え?!今、なんって言った?!


 紡の言葉に航平も「…いいの?!やったぁ〜い!!☆」とさっきまでのションボリ顔は、どこにいったのやら…笑顔満点で一緒に来ていた男の子の手を引き、中へ入っていった。


 隣にいた男の子は「…営業時間外なのに、すみません!」と、この子は何かと礼儀が正しい。

 ただ、そのぴょんと跳ねた、ちょっとした寝癖が気になったのは…俺だけか?


「そこのバーカウンターで、座って待っててね?」


 紡は2人を誘導し、せっせとキッチンへ。

 俺は、2人にランチメニューを渡してあげて、2人はランチメニューを見ながら、ルンルンと楽しそうに会話を紡いでいく。


 そんな2人は、とてもキラキラしていたんだ。大学生ぐらいだろうか?若くて、とても微笑ましくて、俺らにもこんな時代があって、楽しい日々を送っていたんだよな…と俺は、しみじみ感じていたんだ。


「う〜ん…悩むなぁ…」

 ランチメニューを決められない航平と男の子…そこへ俺は、お冷とおしぼりをそっとテーブルへ差し出し


「どれも全て美味しいよ?…なっ?」と紡へ眼差しを向けると、紡は言葉も発さずに、耳をキュンっと赤くしていたんだ。


「航平、何にするか決まったか?」

「うーん…!!!決まらなぃぃ…!」


 目をギュっと瞑りながらも、悩みに悩みまくった航平の口から飛び出した言葉に、俺もも耳を疑ってしまったんだ。


「だめだ〜!!!僕には決められない!…ぬあぁ〜っ!紡が決めてっ!!!」


 …ん?

 え?!今、なんって言った?!


 航平の言葉にキッチンにいたも「…んへっ?!ぼ、僕が決めるのっ?!」っと驚いた様子で航平に視線を寄せる…でも、航平の隣にいる男の子も「…お、俺が決めんのか?!」なんて同時に返すもんだから…


 さすがの航平も「…えっ…?…えぇっ?!」と驚きを隠せずに戸惑っていたんだ…。


 まさかだった。こんなことってあるもんなんだな…航平の隣にいる男の子の名はつむぐ。そして、キッチンに立つ可愛い料理人の名前もつむぐ。きっとこの出会いは、何かの縁なのかもしれない…。そんな思いとは裏腹に航平は可愛い顔をしながらあたふたしている。


「お、も…紡って名前だったの?!」そんなあたふたした顔とは正反対にもう1人の紡は目を丸くしながら航平を見つめながら、キョトンとしている。


「…お、俺…同じ名前の人に出会ったの初めてなんだけど…」


 紡って名前自体が珍しいのは確かだ。それだけでも凄いことなのに、まさか閉店後の店に特別に通してあげた2人の1人が同じ名前とは…


 だが、名前は一緒でも2人ともタイプが異なるようだ。ぱっちりお目目で可愛い紡とクールな顔立ちなのにどこか幼顔な紡。


 言動や仕草、喋り方のトーンや身長も全く違う。本当に出会いとは偶然でかつ必然的なのかもしれない。


「…僕もびっくりしちゃった…凌空もびっくりしたでしょ?!」


「そりゃ、ビックリしないわけないだろ…!こんな偶然、あるもんなんだなっ…」


 みんな、この事態に驚きを隠せないようだったが、これはきっと何かの縁だ、歳は離れていても仲良く出来るはずだと、俺はそんな気がしてならなかったんだ。

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