巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
異世界転移をして生きていこう
事なかれ主義は死んでも治らない
人生を振り返った時に思う事は、とってもつまらない人生だったって事。
保育園の頃は、あんまり記憶がない。良くも悪くも普通だったと思う。
小学校の頃は、低学年までは暢気に過ごしていた。ただ、高学年になると自分の好きな物を隠して、周りに合わせて過ごしてきた。きっかけは曖昧だけど、確か女子の間でいじめがあるのを知って、虐められている子と好きな物が同じだったから目立たないようにしていたんだと思う。
中学校では、ちょっと嫌な先輩に目をつけられて、言われるがままいろいろな事をした。悪い事はしてないけど、機嫌を損ねないように必死だった。
高校でも変わらず、結局同級生のパシリだった。
もう少し勇気があれば違ったのかもしれないけど、争う事も競う事も好きじゃない。この性分は死んでも治らないんだと思っていた。
実際に、死んでも治らなかったから筋金入りだと思う。
修学旅行のバス移動中、事故に巻き込まれたらしい。そして、陽キャグループと一緒に死んでしまった。
そこを目の前にいる異世界の神様たちが、地球の神様から記憶を保ったままの僕たちの魂を引き受け、そのままの姿で転移させてくれるという。ライトノベルとかでよく話題に出る異世界転移、というものだと思う。死んでるから転生?
まあ、そこら辺はどうでもいい事だけど、ボケーっとしていたらあいつらはさっさと神様から貰う物を受け取って、下界へと送られていった。
「それで、お主はどうする?」
サンタクロースみたいに、白いひげがモジャモジャと伸びた神様が聞いてくる。
この世界で一番偉い神様らしい。地球の神様とは同期で、時々向こうに魔力を分ける代わりに条件に合う死ぬ運命の人をもらって、世界の発展を促しているらしい。
「どう、と言われても……」
今、どんな能力を受け取るかを選ばされている。
言葉は自動的に分かるようにされているし、服装も転移先に合わせて変えてくれるらしい。
下界に降りたら各国の王様に天啓が降り、迎え入れてもらえるらしいので生活もある程度保証される。
ただ、それは転移者が強力な力を持っているから。魔物が蔓延る世界のため、戦う力を求められているらしい。
争いとか嫌いな僕はいわゆる巻き込まれた、というもので陽キャグループの人たちが主に転移される人だったとの事。僕はオマケらしい。
まあ、よくある事だから、と言われたが僕にとってはたまったものではない。やっぱりどこの世界の神様も理不尽なんだなと思う。
「できれば、戦いたくないなぁ……なんて」
「なるほど。それで?」
恐る恐る答えてみると、大きな反応はなかった。
「剣とか、魔法とか、戦う系のものは避けたいなぁ……なんて言ってみたりして」
「そうか」
一番偉い神様の後ろで、他の神々が眉間にしわを寄せていた。
神様の力を授かる代わりに、神様も活躍によっては力を増したり、信仰者が増えて力を増すからだろう。
「生産とかってあり――」
「「「やったー!!!」」」
僕が話している途中で、一番偉い神様の後ろから歓声が上がった。
神様たちの中でも小さな子たちが無邪気に喜んでいる。
それを、一番偉い神様が注意した。
「これこれ、少しは静かにしなさい。すまんの、この子たちは選ばれることが少ないのもあるが、信仰力も少なくて力が弱いままなんじゃよ。生産系、となると『付与』がいいじゃろう」
「えー! エントだけずるい! プロスの加護も! 物を作るのに便利だよ!!」
「オ、オイラも……食べ物たくさんあるといいと思うんだな」
「プロスは『加工』の加護じゃな。金属や木材を自由に加工できるようになる。ファマは『生育』じゃ。育て方が分かるようになり、成長を促す事もできる加護じゃ。ただ、やっぱり下界の事を考えると『付与』がいいじゃろう。魔道具を作る事ができる。付与術師は少ないからの」
「プロスも! プロスも加護あげるのー!!!」
「た、戦いとは無縁なんだな」
二人の神様が一番偉い神様に抗議をしている。
エントと呼ばれた小さな神様はそんな二人の後ろでおろおろしていた。
もう、何でもいいから戦わなくていいやつください……。
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