私、サキュバスになんてなりませんから!
犬
1話 サキュバス
遥か昔、悪魔の一角であるサキュバスはその
その呪いは繁殖不可の呪い、性を司るサキュバスはこの呪いを掛けられたが故に絶滅の
数が増えなければ種は滅びる。
どれだけ行為を重ねても子は成らず、こうして数が減っていったサキュバス達はとある方法で増やす事にした。
『素質がある人間をサキュバスにすればいいじゃない!』と。
そうして、そのせいで私こと笹木ユウはお隣の家に住むサキュバスのお姉さんに、サキュバス見習いにされたことから物語は始まる。
◇
お隣のお姉さんはすごく美人だった。
いろんな事を知っていて、凄くかっこよくてキレイだった。まさに頼れるお姉さんといった感じで子供の頃の私は憧れていた。
小学生の頃、私はふとしたキッカケから親友と大喧嘩をしてしまった。
些細な事が理由だったのに、その怒りは段々と大きくなっていって…互いに「絶交」と言い合ってしまう程になってしまった。
後になって
「と、友達と…喧嘩したの!」
ぼろぼろと泣きじゃくりながら事の
お姉さんはうんうんと頷くと、妖艶で怪しい笑みを浮かべて、私の耳元で囁いた。
「友達と仲直り出来る方法、教えてあげよっか?」
ほんと?と私の表情が笑顔に変わる。
今に思うとそれは、悪魔の囁き。
でも、子供の頃の私はなんの疑いもなく、お姉さんの『仲直りの方法』に耳を傾けた。
お姉さんの口角が上がった事に私は気付かず。
『まず、相手はまだ怒っているからキスをしてその口を封じなさい』
『キスは仲直りの証なのだからそれをすれば解決するでしょう!あ、ちなみに舌を入れないと仲直りは出来ないわよ!』
『それで、もっと仲良くなりたいのならその子を押し倒しなさい、そしたら何度もキスをして股と股を擦り付け合うように抱き合うのよ?』
そうすればすっごく仲良くなれるから…。
◇
「もうユウちゃんと話したくないっ!!」
ぷいっと親友であるハナちゃんに顔を逸らされて私はショックを受けて涙を浮かべる。
「そんなあ…」
情けない声を出してうなだれる私。
いいや、こんな事でショックを受けてる場合じゃない!
お姉さんに教えてもらった仲直りの方法を思い出すんだ!
目を大きく見開いて、お姉さん直伝の仲直りの方法を思い出すと、私はハナに目掛けて突っ込んだ。
「ちょっ、ユウちゃん!?」
突っ込んでくる私に驚いて、ハナの足が止まる。そこを今だ!と確信する。
一気に顔まで近付けて、急停止する…そしてハナの柔らかな頬を両手で包んで、私は顔を近付けた。
柔らかな感触がした。
「んぅっ!?」
ハナの驚いた声がした、けど私はそれを無視して唇から舌をねじ込んだ。
ねじ込んだ舌が口の中で暴れ回る、お姉さん曰く、でぃーぷ?なキスをするとより効果的なんだそう。
でも、ハナの口の中はねっとりとあたたかくて…とても甘い。
あまりの気持ちよさに私は仲直りを忘れてそのままハナの口の中を侵略していく。
ねろっ、れろっ…と舌と舌を絡めていく。
何度かハナは抵抗したけれど、段々と目がとろんとなっていって、息が荒くなっていく。
やっぱりお姉さんの言ってたことは本当だったんだ!と思った。
だって、さっきまで怒っていたハナがキスに夢中になってるんだもの、やっぱりお姉さんはすごい!って。
あ、そういえば…
(もっと仲良くなる方法…)
このまま、押し倒して…抱き合うんだっけ?
