またこの展開ですかああああああって叫ぶのを眺めるだけの簡単な推し事。
かなめ
もはや、お約束。
「ねえ、好きなんだけど」
「それで?」
「ん? 単に言いたかっただけだけど。駄目だった?」
「別に駄目じゃないけど、今言うことかなあとは思った」
「そう?」
「うん。だってあんたの好きなキャラが、今まさに事切れようとしてる場面だったし」
「だあああって、それでもどうしようもなく好きなんだからしょうがないじゃない」
「まあ、好きになるキャラがほぼ必ず死んでるのはウケるけど」
「酷くない? 冷たくない? めっちゃ、他人事過ぎじゃない?」
「実際、他人事だもん。うちの好きになるキャラは属性的には不憫なキャラばっかだけどぎりぎりのラインで生きてるのにさ、よくまあピンポイントで引き当てるなあって尊敬すらしたくなる程度には絶望的に引き当ててるよね」
「うぐ……何も言い返せない」
「しかもさ、ドラマも小説も漫画も映画も無関係ときてる」
「しょうがないじゃああああああああん」
「うちの横で展開知らないまま観てるのに、このひと好きとか言い出しても高確率で今後の展開があれでそれなキャラばっか言われるこっちの身にもなって」
「でも基本的にはあんた何も言わないじゃない」
「いやあ、凹むバリエーションが豊富だなって眺めてるから楽しくなってきてて」
「ちょっと待って? 娯楽にされてる? 楽しまないでくれる?」
「無理でしょう。あんただってうちの好きなキャラが不憫展開だって分かってる時はにやにやしてこっち観察してるでしょ」
「だって普段はツンと澄ました状態のあんたの顔面がめっちゃ動くから面白いし」
「理屈的にはそれと同じ」
「……えええ。同じじゃないよ。絶対に違うと思うけど」
「まあ、手っ取り早く泣きたいときは便利だけど」
「便利機能扱い」
「泣きたくても泣けないときに観れば泣けるって確定してるんだから、お手軽に使えて便利だと思うけど?」
「そんな格安コンビニスナック感覚で好きなキャラの不憫展開を楽しむのはどうなの。でも、あんたのそういうところ、嫌いじゃないわ」
「それは何より。で、一応一時停止ボタン押してあるけど続きは流して良いの? タオル用意して」
「じゃーん。本日は吸水性抜群の年季の入った大判タオルをお供に観ておりまーす」
「は? あんた嘘でしょう? まだそれ持ってたの」
「もちのろんです。めっちゃ大事にしてるよ~」
「……ああそう。ちゃんと使ってもらえてて良かったわ」
「使うに決まってるじゃない」
「だってあんな昔に適当に選んでプレゼントした安物だったし、とっくの昔に八つ当たりとかでボロッボロになってるかと思ってたから」
「何言ってんの。私にとってのライナスの毛布をそう簡単にボロボロにして手放すわけないじゃない」
「そこまで執着するシロモノなの、それ?」
「あんたにとってはそうじゃなくても、私にとってはそうなの」
「まあ、使ってるあんたが良いなら良いけど」
「何よ不満そうね」
「べっつにぃ」
「むー」
「…………どうせ泣きつくなら別のものにしてくれれば良いのに」
「んー? なんか言った?」
「っ何でもないっ! あんたはそっち向いてなさい!」
「あああああ、ちょっとまってそっちもなの? ねえ! またひとり好きなキャラがあああああ」
「……本当に喜怒哀楽の振り幅、昔から変わらなさすぎでしょ」
「うっさいいいいいあんたにだけは言われたくないいいいいいいいいいいいい」
end
またこの展開ですかああああああって叫ぶのを眺めるだけの簡単な推し事。 かなめ @eleanor
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます