フォーレン エンジェル( 単巻完結VR )
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第1章 第1話 聖眼の魔女
SIM4× 西暦2027年、現在ー
世界は1つではなく、幾千万、幾億もの膨大な数の次元空間が存在する多重次元構造の世界であることが証明された。
多重次元構造の世界では、複製された様々な種類の次元空間と世界、そして地球が存在し、それぞれが個別に進化し発展していった。
森林や草原に覆われた生命の源泉、大自然の世界。 コンピュータやロボットが制御し、支配する最先端技術の世界。
そして、万物の根源エレメントと魔導力によって創造された聖域と呼ばれる空中浮遊大陸の楽園。
その、多重次元構造の世界で、人類は2つの脅威に晒されていた。
1つは、人々の悪意と憎悪と妄執を糧にして無限に増殖する魔物、悪魔精霊 《フューリズ》の脅威。
そしてもう1つは、様々な思想と理念、社会機構の分断と対立による、幾つもの組織や政府機関による熾烈を極めた戦争である。
そのフューリズの侵略と、それらを顕現する不条理の連鎖に抗い続ける者達がいる。
清浄なる救済の裁定者であり、邪悪なる断罪の粛清者。
ソーサレスは現存する魔女の継承者にして、神性の輝きである。
ソーサレスは精霊の加護を受容し顕現した御使いたちの末裔である。
ソーサレスは、呪術や魔術など様々な神秘的な能力の集合性と、最新の科学技術が融合して生まれた現在版の魔女である。
この自然界に存在するあらゆる物理法則や規則性を支配し、改変し、再構築する事のできる能力を持つ者の総称を言う。
また、万応の物質元素( エレメント )を制御し、操作することにより、様々な神秘的で幻想的な現象を引き起こすことができる。
聖眼の魔女 冬河リカと、煉獄の聖女 檻村詩織。
彼女たちもまた、ソーサレスとしての壮絶な戦いと運命に身を委ね、翻弄されていた。
冬河莉架(ふゆかわ りか )は、この世界の消滅と終焉を望んでいる。
冬河莉架は、この世界の不条理を憎悪し、この煉獄のような絶望の海をさまよっている。
冬河莉架は、 冷酷で無慈悲な聖炎の魔女である。
檻村詩織は、この世界に調和と秩序がもたらされることを望んでいる。
檻村詩織は、人々を救済し、守護することにより、希望と未来を紡ぐ楽園の旋律を奏でている。
檻村詩織は、慈愛と献身に生命を捧げ、灼熱の正義の炎を燃やす煉獄の聖女である。
冬河リカは、自らの邪悪な願望を叶えるため、檻村詩織を懐柔し、利用しようとしていた。
リカは敵対する組織、次元連邦を壊滅させ、プロメテウス( 新次元領域秩序機構 )を内側から瓦解させるため、瓜二つの人間と入れ替わり、他人に成り済まして、プロメテウスのソーサレスの1人として潜伏していた。
プロメテウスは、破壊と殺戮に特化したメイガス級と呼ばれる、幾百万幾千万もの強力な
この中で、冬河リカは蟻の群れのように無数にいる最下級の兵士の1人に過ぎない。
冬河リカのもう一つの目的、それは、プロメテウスを闇で支配する究極の血統、檻村財閥の1人、檻村詩織に取り入り懐柔することだった。
檻村詩織は義姉たちに比べてまだまだ幼く、未熟で檻村のなかでも劣等生だったが、それでも、リカは彼女を必要としていた。
プロメテウスの
全く違う考え方をして、全く違う生き方をしてきた2人。
本来なら、関係性を持つこともなく、出会う事も無かったはずの2人である。幾多の世界が紅蓮の灼熱に飲み込まれ、終焉を迎えたあの日、2人の運命の歯車は、残酷に狂いはじめた。
真夜中、ビルの断崖絶壁の立ち並ぶ谷底で、異形の姿をした魔物が無差別殺戮を行なっていた。
機械と生物の融合した筐体に、巨大な胴体に8つの首をもつ大蛇の姿をしている。
まるで神話や伝承に登場する異形の怪物にして空想上の魔物、ヒュドラにも似た姿形をしている。
その歪な姿をした竜は、獰猛な咆哮を張り上げながら、歩行者たちを引き裂き、噛み砕く。
血飛沫がはるか彼方の上空まで舞い上がる。
連中の正体は
輝ける栄光の天使にして、最高位の悪魔。
人間を排除し人類を滅亡させるためだけに現出した殺戮兵器
清浄なる光芒の天使よ
烈光の聖矢を放ち 邪悪を撃ち滅ぼせ!!
