第23話 帰ってきた理人①

俺は深夜遅くにガブギの街についた。


3人に会う前に金をガイアに払いたかったからだ。


冒険者ギルドは24時間営業。


良く買い取り金が無い、なんて物語はあるがこの世界ではない。


もし、現金が無ければ冒険者証明が口座を兼ねていて振り込まれる。


まぁ銀行の口座みたいなものだ。


「ただいま~、討伐証明と換金お願い」


「はい! 理人さま!」


「驚くのは良いけど! 今回の情報ミスは危なかったよ」


「情報ミスですか? いずれにしても地竜の討伐ならギルマス立ち合いです、裏の倉庫で素材を見ながらお話をさせて頂きます、詳しくはそちらでお願い致します」


「それじゃ頼む」


「はい」


裏の倉庫の地竜の素材をストレージから取り出した。


討伐証明部位の頭の中央の角2本を手前に置き、他の素材は無造作に置く。


殺されてすぐだったようで素材はちゃんと回収できた。


流石にあそこ迄の大きさは無いが、サイズ的には大型と言っても過言では無い。


「おい、理人…何か手違いがあった…あああっ、これは済まない」


実際に会ったのは最早地竜ですらない…だが、もし彼奴じゃなくてこっちと遭遇しても多分俺は死んでいた。


大型2体じゃ、今のガイアだって単独じゃ無理だ。


まぁ将来は解らないが。


「まぁどうにか出来たから良かったけど、場合によっては死にかねない」


「本当にすまなかったな…まさか大型2体とは」


「いや、どうにかなったから気にしないでくれ」


本当は俺じゃ無いから、余り強くはいえない。


こっちもある意味如何様だ。


「それじゃ、詫び料も加算して計算させて貰う、討伐報酬は1体当たりこの大きさなら金貨2000枚(約2億円)だが情報ミスの詫びを加算して金貨2200枚、2体で金貨4400枚(約4億4千万)本来は竜種はその金額に素材の報酬も含むが、輸送の手間を考え金貨2000枚(約2億円)合計金貨6400枚(6億4千万)でどうだ」


文句ないな。


寧ろ悪い位だ。


「それで良い、金貨1200枚は金貨で欲しい、そしてガイアを呼びに行ってくれないか、報酬は金貨1枚、あと金貨100枚をギルドに寄付するから、1週間位飲み食い無料にして欲しい」


「いつも済まないな」


「あとギルマスに立ち合い料金として金貨100枚出す、お願いできますか?」


「破格過ぎるだろう1/10でも多い位だ」


「大物を狩った時のご祝儀だよ、そうだ担当の君にも金貨5枚ご祝儀で出すよ」


「ありがとうございます」


冒険者は妬みも多い。


稼いだ時は、その分出す…これをしないと嫌われる。


これだけ使っても金貨4995枚余る、充分だ。



◆◆◆


暫く待つとガイアが現れた。


連れてきた冒険者に金貨1枚のチップで銀貨2枚渡した。


多分まだ子供だ、笑顔でお礼を言って帰っていった。


「理人、苦労かけたなそれで金貨1200枚はどうにかなったのか?」


「まぁどうにかなったよ、それじゃギルマス立ち合いで引き渡しをするぞ」


「ああっ、ありがとうな」


「一応はギルドで数えているが、ちゃんと自分の方でも数えてくれ」



「ああっ、解った…だがめんどくさいから娼館の主を連れてきたんだ、直接渡してあげてくれ」


ガイア…まぁ仕方ないのか?


