非現実的な恋愛物語

沙水 亭

アレが…無い!?

俺は『竹田たけだ 秋夜しゅうや』現役バリバリの高校生だ。


しかし成績は普通、運動神経は普通、

コミュニケーション能力は人並み。


いわゆる平凡な高校生と、

捉えることもできる。


そんな俺は誰も居ない学校の屋上で

密かに願望を漏らしていた。


「あ〜、彼女欲しい…」


こんな願望を言うからなのか、

俺の周りは嫌がらせかのように

カップルがたくさんいる。


「何を言ってるんだい?タケシュー」


屋上に通じる扉を開ける人物が一人。

こいつは俺の親友で名を『鷹目たかめ 怜也れいや』と言う。


あと俺はクラスの皆から

『タケシュー』と呼ばれている。

(なんでも竹田のタケと秋夜のシュー

から来てるんだと)


「お前は良いよなぁ、彼女いて」


そう、こいつは俺と同族だと思っていたのに…

3ヶ月前に彼女を作りやがった裏切り者だ。


「イチャコラしておりますよ〜」


「しばいたろか」


「でも、タケシューにもいい所は

いっぱいあると思うけどなぁ」


「そうか?」


「あぁ、この間は100円貸してくれたし」


「……いつか返せよ?」


「今返すよ」


そういって怜也は財布から100円を

取り出し俺の手のひらに乗せた。


「さては忘れてたな?」


「なんの事でしょう?」


「まぁ、返してくれたからいいんだけど」


「そういや、もう下校時間だろ?

なにしてんだ?」


黄昏たそがれてた」


「願望垂れ流しにしながらか?」


「そうだよ、悪いか?」


「いや、ただ先生に言われてお前を

帰らしに来た」


「へぇー…えっ?先生?」


「そうだ、お前が屋上にいるから施錠出来ないんだと」


「よし、帰ろ」


「お前は素直だよな……」


「先生に怒られるのは嫌だし、面倒くさい」


「そうだな、俺も帰ってイチャコラするとしようかね」


「あっそうですか」


そう言って俺たちは帰路についた。




「はぁ……」


ため息をつくと幸せが逃げるぞって

言うけどあんなのは迷信だ、実際に

幸せが逃げたことなんて無い。

(個人談)



『キキーーー!!!』


突然車がスリップして俺のいる方向へ突進してきた。


「な!?」


『ガッシャーン!!』


あぁ、ため息をつくと幸せは逃げるんだな……











「……起き……起きんかい!」


俺は慌てて飛び起きる。


「ここは?」


そこは病院のベッド……ではなく雲の上だった……


「あぁ、死んだわ俺」


「いや、まだ死んでもらっては困る」


ネガティブになっている俺に話しかけてきた一人の老人がいた。


「……あんた誰?」


「うむ、元気そうだな!」


「いや死んでるんですが?」


「そうじゃな、

お主の『息子』はな!」


何を言って…あれ、なんか違和感が……


「………My Son!!!???」


「よい反応じゃな!」


「なんでや!まだ俺は見習い魔法使いなのに!なんで!?」


「うむ、お主の身体は先程の事故で

下半身がだいぶ損傷しておってな、

残念じゃが…」


「……」


「流石に可哀想じゃから儂が

『転生』の申請を送った」


「『転生』?」


「お主も知っておろう?ほら

『らいとのべる』?とやらに同じような事があるじゃろ」


「あの超強い武器とかチート能力を

持って異世界を無双するって感じの

転生?」


「そう、と言いたいところなんじゃがお主の身体は正直損傷が酷すぎて転生が出来ないと言われての」


「え」


「と、言うわけで申請が通らなかったから転生は無しで!」


「ええ!?」


「というのは冗談で」


「冗談なのかよ!」


「これよりお主の元の身体をベースにして『新しい身体』で転生してもらおうと思ってな」


「『新しい身体』?」


「……お主、女の身体に憧れた事はあるか?」


「……」


ここはなんと言うのが正解か……


「あります」


素直に答えた。


「そうであろう、そうであろう

と、言うわけで転生じゃ」


「え、ちょっといきなりすぎ!!?」


「いってらっしゃ~い」


「ちょっと待てぇぇ!!?」


こうして俺は身勝手な神様によって

異世界へ転生した。

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