師匠と弟子と決闘――15
風の刃がわたしに迫る。
わたしは慌てない。
「そう簡単にはやられません!」
わたしはサイドステップを踏んで風の刃を躱した。
ルカさんによる狙撃で奇襲には懲りている。だから警戒していたのだ。
ホークヴァン先輩が逃げているあいだ、ウイング・ウインドからの攻撃はなかった。
なぜか? わたしにウイング・ウインドの存在を
そう予想したわたしは、ホークヴァン先輩を追いかけながら、周りにも注意を払っていた。今度こそ、奇襲に対応できるように。
イサム様が、反省して糧にするよう助言してくださいましたからね。
ルカさんのもとへ向かったイサム様を思い、わたしは笑みをこぼした。
風の刃を完璧に躱し、わたしはさらに速度を上げる。
影が差した。
わたしの頭上に二体目のウイング・ウインドがいるようだ。時間差で攻撃するつもりなのだろう。
ウイング・ウインドは二体いるのだから、奇襲役は一体ではない。当然、二体目もやってくる。
「ええ。そうでしょう」
読めていた。
だから、わたしは走る軌道を斜めにズラした。頭上から来る風の刃を避けるために。
ホークヴァン先輩に追いつくのも間もなくだ。あと五メトロで剣が届く。
ホークヴァン先輩が振り返る。
ホークヴァン先輩は、してやったりと言わんばかりの顔をしていた。
「やはり僕が
風の刃が地面に到達する。
風の刃はわたしに当たることはなかったが、代わりに地面をえぐり、砂煙を巻き起こした。同時にホークヴァン先輩が、わたしの足元に目がけて氷の棘を撃ってくる。
「くっ!」
わたしは急ブレーキを
必然的に足が止まり、わたしは砂煙のなかに捕らわれてしまう。
わたしは悟った。
ホークヴァン先輩の真の狙いは、奇襲ではなく煙幕を張ることだったんですね!
視界を封じられた現状、不利なのはわたしだ。相手は遠距離武器の使い手。しかも、魔精が二体もいる。
どこから来るかわからない連続攻撃を、わたしは凌がなくてはならないのだ。
視覚には頼れません! 聴覚を
まぶたを閉じ、わたしは意識を耳に集中させた。
先ほどまでの激闘が嘘のように、シン、と辺りが静まり返る。
「終わりだ!!」
ホークヴァン先輩が叫んだ。
即座にわたしは声のしたほうを向き――背後から風の刃が飛んできた。
わたしは息をのむ。
フェイクですか!
ホークヴァン先輩は、わたしが聴覚に頼るのを読んでいたらしい。だから、あえて大きな声を上げ、攻撃が来る方向を
風の刃が砂煙を散らす。
わたしは右に跳び、飛来した風の刃をギリギリで躱した。
攻撃は終わらない。
着地した直後、二体目のウイング・ウインドが側面から風の刃を放つ。狙いはわたしの上半身。
わたしは急いで身をかがめた。風の刃が頭上を通り過ぎ、わたしの髪の先を
だが、ウイング・ウインドの連係攻撃で、わたしの体勢は崩れきっていた。
ホークヴァン先輩がそこを逃すはずがない。
「随分
ホークヴァン先輩が魔銃を構える。
「けれど、所詮は凡人。僕の敵じゃない」
ホークヴァン先輩が引き金を絞り、氷の棘が射出された。
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