普通は娼婦を身請けする事は隠すだろう。


相手は冒険者ギルドだぞ、バレバレでも体裁位は整えるべきだ。


だが、それは敢えて言わない。


昔の俺ならとげとげ文句を言ったが『もう言わない』と決めた。


「それじゃ、一応は俺からガイアに渡すお金だから、ガイアから渡してやってくれ」


「ああっそうだな」


俺はガイアに金貨の入った袋を渡した。


するとそのまま金貨の入った袋をガイアは娼館の主に渡した。


「それでは数えさせて頂きます」


そう言うと、娼館の主は金貨の数を数え始めた。


流石は商人、金貨1200を僅かな時間で数え終わった。


「確かに、金貨1200枚頂きました、これでお二人は貴方の者です、おめでとう御座います…それでパーティは如何なさいますか?」


「パーティってなんだ!」


「娼婦が足を洗い、幸せになるのはおめでたい事で御座います、そこで、盛大なパーティを行うのです、ましてジザベルとイザベルは看板娘です、是非とも盛大にお願い致します」


なんだか…昔の吉原みたいだな。


ガイアの顔を見ると俺の方を見ている…


仕方が無いな。


「それでそれは幾ら位使えばガイアの面子が保てるのですか?」


「そうですね金貨100枚位で如何でしょうか?」


約1千万かよ…下級貴族の令嬢の奴隷が買えるじゃないか。


「理人…」


仕方ないな出すしかないか?


「あのギルマス、俺に手紙は届いてませんか?」


「流石に無いのか? いや済まなかった」


「何も届いてないぞ」


なら仕方ない、此処までは俺が出すしかない。


だが、少しは自重して貰おう。


「解った、おれの口座から金貨100枚用意するよ…だがガイアこれは本当は三人とちょっと贅沢するつもりの金だったんだ…」


「そうか、悪いな」


「まぁ良いや親友だからな」


それなら要らないとは言わないんだな。


「それにな、理人にちょっと相談があるんだ」


「え~となにかな?」


「そう警戒するなよ、少し寂しいぞ! 実はな折角ダークエルフの二人を手に入れたからな、エルフも欲しくなったんだ、娼館の主に聞いたらな、チョチョリーナも身請け可能だって言うんだ、どうにかならないかな?」


「それで幾らなんだ」


チョチョリーナは明らかに二人より格が上だガブギの街の正真正銘の看板娼婦だ。


安いわけはないな。



「金貨900枚で御座います」


「金貨900枚…」


約9千万、エルフの血が入っていると考えたら安いのかも知れない。


以前、奴隷好きの冒険者から聞いた話だと、高級なエルフの奴隷は億単位だった。


元娼婦だから…だから安いのかも知れない。


「無理か、無理だよな…だけど理人親友だろう、本当に頼むどうにかしてくれ」


俺は既に裏で行動を起こしていた。


「いいぜ、どうにかするよ…それでそのお金何時迄なら待って貰える」


「本来は身請けの話は早い者勝ちで御座います…」


「解った、手付で金貨10枚入れる、それで10日間、待ってくれないか?」


「本来は出来ませんが、二人も身請け頂き、パーティ代も払って頂けるようなので、特別にそれでお待ちして貰える様に話をつけます…但しもし期間を過ぎても残りが用意できなければ金貨10枚はペナルティとして返せません…宜しいですか?」


「ああっ構わない」


「理人、ありがとうな」


「ああっ、実はガイアにもっと楽しく生きて貰いたくて、サプライズを考えていたんだ…ガイアハーレムを作ろうと思ってな、まだ上手く行くか解らないが…それに賛同してくれるなら良いよ」


「ハーレムって、本当か?」


「ああっ、実は余りガイアに我慢させちゃいけないと思って計画中なんだよ、それと同時に、ガイアにある程度自由になる金をどうにかならないかと今あちこち交渉中なんだ、それが上手くいけばチョチョリーナもどうにか出来るし、他の女も調達できる…相談しないで勝手にして済まないな」


なんだ、ガイアが振るえている…勝手な事して怒らせたか?


「お前こそが心の友だ、親友だ、なに言っているんだ俺の幸せの為に動いて悪い事なんて無いぞ…本当に感謝している」


満面の笑みでガイアは娼館の主とギルドを立ち去っていった。


◆◆◆


「疲れた…地竜より疲れた…俺が手に入れた金について言わないでくれてありがとうございました」


「ギルドには守秘義務があるからな…大変だな」


「大変そうですね」


「まぁね」


ギルマス達の同情の目で見送られながら俺もギルドを後にした。




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