暗闇と静寂の上空から、少女の凛とした声が響き渡る。
突然、上空から薄青い閃光、
ふと見ると、蝶の繭のような、羽衣のような、淡い薄青の光芒に包まれた少女が、ビルの断崖絶壁に立ち尽くしていた。
中等科か高等科の何処かのお嬢様学校の制服をきている。
白い布地のあちこちが魔物に蹂躙された人々の鮮血でベットリ濡れている。
外見は清楚で純潔、読書でも似合いそうな窓縁の美少女という感じである。
艶やかで滑らかな雪のように白い肌。
繊細で、今にも壊れてしまいそうな、ガラス細工のように澄んだ瞳と、流れるように風になびく、背中までのびた長い黒髪が、ネオンライトを反射してキラキラと光り輝いていた。
「相変わらず、鮮血のシャワーは生ぬるくて不愉快だわね。
新品の制服が台無しじゃない。」
少女が制服の布地にベットリとついた粘着質な血液を拭っていった。
「お人形さん遊びも結構だけれど、もう少し、大人の礼儀作法も身につけて欲しいわね。
せっかくのお
少女が、道路に落ちている手足や内臓などの大量の人塊や、赤黒い重油のような血の海を眺めながらいった。
この残酷で凄惨な光景を、少女は無気力で怠惰で冷淡な眼差しでながめていた。
まるで糸に絡まり、身動きが取れないまま蜘蛛に捕食された昆虫を見るような目で。
リカもまた、自分の
本来のソーサレスとは違う、邪悪で歪んだ願いが。
冬河リカは今、戦いに恐怖を感じている。
だがそれ以上に、高揚や不思議な安堵感さえ感じていた。
まるで最期の審判のように燃え盛る紅蓮の焔によって世界のすべてが飲み込まれた幼い日のあの夜、冬河リカの魂は凍りつき、砕け散った。
あの日から、冬河リカは、ソーサリーの淡い輝きだけを胸に秘め、自らの運命を破壊した悪意の連鎖に抗い続けている。
薄青い硝煙が薄らと晴れ、
シャアアア〜
8匹の大蛇たちが、憤怒と殺意のこもった咆哮をあげる。
我々の邪魔をするなとでも言いたげに。
「妖精さんたちの〜 」
少女がゆっくりと言葉を紡ぐ。
「妖精さん達の、せっかくのお楽しみを邪魔してしまって悪いけれど、もうそろそろ、その流血滴る オママゴトの時間もお終いにしてもらえるかしら?」
少女が、長い黒髪をかきあげ不敵に言い放つ。
「だって早くしないと、お姉様達が、お茶会の時間に間に合わなくなってしまうもの」
リカの目の前に、精緻な幾何学的模様の円環状、
すると、リカの左手に、薄青く光り輝く
まるで、氷の結晶のような、彫刻のような剣身。
リカはそれを片手で握り締める。
ソーサリー・ソードは、焔光に輝く降魔の剣である。
万応の
リカ は跳躍して、その熱線をかわす。
空中を飛翔するリカのすぐ側を、熱線が轟ゴウという唸りをあげて次々と通り過ぎていく。
そのうちの2発は、ビルのコンクリートに直撃し、燃え盛る灼熱の焔の海となって大爆発を起こす。
フューリズの侵略で蹂躙され、虐殺された
あとは戦闘を開始し、この邪悪なる魔物にして殺戮の天使を仕留めるのみ。
ビルから飛び降りたリカは、そのまま猛スピードでアスファルトに向かって落下していく。
蛹から孵化した蝶が羽根を広げて舞い上がるように、
天空から舞い降りし天使のように、華麗で優雅に宙を舞う。
タンッ つま先から路面に着地したリカ は、両手で剣を握りしめ、疾走する。
爆発の硝煙に紛れ、猛スピードで、直線的に、鮮血の滴るアスファルトを駆け抜けていく。
射程圏内にまで接近してきたリカめがけて、数匹の邪竜の獰猛な顎が襲いきってきた。
リカは慌てて踵で路面を踏みしめ、急ブレーキをかける。
ビシャッ 鮮血の海が跳ね上がり、飛び散った。
それに反応して、リカが、左上段から右袈裟斬りの剣閃を放つ。
剣閃が薄青の軌道を描き、対角線上に剣が降り下ろされる。
ビシュッ
邪竜の左顎が切り裂かれ、咆哮する。
その傷口から虹色の輝きが噴水のように吐き出される。
シャアアアーッ
外敵の脅威を認識した
リカの左手薬指にはめている指輪型の
そのため、ソーサレスは自らの思念を使って
