闇光の姫様<永遠のプリンセス> 「私、アンデットなんですか⁉︎」【連節-夜闇節】
りるはひら
第1話 聞いてないんですけど⁉︎
小さい頃から歌が好きだった。
TVで色んな人の歌を聞いて真似をして独り歌っていた。
私も歌ってみたい…
でも…それは…叶わなかった…
「
いつもの状況だ…
私は
父親がフランス人で母は日本人のハーフ。
ブロンドの髪に青い目、容姿も雑誌のモデルにスカウトされる事が何回かあるのでいい方なのだろう。
でもここでの生活では悪目立ちするだけ。
気が弱く人との関わりが苦手なのも災いしクラスでは腫れ物扱い、最近では突っかかってくる者もいる。
「派手な格好していつも一人なのに男子からは良く思われたいとか思ってんでしょ!」
また男子絡みか…
女子の中では浮いて誰も相手してもらえないが見た目がこんなだから男子からは良く声をかけられる。
もちろん全て断っている。
この子も大方好きな男子が私に告白でもしたのだろう。
逆恨みもいいとこ。
こういうのは無視するのが一番だ。
そう思い騒ぎ立てるのを無視して階段を降りようとした。
「あんたなんて学校くるな!」
ドン!
え…
背中から激しく突き飛ばされた。
ここ階段だよ…
頭から落ちて行く。
受け身もこれは無理だ…
落ちて行く中、突き飛ばした子が見えた。
顔面素白になっている。
そりゃーそうだよね、あの子にしたらこんなつもりじゃなかった!とか思ってるよね…
やけに落ちるのが遅く感じる。
ああ、これ死ぬかも…
そう思った。
あれ?何も感じない…
本当に死んじゃったかな?
「そう、そなたは死んだのだ」
穏やかも凛々しい声に死亡宣言された。
「やっぱり死んだのね… ここは?」
「ここは私の神域だ」
「神域って事は… 神様ですか⁈」
「いかにも私は夜を司る神、
「あの月読様!」
「そう三神が一人」
あーどうしよう名前しか知らないや…
どんな神だっけ?
「そなたよくわかっていないようだな」
「私は三神が一人、この度はそなたに依頼があり来てもらった」
「依頼ですか?神様が?私に?」
「うむ、三神に深く関係のある世界そなたの世界では異世界となるか、そこで大きな問題が起きる可能性がありそなたにその世界で手助けをしてもらいたいのだ」
「ええ!これってあれですか?死んで異世界にて行くとかの⁈」
「詳しくは言えぬが違う世界へ行ってもらう故に私から祝福を授けよう、何か希望はあるか?」
本当にこれ異世界転生とかよね。
まさか本当にあるなんて。
希望か…
「歌… 歌いたい!」
「よかろう、そなたにはその歌によってこれから行く世界、イヴァーリースを救え」
「歌で世界を⁉︎」
「その力は正にも悪にもなる、しかしそなたの歌への真摯な心で有れば世界を救えるであろう」
「私の歌で世界を救う… なんかすごく重いのですが?」
「なに、異世界を楽しめば良いだけの事。前世では叶わなかった幸せを掴むがよい」
私新しい世界で楽しくなれるかな…
正直不安でしかないけど… だけど。
「わかりました、私新しい世界で歌います!」
「うむ、よく言った!まずは新しい世界、イヴァーリースに慣れるがよい。そして真の仲間を見つけるのだ」
「真の仲間ですか、私にできるかな?仲間…」
「夜の神の名に誓って良き仲間と出会える事を約束しよう!」
神様がここまで言ってくれるならきっと素敵な仲間ができるよね。
なんだか楽しくなって来た。
「頑張ります!」
「うむ、それでは異世界での人生を謳歌するが良い!」
夜の神、月読様がそう言うとまた真っ白になった。
チチチ
「ん… ここは…」
段々と周りがはっきり見えて来た。
林…いや森かなその中にある開けた場所あっちには小川が流れている。
とても穏やかな綺麗なところだ。
小川の流れが止まって水溜りになっているところを見つけ自分を水面に映して見た。
「… うん、何も変わらず私だね。服もそのまま制服って」
「いきなりこんな森に放り出されても困るんですけどー!」
チチチ
サラサラ
小鳥と小川の緩やかに流れる音の中に叫んだ声が染み込んだ。
「… ここすごく声が響く、というか声が出しやすい」
この場所がそのような場所なのか…
「あ、あ〜…」
「場所もそうだけど私自身の声もよく通る感じになってる。歌いたくても全然声が出なかったのに…」
ここで歌ったら気持ちいいだろうな…
歌っちゃおうかな。
誰も居ないよね?
「ラララ~♪」
何これ、すごい自分が出したい声と音がでる!
ラララ〜
ラララ〜ララ〜
私の世界、思う世界に来れたなら願おう。
自由に思う様に歌える世界を。
でもそれは叶わない現実。
それでも、私は心の声で歌い続けよう。
心の歌は誰にも届かないけど。
きっと誰かに届いている。
届いていた、私の知らないあの人に。
そして私は心の声を外に出す。
誰も聞いていないけどね。
でもそこに確かに聞いているひとが居たんだ…
「本当に歌えた… 月読様ありがとう」
気がつくと周りに見た事ない動物が周りを囲んでいた。
「な、何かな?」
動物達は木の実や光る石などを香蓮の前に置いた。
でっかい香連の倍は大きいうさぎみたいな動物、見るからに肉食系のオオカミみたいなのも居る。
しかしどれも争う事なく香連に持って来た物を差し出し歌を聞いていた様だ。
「わあ、くれるの?」
一番前に居た角の生えたうさぎが嬉しそうに飛び跳ねている。
ザワザワ…
なんだろう急に森の雰囲気が変わった。
キュー! ギャアギャア! バサバサ!
