第50話 悪夢
『此処は何処だ?』
我が眠っているい間にまた何処かに運ばれたか…
何処に運んでも無駄だ、我は夜、その本来の姿を取り戻し、近くの人が住む集落を皆殺しにする…せいぜいが半日遠ざけるのが限界だ。
『此処は…可笑しい、廃墟じゃなく人が多く居る』
だが、やる事は決まっている…
『死霊召喚…殺して、殺して、殺しまくれ』
我の能力のその怖さは『数』すべての人間を殺してやる。
◆◆◆
「うわぁぁぁー-っなんでこんな所に死霊がいるんだぁー-っ」
『人間…殺す』
「おかあさん、おかあさん助けてー――っ」
「早く逃げないと、ああっ駄目、私が、私がぁぁぁぁー-っ」
「いやぁぁぁぁー――お母さんがお母さんが死んじゃうだれかー-」
「私は良いから…早く逃げなさい…良いから早くー――っ」
次々に人は殺され蹂躙されていく。
だれか、だれか助けてくれ…誰か。
来た…『魔道機巧部隊』これで助かる。
「ゴーレムよ、死霊を駆逐して人々を守るのだー――っいけー-っ」
「うごぉぉぉぉー――っ」
これで助かる…そう思った…だが…
ゴーレムが叩きつけても、首がとれようが無視して術者に襲い掛かっていく死霊を前にどんどん軍隊は押されていった。
逃げないと…
我が子を守り犠牲になった母親。
この子位は助けても…駄目だ…子供は死霊に掴まれている…ゴメン。
俺は子供を見捨てて逃げた。
この都市、最強の『魔道機巧部隊』が歯が立たないなんて…
何処に、何処に行けば助かるんだ…
気のせいか死霊の数が増えている気がする。
そうだ、教会だ…死霊の天敵は『聖なる物』だ、あそこなら…
あそこなら…助かる。
俺は死霊から逃げるように教会に向かった。
教会が見えてきた…だが様子が可笑しい。
駄目だ…死霊が取り囲んでいる…
教会の聖騎士たちが押されている…
どうにか教会の敷地に入り込めないか考え裏に回った。
裏側の門には死霊が居ない…そこから入り込み、正面に回った。
「いれてくれ…頼む、あけてくれー――っ」
「済まないがそれは出来ない…司祭様達が集団魔法で結界を張ってくれた…だから此処は開けられないんだ」
「そんな…」
聖騎士10人が入り口で戦っている…死霊をたしかに倒しているが…焼石に水だ。
100を超える死霊に囲まれて徐々に押されている。
「ホーリーバインド…駄目だ数が多すぎる」
「陣形を崩すな…崩したらおしまいだ、そこの少年、教会に入れないなら逃げろ!」
「何処へ…」
「何処へでも良い、此処はもう終わり、ぐふっ」
「あああっ….」
「少年、これをやる…これをかぶって…逃げなさい」
聖騎士が上級聖水を投げてくれた。
俺はそれを被って逃げた。
何処へ…逃げれば良いんだ…冒険者ギルド、領主様の屋敷…何処に逃げれば良い。
後ろで、さっき俺に聖水をくれた聖騎士の首が契られて転がっていた。
その他の聖騎士も最早殺されていて動かなくなっていた。
逃げて、逃げて、逃げたが、何処も戦場になっていた。
領主様の屋敷は死霊に囲まれていた。
だから、冒険者ギルドに逃げた。
「早く、入るなら早く入りたまえ」
間一髪、俺はギルドに救われた。
「ハァハァ、有難うございます」
「良いんだ、だがそう安心も出来ない、今は戦える冒険者の多くは、外に出て戦っている、此処は要塞都市この辺りの要だ…此処より大きな街は近くに無い…助けは間に合わない」
「それじゃ…」
「自分達で戦うか逃げるしかない…相手は死霊だ、夜が過ぎ去れば居なくなる…明日の朝まで持てばこちらの勝ちだ」
「そうですよね…」
「戦闘が出来ない者は隠れていれば良い…明日の朝まで逃げきれたら助かる」
「はい…」
「さぁ、行くぞ…俺たちが出た後はしっかりと戸締りをしてくれ」
「「「「「はっ」」」」」
冒険者5人を残してギルマスは戦いに出て行った。
商人のジョブしかない俺はその背中を見送る事しか出来なかった。
◆◆◆
「まさか…今回の黒幕はデスラだったとは…」
「ほう、此処に来る者がおるとはのう…少し遊びが過ぎたわい」
「怯むな、今此処には、この都市の最高戦力が集まっている、相手は四天王とはいえ、単体では大したことないと聞く、行くぞー-っ」
「「「「「おおうー――っ」」」」」
俺たち冒険者、軍、聖騎士などは戦いながら分析し…此処にたどり着いた。
「我々がお前を潰す…魔道機巧部隊…集団詠唱…」
これなら俺達の出る出番は無いな。
家よりでかいゴーレムが3体、デスラに向かった。
これでデスラは終わりだ。
「俺達冒険者は、残りの死霊をせん滅しつつ…救助、教会の方は…」
ドゴー―――――ツ、ガラガラガラ…
「なっ…嘘だろう、あの巨大なゴーレムが…馬鹿逃げろー――っ」
駄目だ間に合わなかった…この都市を守っていた、魔道機巧部隊が死んでいた…
そうか…俺たちは囲まれていたのか。
だが、可笑しい…確かに魔道機巧部隊は死霊に後ろから殺されたのかも知れないが…ゴーレムの破壊の意味が解らない。
まさか、あの小柄なデスラが壊したとは思えない。
「我を、大した事が無いだと…たかが人間の分際で、よう言うた物よ! 真の姿を見せてくれるぞ! 竜化―――っ」
デスラの体を黒い霧が包んだ…その霧は大きくなりその中から巨大なドラゴンの骨が現れた、ゴーレム所ではない…大きな屋敷位はある。
「ドラゴンゾンビ…」
「「「「ドラゴンゾンビだー―――っ」」」」
「死霊を束ねる我が死霊より弱い訳が無かろうがー―――っ、この姿を現したからには…この都市は全滅だぁぁぁぁー-」
終わりだ、こんな物に普通の人間が勝てるわけが無い。
もうこの都市は終わりだ…
勇者でも無ければ…此奴には勝てない…
黒い炎で焼かれながら…己の無力さを感じながら俺は死を迎えた。
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