第23話 #ハル
※中絶に関する表現がありますので、苦手な方はこのエピソードは飛ばして下さい。
祖父は部屋から出てくると、廊下で待っていた俺に向かって話し始めた。
「ハル、いつまでもグジグジしみったれたツラをするな。そんなじゃ家族を守れんぞ。辛い時こそ自分が踏ん張らんと誰も守れんからな。 これから大事な家族を守る方法を教えるから、じいちゃんの戦うところを良く見とくんだぞ」
「わかった」
「それと、マキちゃんからのご指名や。 直ぐにチャーハン作ってマキちゃんに届けてくれるか」
「わかった。すぐ作ってくる」
お店の方は、父が火を落とさずに待機してくれてたから、直ぐに調理に取り掛かった。
1か月以上ブランクがあって、その間体調を崩してたのもあって、鍋を持つ腕が思ってたよりも辛かった。
だけど、マキの辛さに比べたらこんなの屁みたいな物だと言い聞かせて必死に鍋を振るった。
それと、マキに一言でも謝りたくてメモを挟んでから、マキの部屋へチャーハンを届けた。
その後、自宅で休んでいる祖父の所へ行くと、色々と話してくれた。
祖父は、この町で個人商店を営む人たちの顔役で、役所や市議会議員とパイプがあるそうだ。他にも過去に色々なトラブルが起きた際に間に入ったりすることが何度もあって、そういった関係で貸しがある地主や仲の良い弁護士なんかも居るらしく、早速今回の件で各所に動いてもらうそうだ。
具体的なことはまだ教えてくれなかったけど、恐らく訴訟とか身内の職場への圧力とかだと思われた。 そして、それらの相談や交渉に行くときに、俺に同行するように言われた。
また、名前を出せない所にも協力を仰いで、須藤本人に落とし前を付けさせる様な話も臭わせていた。 その関係で、警察への通報は現段階では保留にするらしい。
ここまでの話を聞いて、祖父が相当怒っていることが分かった。
恐らく須藤やその家族は、もう一生この町では生きていくことが出来ないだろう。
1か月後。
須藤の一家はこの町から消えた。
片岡の話では、夜逃げでもしたかのようにある日突然居なくなったと近所では噂になっているらしい。
あらゆる手を使って丸裸にしたからな。
この町を出た所でまともな生活は出来ていないだろう。
祖父が少しだけ教えてくれたのが
「マキちゃんが負ったキズ以上のキズを負わせたからな。 あの小僧は一生交尾もトイレで糞も出来ん」
それを聞いた時、俺は股間がひゅっとなった。
そして、マキは、本人の意思で堕胎手術を受けた。
今は、ウチの自宅に移って療養している。
まだまだ精神的に不安定だが、少しづつ俺とも会話が出来るようになってきていて、体調がある程度戻ったら、メンタルクリニックを受診する予定だ。
それと残念ながら、頑張って入った高校は、中退した。
でも本人は、そのことには意外と気にしていない様子だった。
そして、バイト頑張って自分で買ったスマホは、「もう要らない」と言って、2度と触ることは無かった。
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