集まっていた動物は全て一目散に逃げて行った。
「こちらにおいででしたか」
森の中から低い声がした。
「誰⁉︎」
「これは失礼しました」
森の中から現れたのは黒いスーツのような服を着た男だった。
細身で20代半ばか?もっと年上か?年齢が分かりにくい。
そして肌が異常なまでに白い。
整った顔立ちで穏やかな顔立ちのイケメンだが負のオーラみたいな雰囲気を纏っている。
「姫様、お迎えにあがりました」
男はそう言うと執事がやる様なお辞儀をした。
香蓮はお姫様がどっかにいるのかとキョロキョロしている。
「あなた様の事でございます姫様」
「え、私? 違う違う。私は普通の女子中学生で階段から落とされて死んでここに…」
「おお! まさにあなた様こそ啓示にあった我々夜の眷属の姫様です!」
ヤサイケメンは膝を折、忠誠を示す構えをとった。
「啓示?夜の眷属…」
そういえばここに来る前に月読様は夜の神とか言ってたっけ。
それじゃ啓示も月読様が与えたのかな?
「ああ、素晴らしい!こんな日が来るなんて!」
ヤサイケメンは感動のあまり泣いている様だった。
いや、涙は出てないな…
演技か?
「ふは! も、申し訳ありません。私は貴方様に使える従者。
宰相… 確か国のとても偉い人だったかな?
「是非、姫様のお名前をお教え頂きたく存じます」
「カレンです、性は…」
「いえいえ、お名前だけで十分でございます!真名をここで明かすのは危険が伴いますので」
これはあれかかしら、
「カレン様!カレン様…」
ヤサイケメンは感動しながら私の名前をブツブツ連呼している。
「あの?…」
「申し訳ございません!感動のあまり…うう」
また泣いている様だが涙は出てない。
「この身が生ある身ならこの感動を涙で表せるのですが叶わぬ身、お許し下さい」
え、この人普通の人じゃないって事?
確かに普通の人じゃない感じだけど。
「ええと、ブラッドさんは人間じゃないのですか?」
「はい、私は悪魔王の血族、タイラントデーモンでございます」
ええ!悪魔?
「この世界は悪魔の世界なんですか⁉︎」
「おお、啓示によればカレン姫様は違う世界から来られたと言う事でしたね。ご説明致しましょう」
「この世界はイヴァーリースという世界です。この世界は三神、アマテラス、スサノウ、ツクヨミが統治する世界、我らの常夜の国は夜の神、月読様が統治する土地にある国です」
ああやっぱり月読様の所なんだ。
その三神って兄妹じゃなかったかな?
「常夜の国は月読様の眷属である我ら、夜、闇に属する者で成っている国です」
「住民は悪魔や魔物がほとんどですね」
だ、ダークな世界に来てしまったの私⁈
「魔界的な所なんですか?」
「そうですね、他の神の地域に居る者達からはそう呼ばれる事もございます」
「そんな所に私なんかがなんで?」
「? これは異なる事をおっしゃる。姫様も立派な夜の者ではありませんか」
「はい?」
どういう事だろう?私は普通の中学性なんだけど…
「ええと、私が夜の者と言うのはどういう事でしょう?」
「夜の者、人族が言うに魔界の者ですね。しかも姫様は不死であらせれます!我らが常夜の国を統治されるお方、エターナルプリンセス!」
エタ…何⁉︎ それよりも不死って何?
そんな事何も聞いてないよ!
「そ、それじゃ私は人では無いって事⁉︎」
「そうです!我らが夜の一族、最高位の至高の存在でございます!」
そんな目をキラキラさせて言われても全く嬉しくないよ〜。
「不死という事はアンデットと言う事ですか?」
「いえいえ常夜の国にはアンデットも多数居りますが姫様はアンデットではありません死を超越した特別な存在でございます!」
はっきり言って全然わからない。
「あの…その魔界の人達というのは人族から嫌われていたりとか?」
「そうですね、人族に比べると異形に見える者も多く敬遠する者も居りますが争うという程もなく国交がある国もございますので一つの種族として普通に存在してますね」
そうなんだ、人と魔界の人で争ってるのかと思ったけど違うんだ。
「姫様は存在もお力も唯一無二ですがそのお姿は人族となんら変わらず人族の都に行かれても夜の一族と気付く者は少ないでしょう」
「ただ、魔力に敏感な者も居りますのでそのような者には普通の者では無いと思われる事でしょうね」
見た目だけでも人とそんなに変わらないのは助かるけど…
「さあ、落ち着きましたら姫様の国へご案内致します」
ブラッド・ザハールは手を差し出した。
こんな状況で断る事も出来ないし取り敢えず着いて行く事にした。
でもなんで魔界の人?もう魔人でいいか、魔人になるのよ。
月読様が夜の神様だから?
そんなの聞いた事ないけど…
普通の中学生だったのに、魔界の姫だなんてね。
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