様々な推論と論理演算、予測を得意とし、
更には、周囲の状況や標的の能力など様々なデーターや推論に基づき、自動的に
リカは、上空から次々と迫り来る後続の邪竜の群れを、上段の構えから剣の諸刃で左右に弾いて受け流す。邪竜の甲殻と鋼鉄の刀身が響鳴し合い、火花を散らす。
リカは身軽にサイドステップで左右にかわしながら、距離を維持しつつ連続して小刻みに剣を繰り出し続ける。
まるで水面で美しい妖精がダンスを踊るように。
優雅で華麗に剣を振る。
凶暴で凶悪な両顎を持つ邪竜の1匹にでも捕まれば、少女の華奢な肢体は無惨に引き裂かれ、残酷に惨殺される。
少女は無理矢理恐怖を押し殺し、冷や汗を流しながら苦い唾を飲み込む。
たとえるなら、氷でできたか細い糸の上をつま先だけで歩いている状態。
足を滑らせればどこまでも暗黒が続く奈落の底へと急転直下してしまう。
シャアアア〜
暗闇の中で、リカの身体が光芒に包まれ、華麗な蝶のように浮き上がる。
彼女の真っ直ぐに伸ばした左手の先から、精緻な幾何学模様の円環状、
展開される
ソーサレスは魔導制御機構を使ってソーサリーを構築する事ができる。
魔導制御機構は、次元の狭間に存在する。
ソーサレスは、
魔導制御機構は、
詠唱され、発射された 聖炎の烈光は、
キェェアア〜
この世ならざる者の、断末魔の咆哮。
悪魔精霊は墜落する気球のように、虹色の
トンッ
空中をゆっくりと降下しながら、つま先から路面に静かに着地したリカは、安堵の溜息をもらす。
人々の悲鳴と自動車のクラクション、救急車のサイレンの音は、まだ続いている。
「こっちは、仕留めたわよ」
そして、もう一人の魔女が彷徨っている方向に視線を向けて、小さく呟いた。
最強にして最狂、最悪の魔女の末裔。
消滅と終焉の魔女の
檻村一族の後継者候補、楽園の魔詠姫 《ソーサレス》檻村詩織-
街路樹の立ち並ぶオフィス街並木通りの歩道を、檻村詩織は歩いていた。
清楚で可憐な雰囲気の漂う、まるで天使の生まれ変わりのような少女。
純銀の貴金属のように、自尊心が強く高潔で、気品に溢れている。
揺るぎない正義感と信念を持ち、その瞳の奥には聡明さと強い意思の込められた凛とした輝きが宿っている。
明るい髪と、中等科の制服が、循環するソーサリーで白銀に光り輝いている。
檻村詩織は、慈愛と献身に生命を捧げ、灼熱の正義の炎を燃やす煉獄の聖女である。
檻村詩織は、人々を救済し、守護することにより、希望と未来を紡ぐ楽園の旋律を奏でている。
誰かの事を救いたい。
誰かのことを守りたい。
善良な人々、女性や子供たち、弱い人々、彼らの事を救いたい、守りたい。
純粋な気持ちでそう思う。
でも今は、それ以上に、彼女のことを、リカのことを救いたい。護りたい。
リカは
最近いつも、彼女のことばかり気になってしまう。
彼女もいま、自分と同じように、強烈な戦慄と張り詰めた糸のような緊迫感を覚えながら、この
あるいはもう、すでに敵と遭遇して一戦交えているのだろうか?
私の親友、冬河莉架。
私の盟友であり、戦友であり、
最高の親友、冬河リカ。
戦いの時はいつも冷酷で、残酷な魔女の仮面を被る。
けれども本当は誰よりも純粋で、誠実で、心優しい。
私より一つ年上とは思えない程
精神的に未熟で、幼くて、か弱くて、まるでガラス細工のように今にも壊れてしまいそう。
彼女は私が守ってあげなきゃ駄目なんだ。
そう思ってた。
ソーサレスには、通常の人間にはない、不思議で特殊な感覚にして
人間や
その降魔術、特殊感覚は、人の心の中を解読し、位置情報までも探索できる。
人間を殺戮し、虐殺するために現出した悪魔精霊は、
天使の
比較的、
たしかに、悪魔精霊の
なぜー?
(幾つもの作品の中からフォーレン エンジェルを選んで下さり本当に有難う御座います。
引き続きこの小説をお楽しみ下さい。)
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