第38話 『理人』が『理人くん』に変わった


「おはよう理人くん!」


マリアの笑顔がすぐ傍にあった。


マリアの笑顔を見ながら俺はまた眠ってしまったようだ。


「おはよう…え~と、なんて呼べば良い?」


『理人くん』こう呼ばれていたのは子供の頃だ。


幼馴染とはいえ村での事。


前世で言う同級生とは違い微妙に年齢に違いがある。


マリアは俺やガイアより2つ年上で幼馴染の中では一番年上だった。


だから良くお姉ちゃん風邪をこじらしていた。


最もそれは心地よくて、自分おやつを減らして俺たちの分を増やしてくれたり、怪我して泣いていると治療してくれたりとまるで本当の姉みたいだった…まぁ凄く不器用だったんだけどね。


「私、思ったの、理人くんにあんなに愛されて、あれが理人くんの私に対する思いなら、ちゃんと答えないといけないってね、もう理人くんの前じゃ聖女ぶるのも辞めるよ…だから理人じゃなくて『理人くん』って呼ぶことにしたの、だから『理人くん』もほらね」


これでどう呼んで欲しいのか解った。


ちょっと恥ずかしいけど、これがマリアの『愛』だそう思えるから仕方ない。


「マリ姉(まりねぇ) これで良い?」


「うん、ありがとう理人くん、愛してるわ、ちゅっ」


いきなりキスされた。


まぁ軽いキスだけど…凄く嬉しい。


「それじゃ、理人くん流石に汗でベトベトだからシャワー浴びようか?」


「そうだね、浴びようか? あれマリ姉?」


マリアに腕を掴まれた。


「理人くん…それ、もう仕方ないなぁ~、そんなにしちゃって、それも愛だよね! シャワーの前にしちゃおうか…ねぇ」


「マリ姉、流石に汚いよ」


「理人くん、昨日お姉ちゃんには汚い所はないって言ったよね? 勿論、お姉ちゃんも同じ思いだよ、だから気にしないで良いよ…ほらね」


お姉ちゃん…目がすわっている。


そのままマリアにベッドに逆戻りさせられ押し倒された。


お互い汗まみれなのに気にしないで、また行為にふけっていった。


結局シャワーを浴びるまで行為を繰り返し2時間近く掛かった。



◆◆◆


「はい、理人くん、あ~ん」


「マリ姉、流石に少し恥ずかしい…」


あれからシャワーを無事終えて今は皆と朝食をとっている。


「あの…マリア一体どうしたんだ?」


「何か様子が変なんだけど? どうしたの?」


「別に可笑しくなったわけじゃ無いわ、昨日凄く理人くんに愛されてね、自分に素直になっただけよ! 元の私ってこんな感じだよ?忘れちゃった」


「そうだったかな~」


「確かにお姉ちゃん風邪拗らせていたけど、そうだっけ?」


「そうよ! だから聖女様はおしまい…あっ義務を放棄したわけじゃ無いわ…好きな理人くんの前位は、昔のままの、本当の自分に戻ろうと思ったのよ」


「だからと言ってそれは変わりすぎな気がするが」


「そうよ可笑しいよ…」


「変わるわよ…貴方達だって絶対に変わるから」


「あの理人、一体何があったんだ」


「どうしちゃったの?」


「理人くん、二人で愛し合っただけだよね」


「そうだね…」


一番素敵に思えた時の幼馴染に戻ったマリアには、何も言えなかった。



◆◆◆


マリアに話を聞きたかった私達は、理人に出掛けるのはお昼からにしようと話をした。


そしてリタの部屋に3人でいる。


「それでどうしたんだ?」


「何かあったの?」


どうも、朝あってから様子が可笑しい。


確かに昨日の夜の事は女にとって大きな出来事だ。


だからと言ってこんなに何かが変わるとは思えない。


「別に私は私…ただ理人くんの好きな私によりなりたいだけ」


「それはどういう事なんだ?」


「いきなりそれってどうしたの?」


余りに変わりすぎだ。


「あのね、理人くんは特別なの…他の人とは全然違うの…抱きしめられながら一晩中愛しているっていってくれるし、それに私には汚い場所なんて無いって…思い出してもうふふふ」


一晩中?


何かが可笑しい…


「いや、今一晩中って聞いた気がするが」


「普通は40分位から長くても2時間位じゃないの? うちのお母さんから聞いた話だと1時間くらい…と教わったよ」


私もそうだ…親からもそう聞いたし…実際に偶然に見てしまったものもそんな感じだった。


「でしょう…だけど理人くんは違うわ、一晩中愛してくれて、本当に愛してくれているのが解るわ、まぁ実際に経験しないと解らないわ…こほん、だから私は、理人くん多分、一番私を好きだった頃の私になりたい、そう思っただけよ」


正直言って、何を言っているのか半分しか解らない。


だけど…マリアが凄く幸せそうなのは解った。


一緒に散歩した時に自分から手をつないだり、腕を組みに行くマリアの姿は…今迄で一番幸せそうだった。

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