第2話 長くて気楽で物騒
「________さ____て__さい______起きてください」
眩しい…まだ目は開いていないのにも関わらず、さっきまでいた真っ白い空間ではなく、青空の、太陽の光を浴びていることがわかる。そして眩しさとともに徐々に明瞭になってくる声に、思考も戻ってくる。
「ここ、は?」
半目を開け、目を擦りながら、声をかけてた者に声をかける。
「やっと起きましたか…はぁ、全く、お寝坊さんですね」
「ん?だれだ?……あぁ死神さんかな?」
「はい、そうです」
ふぅ、やっと視界が良くなってき……………た?ぁ?
「……ここ…どこ?」
「ん?そのまま見ての通りです」
そう見ての通り、見ての通りなのだが………
「崖じゃんっっっっ!!!!!」
飛び出している崖の上にいた。いや景色はいい。とても良い。太陽の光も暖かく、肌をなでる風も気持ちいい。崖下には森が広がっている。一面緑だ。樹海というのかな?鳥も飛んでいるしやはりいい景色だ。だが落ちれば即ゲームオーバーだろう。それほどまでに高さがある。
起きてそうそう心臓がバクバクである。視界がぼやけたまま、草原みたいな平地もしくは森の中を想像して、適当に歩き出していたらと思うと漏らしそうになる。まぁそれは嘘だが結構やばかったんでは無いだろうか。暖かい日の光に、涼しい風があり、今とても心臓が早く動いており、逆に、ランニングした後のような、肝試しの後のような気持ちよさがある。何だろうこれ。
とりあえず崖から離れようと思う。そして振り向くと死神さんがゴスロリとメイド服を合わせたような、黒を基調とした服をまとい、整然とたたずんでいた。にっこりと笑って…こいつが驚かすために、ここに運んだんではないでろうか?………………いや疑うのは良くないな。そんな気がビンビンとするが…まぁそんなに勘が良いわけでもないし違うと思おう。うん…………
崖の反対側にも深い森が広がっていて、そっち方向に大きめの町があるというので、とりあえず心臓に悪い崖から離れて、森の中で話すことにした。
「とりあえず自己紹介からやるか。俺の名前は知っていると思うけど、神風颯馬だ。そうだなぁ、異世界だと名字持ちは貴族だけとか、名前と名字が逆とかありそうだから……うんっ、ソーマでいこう。ただのソーマだ、よろしくな」
「これからよろしくお願いしますソーマ様。わたくしは、アルノウトミステリアスター・エルスタシア・ウィストック・ハハニムと言__」
「まてまてまて、ごめん何て?」
「ですから、アルノウトミステリアスター・エルス__」
「待った」
「?なんです?」
「長い………長くて、早口で、わかるかいっっっ!!!!!」
そうこの死神の、アルノうんたらかんたらは、長いくせに早口みたいにペラペラしゃべるのだ。止めても仕方ないだろう。名前の区切りすら無かったんではと思えるほどだ。一発で覚えられるわけが無い。
「ゆっくりとお願い」
まぁゆっくりで聞き取れたとしても覚えられる自信は無いけどね。むしろ覚える気が無いともいうけどね。あだ名、もしくは仮名でもつけようかと思っている。適当に。
「仕方ないですね。わたくしは、アルノウト ミステリア スター ・ エルス タシア ・ ウィストック ・ ハハニムです」
「オッケーわかった。全部は追々覚えていくとしよう。………そうだなぁ…………アニム……そうアニムと呼ぼう。どうかな?」
「アニム………アニム……………悪くないですね。ではこれからはアニムと名乗りましょうか」
ふっふっふ、適当に始めと終わりを取っただけだったが気に入ったみたいだな。自分のセンスが恐ろしいな…いやアニムがチョロい?まぁいい、長い人の名前を覚え、呼ぶことほどダルいものはない。
「改めてよろしくねアニム」
「こちらこそよろしくお願いします」
「ところで、なんでそんなにかしこまっている訳?あの真っ白い空間、神界だっけ?あそこにいた時ってもっとテキトーっていうか何というか自由って感じがしたけど?」
「そうですね。基本的にはそんな感じでしょう。ただ、ガイド・護衛をするこれからのパートナーもしくはご主人様であるため、始めくらいはビシッとやろうと思いましたので」
始めくらいは???始めだけなのかな?????元が漏れてるな………………
「そっか、わかったよ。これからの仲間でありパートナーだから堅苦しくなくて良いよ。そっちの方が俺にとっても楽で良いからね」
