第57話 クズ勇(友)


しつこい位に通信水晶が光っている。


考えが纏まらないから放置していたら…余りにもしつこく光りだす。


「理人くん、ガイアだってもう良い大人なんだから放って置いたら」


「幼馴染だが…彼奴は女の敵だ」


「理人お兄ちゃんは人が良すぎるから…もう絶縁しても良い位だよ」


「ガイアは余り評判は良くありませんわ…貴族令嬢の間で悪い噂が飛んでいますわよ」


確かに女の敵で最低ではあるが親友ではある…仕方ない。


「悪い、ガイアと話をするから、部屋に籠るよ」


それだけ伝えると俺は部屋に籠った。


◆◆◆


「ハァ、ハァやっと出たな…大変な事になったんだ」


顔に相当な焦りがある、教皇様やローアン大司教、何を言ったんだ。


「一体どうしたんだ?」


「それが、折角理人が、俺の為にくれたブラック小切手に制限がつけられたんだ」


どの位迄、下げられたんだ。


まぁ無制限にして無駄使いすればそうなるな。


「それで幾ら迄下げられたんだ?」


「一か月、金貨800枚だ、少ないだろう?」


馬鹿か?


金貨800枚(約8千万)でなんで文句が出るんだ?


流石にエルフやダークエルフを購入しようとすれば足りないが…人族の奴隷なら貴族の没落令嬢すら余裕で買えるぞ。


「それなら、充分すぎる気がするが…多分こっちは月に金貨10枚~20枚で回っているぞ」


「お前は、あんな幼馴染で満足しているからだ…良いか、良い女という物は何かとお金が掛かるもんなんだよ!」


「そうか…流石に俺もどうすれば良いか解らないな、教皇様達は何か言っていなかったのか?」


「ああっ、実績を上げれば、考えると言っていた」


だったらやる事は一つだろう。


「なら、そろそろ、旅だったらどうだ? 四天王の一人でも倒せば、多分解除してくれるだろう」


「ああっ…そう言えば理人は、デスラを倒したんだってな」


本当は倒してないんだがな…


「ああっ」


「まぁ、理人が単独で倒せるなら、四天王も大した事無いのかもな」


「いや、俺が倒したのは、その中では一番弱いデスラだからな…絶対に油断するなよ!」


「解った、解った…気をつける」


絶対に解ってないな…


記録水晶越しに見える女の数…なんだこの数。


「あの…ガイア、今チラッと見えたんだが、裸の女性、しかもエルフやらダークエルフやらが見えたんだが、目の錯覚か?」


「いや…見間違いじゃないぞ、リヒャールさんにお願いして、この街の娼婦や奴隷になっているエルフやダークエルフを全部買ったんだ、コンプリートだぜ、凄いだろう?」


ひい、ふう、みぃ、よ…嘘だろう見える範囲だけで7人も居る。


まぁ、流石に娼館や奴隷になるのが少ない種族だからな、それ程じゃないが…いったい何人いるんだ…


「それで、一体何人買ったんだ」


「ああっ23人買った…ああっもう妊娠した奴は教皇が引き取っていったから…今、俺の手持ちは14人だ」


「そうか…」


映る範囲に令嬢もジザベルもこの前買った筈の戦闘用の女奴隷も居ない…


そう言えば、ジザベルは…この間話した時何も言っていなかったな。


「全部美人だろう?」


「ジザベルや令嬢たちはどうしたんだ?」


「なんだ、 ジザベル欲しかったのか? 事前に言ってくれれば、俺のお古で良ければあげたんだが…一応は可哀そうだから、ジザベルも令嬢達も『妊娠薬』つかって妊娠させてやったよ」


ますます拗らせているな…


「それで居ないのか? ジザベルとは上手くやっていたんじゃないのか?」


「それがな、他のエルフやダークエルフから聞いたんだが、俺達から見たら若く綺麗に見えるが、他のエルフから聞いたらお婆ちゃんらしいんだ…『あんな歳の女同族なら絶対に抱きません』と他のエルフが言うのよ」


