不味いっっっっっっ!!!!!!」


 口の中に残っていた長寿の薬が水で薄められ、めちゃくちゃ不味い。やばい。ただただ不味い。薄まっているとか関係ないくらいに不味い。






 「ハァ、ハァ、ハァ……結構出しちゃったと思うけど大丈夫かな?」


 「うん、多分大丈夫だよ。少しでも体に取り込めれば良いからね」


 「へ~そうなんだ。じゃあ余ったやつはどうすれば良いかな?」


 「自由に扱って良いんじゃない?まだ瓶に半分以上残っているんだから大事にとっといたら?もしかしたら取り込めてないかもだしね」


 「うええ、そんなこと言うなよ。もう飲みたくないわぁ。

でも貴重だし何時か必要になるかもしれないし、マジックバックに封印しておくか」


 大丈夫だよね俺の体、取り込んだよね?もう飲みたくないぞ。確認しようにも成長・老化が止まったかなんてすぐに分からないしなぁ。


 「じゃあ私はそろそろ寝るねおやすみ」


 「ああ、おやすみ」


 俺も寝るとするか…………











 ……………………………………ああ、やばい。さっきまでめっちゃ眠かったのに、長寿の薬を飲んだせいで目が覚めた………ギンギンだ………だが足や体は疲れている。でも目が完全に覚めていて寝られる気がしない……どうしよう…………寝たいのに寝られない、ただ横になっているだけのつらい時間だ。


 今、寝る前に飲むべきではなかった。昼間に飲むべきだった………





 「あーーくそっ、寝れんっっ」


 「フフフッ」


 仕方ないから起きて、結界魔法・魔力の練習をすることにした。なんかアニムが笑った気がしたが、気のせいか寝息?だろう。起こさないように静かにやるか。


 








 …………………………………………………良くない考えだが、寝ているアニムに長寿の薬を飲ませたらどうなるだろうか………………どんなリアクションを取ってくれるのか気になるな……半々くらいで死魔法打ち込んでくるかもナ。それは怖い、でもやってみたい、ものすごくやりたい。






 女神様……やっても良いでしょうか?





 ……………………………………………………許可が下りた気がする。むしろ、いけいけと言っている気がする…





 いや、いつか、なんかアニムに仕返すまたは罰を与える的なときに、やってやる方が面白くていいかもな。今よりも良いシチュエーションがあるかもしれない。


 ああ、なんかその時がなぜか無性にたのしみだな…………


 「ふふふ………………」





_____________________________________

お読み下さりありがとうございます。

思いつきで進めているので、ちょくちょく改稿や設定を変えることがあるかもしれません。その時は、どう変わったのかなどを乗せていくのでご容赦を。

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