「わかりました。女神様にものすごく説教され、しっかりとやってこいと、罰なんだから気を張って四六時中護衛をしていろ、その雑な性格を直せ、完璧に1つの不備を出さずにガイドをしろ、と言われましたが、今の主はソーマ様であり、ソーマ様が自由に生きるのをサポートするのが役目で、今はソーマ様の言葉が一番ですからね。楽に、自由に、いつも通りに、ありのままの君でいろとまで言われたら仕方ないですね、そうするよ。よろしくねソーマ!」
えっ?えっ?変わりすぎだろ…そんなに言ってないし…女神様からそんなに言われてたの?!はぁ…まぁいっか、そっちの方が気楽に話せそうだしね。
今はとりあえず一番近い町に向かって歩いている。そこそこ離れていて、歩いて五日もかかるらしい。まぁそれは森の中を歩き慣れていない俺のペースと体力を考えてらしいけど。………………マジで疲れる。
「そういえばさ」
「ん?」
「この世界にはステータスみたいのは無いの?」
「あるにはあるよ」
へぇあるにはあるんだ……………なんか含みを感じるな………
「どうやって確認するの?」
「一般的には、教会においてある鑑定水晶を使う。それか鑑定のスキルを持っている人に観てもらうのどちらかかな」
ステータスについてその後も少し聞いたが、鑑定水晶でわかるのは名前、レベル、スキル、ギフトのみで、パラメーターや職業みたいなものは無いらしい。
レベルというのは、魔物など生き物を倒した時にエネルギーのような何かを取り込む、いわゆるゲームによくある経験値のようなもの、を一定量貯めると上がる魂の位階のことを指すらしい。よくわかっていないらしいし、仕組みに詳しくても得になることも無いから知らなくて良いとまで言われた。またゲームでもわかるようにレベル差で結構力が変わってくるという。技術やスキルもあるからレベルが絶対では無いようだけれどね。
スキルはそのままで、魔法や剣の斬撃を飛ばすのなどのわざであり、初めから持っていたり、後天的にも手にしたりすることができるみたい。
ギフトというのは、スキルと違い、天からの授かりしもの、と言われるようなもので、才能であったり、ユニークスキルという珍しく、後天的には手に入れられない特別なスキルであったり、アイテムバックや魔剣であったりする、誰でも1つは生まれ持っているものらしい。アイテム系の場合は鑑定したときに現れるらしい。…不思議…
大きめの町や首都に入るとき、身分証がない人は簡易鑑定水晶というので調べられる。名前、性別、犯罪歴が表示される。もちろん中に入るにはお金もかかる。
「じゃあ鑑定魔法は何を見る?」
「鑑定魔法はその人の名前、年齢、性別、レベル、スキル、罪を犯しているかどうかだね。ギフトはなぜか見えないようになっているんだよね。まぁ私には見えちゃうんだけどね。ほかにも物を見たときには、何なのか偽物本物くらいは見分けられるよ」
「アニムは鑑定魔法を使えるの?」
「もちろん。死神だからね」
へ~~~~死神は鑑定をみんなできるらしい。しかもこの世界の人たちの鑑定よりも1段2段くらい高度なものらしい。この世界の鑑定魔法はものすごく便利というわけでは無いみたいだ。しかも鑑定魔法はギフトのユニークスキルらしいから、持っている人もそこまで多くは無いらしい。
「アニムは他にどんな能力をもっているの?」
「ディアナ様に力をいくつか封じられたから…………………まともに使えるのは……鑑定魔法と、回復魔法、あとは死神の代名詞の死魔法かな」
「えっっっっ?!?!し、死魔法?」
なんかやばそうなの持ってるな。鑑定と回復は良さげだけど、死魔法はこわ………
「ど、どんなのなの?」
「ん?そのままだよ。相手の命・魂を刈り取る魔法に決まってんじゃん」
ぎゃ~~~~~~~~~~~~~~~~こわいっこわい……………できるだけ逆らんでおこ………………………………………さすが死神、やばいな……………………
「えっとぉ……あんまり人に使って大量に死体増やさないでね…マジで」
心の安寧のために。さすがに平和の日本で暮らしてきたから、人が死にまくるのはちょっとって、思っちゃうよね……………………“目指せスローライフ!!”だからね。小説にあるような展開はいらないんだよね………………………………
「オッケーーー。私たちに敵対しない者たちには使わないよ。でもあなたを守らないといけないから、害悪な敵には使うね。大丈夫大丈夫。あなたが見ていないところで殺るから」
えぇーーーいやいや、大丈夫か?……………今の表情めっちゃを悪かったぞ。ゾクッッとするようなあくどい感じだったぞ。……………………………………日本よりも物騒で危険な世界みたいだし、気にしない方が良いのかな?
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