お姉さんに言われた通りのまま、私はキスした状態で押し倒した。
幸いベッドの上だったから衝撃はなく、ぎしっ!とベッドが揺れる。
私はそのままハナに抱き付くと、足と足を絡めていった。お姉さんに言われた通り股と股をこすり合わせながら…。
「あっ…」
と、色っぽい声が響いた。
それが私の声なのかハナの声なのかは分からない。というより、その声の主を確認する程の余裕はなくて…無我夢中のまま口の中を貪り、身体をくねくねと動かしながら、お互いの股に刺激を送る。
こするたびに、動かすたびに…小さな波が押し寄せてくる。
痛みとは違う、表現ができない気持ちのいい感覚がクセになって、より大きな波を求めて動きは強さを増していく…。
「んぁっ…」
「あぁん…」
お互いの嬌声が混じり合って、私達は見つめ合う。
赤く染まった頬、荒げた吐息、
ぞくぞくぞくっ!と背筋に何かが走る、悪寒とは違う快感に似た何か…
そして。
◆
その後、私達が仲直りが出来たのかは分からない。というよりあんな事をして喧嘩出来るほどの考えが私達にはなかった。
でも、そのおかげで私達の仲は今でも続いている……。
別に、これだけなら仲が良くて何より!めでたしめでたしって感じだけど…。
これをキッカケに私は何か起きるたびにお姉さんを頼る事になった。
その度に仲直りの方法だのなんだのかんだのと言われて、それを実行してきた訳だけど。
それを色んな女子にやり続けて…ふと思った。
これ絶対おかしくね?って。
流石に小学生、中学生を騙せても高校生になった私は騙せない。
洗脳が解けたみたいに、私は隣のお姉さんの家へと乗り込んで、お姉さんに詰め寄った。
「今までのあれ!絶対仲直りとかそんなんじゃないでしょ!?」
「あれ?今頃気付いた?」
居間でくつろぎながらAVを見ているお姉さんに頬を赤らめながら、私は声を荒げた。
お姉さんは欠伸をしながら、のほほーんとしているのが余計にイライラして…。
「い、今頃って!」
あ、あんなえっちなこと!
「でも楽しかったでしょ?」
「そ、そんなわけない!」
精一杯の否定。
首を横にブンブンと振り回すけれど、お姉さんは不敵な笑みのまま私に微笑み掛けた。
「ほんとぉ?」
「本当です!!」
「ふぅーん…じゃあ、親友の女の子とかクラスの子とかと毎日いろんなコトしてるけど…それはどう否定するのカナ?」
「な、なぁッ!?」
な、な、何でそんなこと知ってるんですか!?
「ま、まさか見てました!?」
「んーん、見てないよ?今知ったから」
「はぁ?なに言って…!」
そう言いかけて、空気が変わった。
お姉さんの口角が上がる、ぞわぞわとした嫌な空気が私に
相変わらずテレビに映し出される二人の女の人が
ウフフフフと、どこからともなく不気味な笑い声が部屋に響き渡る。
私は、精一杯声を振り絞ってお姉さんにその正体を問う。
「…あ、あなた何者ですか!」
そう、口にした途端に。
それに応じてお姉さんの服は裸同然みたいな、露出が凄いレオタード姿になっていく。
「…な、なんですかそれ」
頭にはツノが生えてた。
長く尖った黒紫色のツノが…!
私は変わり果てたお姉さんの姿を見て、とある空想上の生物を思い出す。
同じくツノと翼を持った、生物とは思えない恐ろしい
「あ、悪魔…」
「せいかーい!ま、正確にはサキュバスなんですけどね!」
ニッコリ笑顔でウインク、姿は変わっても性格は相変わらずのお姉さん…。
だけど、目の前で起きた超常現象に恐れて、その場で尻もちをつく。
「わ、私に何をするつもりですか…」
悪魔ということはもしかして、正体を知った私は殺されたりするんじゃないか?
カタカタと身体を恐怖に震わせて、最悪の未来を思い浮かべた私の瞳に、涙がじわりと浮かんだ。
けれど、いつまで経ってもそんな未来は来ることはなく、お姉さんはニヤリと不敵に笑って。
「私が姿を現したということはねぇ、ユウちゃん」
「あなたをサキュバスにするためなのよ!」
お姉さんは声を高らかにそう言った。
◇
12月6日 一部修正
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