幸せカンパニー
星るるめ
第1話
「ん?電話かな?」
自身のスマホから音がなっているので確認してみると、見知らぬ番号からのようだ。
たぶん詐欺かセールスか何かだろう。このご時世誰かわからない着信はとりあえず無視するのが良いに決まってる。
けどなんだこの音。いつもの着信音と全然違う。設定はもうずっと変えてないのに。
「こんにちは。幸せカンパニーのフクマスと申します。」
スマホから突然響く誰かの声。
「わっ、取ってないよ僕。なんで繋がってんだ。」
「驚かせてしまい申し訳ございません。そういう仕様になっております。」
これは絶対詐欺だ。けど取ってないのになんで繋がった?とりあえず早く切らなきゃ!
「あれ!?切れない!!なんでだ?画面固まってる。あっ電源一回落とせば…って全然反応しない!」
「お話が終わるまでは何があってもこのお電話は切れません。そういう仕様になっておりまして。」
「そういう仕様ってなんだよ!詐欺か?セールスか?だったら他をあたってくださいよ。僕お金とか全然ないんで。」
「詐欺でもセールスでもございません。決して怪しいものではなく、あなたが望まれたからこそ、今このお電話が繋がっているのです。今あなたは幸せについて悩んでおられるのではないですか?」
「幸せについて?僕が?別に悩んでないですよ何も。怪しすぎるんだけど。」
「ではお聞きしますが、あなたは今現在幸せですか?」
「それは…。どうだろう。幸せではないかもしれないけど、まぁ不幸でもないかな。ってそんなことどうだっていいから!」
「自分自身のことなのになぜはっきりわからないのですか?」
「えっ?そりゃだってさ。そもそも幸せかどうかの判断基準ってないし。」
「基準はございます。幸せかどうかは心の安定度で決まります。」
「心の安定度?」
「ええ。ちなみにあなたはどんな人が幸せだと考えますか?」
「そうだな。親が大富豪でなんでも欲しいものが手に入って、働く必要も一生なくて、その上イケメンだったら間違いなく幸せでしょ。」
「残念ながらそのような状況でも幸せを感じていない方がおられます。」
「えっ。それは贅沢すぎ。何ふざけたこと言ってんだって言ってやりたい。」
「逆に、かなりの貧乏で休みなく働いている上にイケメンでもない、それでも溢れんばかりの幸せを感じておられる方もいらっしゃいます。」
「あぁなるほど。どんな状況にいても幸せかどうかはその人によるっていいたいわけですね。」
「そうです。大きな病気を抱えていても日々幸せを感じ素晴らしい毎日を送っている方もいれば、健康なのに不幸のどん底のような気分で一生暮らす方もいる。その方が幸せかどうかを判断するのに置かれている状況は関係ないのです。」
「まぁ確かに。」
「あなたの心が荒ぶっていたり何か穏やかでないのならあなたは幸せとは言えません。ですがそうでなく穏やかで安定しているのなら、あなたは胸を張って今幸せだといっていいのですよ。」
「そっか。…そうですよね!なんか今の言葉心に響いたな。悪者扱いしといてあれなんですけど。勉強になったっていうか話せて良かったなって。ありがとうございます。」
「そう言っていただけるとこちらも嬉しい限りでございます。では最後にもう一度お聞きします。あなたは今幸せですか?」
「はい。なんだかんだで僕は幸せです!」
「ありがとうございます。その幸せがこれからも続くことを願っております。それでは失礼致します。」
「はい、ありがとうござい
プツッ
お礼を言う前に電話は切れてしまった。なんだか気になって、その後ネットで「幸せカンパニー」についていろいろ調べてみたけど、何一つ関係のありそうな情報は見つからなかった。
なんとも不思議な体験だったが、もしかしたらなんとなくで毎日を生きている僕に「君はちゃんと幸せなんだよ」って気付かせるための神様の粋な計らいだったのかも。
そう思ったらなんだか気分がいい。明日からは素敵な日々が送れそう。僕はすごくいい気持ちで眠りについた。
〜〜〜〜〜
「フクマストリューよ。例の星の改変計画は順調ですか?」
「はい。第1回目の選別はほぼ完了しておりまして、あとはスイッチを押すのみでございます。スイッチひと押しで地球人の7割が一瞬で消滅いたします。」
「それはよかった。選別はどのようにおこなったのです?」
「まず地球年齢で10歳以下のものは記憶を奪ったのち他の星へ送る手配をしました。それ以外の全ての地球人にはあらゆる方法で現在幸せであるかどうかを問い、幸せであると答えた者のみが残るようにました。」
「なるほど。」
「第2回、第3回、と選別を繰り返し、最後に残った一名があの星の代表として我々と新しい星を創生する予定でございます。」
「うむ。その方法であればある程度完成されていながら汚染の最も少ない脳と血液を持った地球人が選ばれることでしょう。私たちの使命は邪悪にして未知なる存在"ストレス"に汚されてしまった星の再生。引き続き宜しく頼みます。」
「承知しました。選別の消滅プログラム起動スイッチは毎回メノア様に押していただきたいと思っておりますので、早速ですがこれをよろしくお願い致します。」
「わかりました。」
「こちらです。ここに触れていただければ起動いたします。」
「では。」
…だめだ…やめろ…やめろ
「やめろーっ!!……ゆ、夢?」
一体なんの夢を見ていたんだっけ。思い出せない。だけどなんだかとても妙な夢だった気がする。
「まだ6時前。ちょっと早いけど起きるとするか。………なんだ?この違和感。」
目覚めた世界は昨日よりやけに静かな気がした。
幸せカンパニー 星るるめ @meru0369ymyr
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