1章-1 ビビオは自分の固有能力について話す

「よくわからないってどういうことですの?」


マイラが後ろから口を挟み、ロノアの「おい、俺が話してるだろうが」という言葉を無視してこちらに近寄ってきた。


「あなた、わたくしと蛾の編み上げた魔法と、トカゲの固有能力への干渉をよくわからないままやったっていうこと?」


ビビオにグイと顔を近づけたマイラは、プライドが傷ついたと言わんばかりだ。


「やったことはわかっているんです。二人の魔法の編成も見えたし、リデュエス先輩の固有能力も見えました。ですが、この能力についてどうしてそこまでできるのかわからないんです。まあ、わたしも自分の能力の調査をしていなかったのですが」


明け透けに物を言うビビオに部屋の中はシンと静まり返った。ガランは室内全員が頭に筋を作ったのを見て「どうしてうちの部署にくる奴らって」と肩を落とした。


「ちなみに僕の固有能力がどういうものかわかる?」

「本質的なことはわかりませんが、この部屋内で魔力循環をおこしていますね。そういった魔道具は今のところ開発されていないはずなので、そういう力があると」

「君は最初から僕が固有能力を持っているとわかっていたみたいだけど、それも君の能力?」

「そうです」


リュディエスは「ふん」呟いて考え込んだ。


「お前らあまり聞くんじゃねぇ。下手するとこっちが館長から罰則食らうからな」


中央図書館のトップに思うところがあるのか、ロノアは忌々し気に言った。


「まあお前の固有能力の事情については理解した。以後はお前には能力が無いものとして対応する」


ロノアは嫌々頷いて「行っていいぞ」と手を振った。マイラはまだ納得いかないのか眉を寄せていたが、これ以上の質問はできないと判断して黙っていた。


「まあまあ、固有能力をもっているってことは役に立つってことなんですから。俺はなんでもいいですよ、外勤ではどれだけ便利でも無駄になることはないからな」


ガランはビビオの肩を叩いて笑うと、ビビオもありがたくてこくりと頷いた。


「じゃ、俺たちは明後日から出かけてきます。明日は俺たちは休養日とさせてもらって、明後日にはここに寄らずにそのまま現場へ向かいますからね。よろしくお願いします」


ガランはそう言うと、「あとは自由でいいぞ」とビビオに伝えた。


「これ以降の仕事は?」

「外勤の司書は外での仕事がきついから、あんま縛りがないんだよ。きたばっかでやることもないし、まあ向かう国の情報を調べたり他にも揃えたいものがあったら揃えたりって感じかな。ま、俺は休憩させてもらうわ。帰ってきたばっかだし」


じゃあな、と手を振って出て行ったガランを見送り、ビビオはどうしようかと考えた。

せっかくだし、図書館をうろついてみよう、と急に心を躍らせて「私も出てきます!」と部屋の人間に伝え意気揚々と出ていった。

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