「そうか…」


「ああっしかも他のエルフから『加齢臭だってしますよ』って言われてな、よく見ていると香水やお香で匂いを誤魔化していたんだぜ…それ聞いたらもう駄目だ…ババアだと解ったらもう抱きたくなくなったわ、まぁ付き合いも長いから、それでも妊娠はさせてやったけどな」


「それで、ジザベルや令嬢は何処に行ったんだ」


「ああっ、ジザベルについババアって言っちまったら『貴方にはもうついて行けません』ってババアの癖に文句言うから、教皇に引き取って貰ったよ」


「令嬢は?」


「可哀そうだからよ…『妊娠薬』使ってやってやったよ…お前との約束だからよ、ちゃんと孕ませてやったよ…だけど此処だけの話な…絶対に他の奴には言うなよ?」


なにか重要な話か?


「俺…もう豚はいらねーや」


此奴何言っているんだ、中身は兎も角、外見は各国選りすぐりの美女だぞ。


「ガイア…目が腐ってないか? 凄い美女達じゃないか?」


「なんだ、理人、彼奴らも欲しかったのか? 中古で良ければやったのにな…あれ豚だぜ…お前もロザリオのババアと豚2人にオーガと暮らしているもんな…ほら見ろよ…」


ガイアはいきなり近くのエルフを引き寄せ胸を掴んだ。


「きゃぁぁぁー-恥ずかしいです、ガイア様」


「よく見ろよ、このスレンダーな体、こういう、良い女を抱いちまうとよ…あの程度、美人とは思えなくなるぜ、肉の塊、本当に豚みたいに思えてよ、しかもジザベル達はババアだから加齢臭がするが、若いエルフは人族に比べて匂いも臭くないんだぜ、もう普通の女は臭いから豚にしか思えなくてよ…抱きたくねーんだわ」


これがガイアの本性か…


此処迄変わる物なのか…信じられないな。


一応は勇者だぞ。


「それで?」


「教皇に頼んでもう派遣しないで良いって言った…そうしたらよう『そうですか』だと」


多分、もう各国最低限、必要な『勇者の子』を手に入れたのかも知れないな…崩壊じゃなく、自分から壊すなんて思わなかったな。


金貨800枚それでも出してくれる教皇様は…優しいと思うな。


「ガイア…補充がきかないなら、その14人は孕ませないようにした方が良いんじゃないか? 流石に手放したくないだろう?」


「なんでだ? 避妊なんてしたら気持ちよくねーだろう、それに幾らエルフでもよ…飽きないなんて嘘だぜ、数回したら飽きるんだ…そうだ今いる14人の中から1人か2人飽きたらやろうか?」


「そんなの貰ったら4人に殺されるよ…残念だけど無理だな」


「あいつ等ブサイクの癖に妙に嫉妬深いもんな…理人可哀そうに(笑)」


「ああっ、俺はそれで満足だから良いんだが…戦闘用奴隷はどうしたんだ」


「ああっ、解放した」


「どうしてだ…」


流石に魔族との戦いは無理だが当座の間の戦力にはなるだろう。


「だってよ、あいつ等は令嬢以下なんだ、今の俺が抱きたいと思うか?」


「思わないな」


「だからお払い箱、解放したんだ」


女性の奴隷で性処理可能…しかも戦闘も出来る。


高かった筈なのに…なにしているんだ…此奴。


『仲間居なくちゃ不味いだろう? 四天王や魔王との戦いどうするんだ』


「あのよ…親友だから怒らねーが、俺は勇者だぜ、お前が単独で四天王の一角を倒したんだ、俺に出来ねーわけないだろう」


「…そうだな」


何を言っても無駄そうだ。


「俺には仲間なんていらねーんだ、ただ抱ける女が居れば十分だ」


ガイア…いったい…お前何処に行くんだ…


「そうか」


俺にはもうそれしか言えなかった。


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