カセットテープのような恋をして…〜楽しい料理教室〜
翔(カケル)
ようこそ!! Glück(グリュック)へ!!
「ごちそうさま〜♪また来るから〜!」
「いつもありがとうございます♪」
「…あっ!!いつもありがとうございま〜す!明日のランチは、鯖の味噌煮ですよ〜!」
俺と紡が始めた店、
毎日が忙しくて、その分、色んな人と出会えるこの空間に俺らは、意気揚々としながら楽しくお店を経営していたんだ。
昼営業も落ち着きを見せ、キッチンから紡はバーカウンターへひょこっと顔を出し、少し上目遣いで「…凌空?」っと俺に声をかけてくるが…そんな紡に俺はドキッとしてしまう…ばかっ、そんな目で見つめるなよ…!
何年経ったって、こいつのこういう悪気のない仕草に俺は至って弱いままで…
「今日もみんなに、たっくさん幸せを届けられたかな??」
「紡の料理で幸せにならないやつがいるのか?」
「そりゃ〜いるかもしれないでしょ〜??」
「そいつの気持ちが、俺には分からんがな?」
あははっ!と2人で交わす、どこか甘酸っぱいこの空間も俺らの幸せのひと時なんだ。
ちなみに店名の
紡の料理を通して色んな人に幸せを届けたい。そんな気持ちも込めて、カフェチックな名前にしようと2人で決めた名前だった。
とはいえ、なかなか聞き慣れない単語に常連さんや初めて足を運んでくれたお客さんも、みんな
子どもなんかは、真ん中の《ü》がニコちゃんマークに見えるのか《ニコちゃん♪》って呼んだりと…なかなか本当の意味を知っている人は少ない。
それでも、1人でも多くの人に紡の料理で幸せが届いているといいなと思いつつ…
父さんと母さんが、俺らの事を空から見守もりながら喜んでくれているといいな…とも思いながら、今日も楽しく経営していたんだ。
「落ち着いたし、1回暖簾下げていいな?」
「そうだね!凌空、お願いしてもいい??」
「任せておけ♪」と俺は、昼営業の終了を告げるために暖簾と看板を下げる作業に取り掛かった、その時…
「んもぉっ!だから言ったじゃーん!!!!」
「そ、そんな、急かすなよっ!!!」
「ちゃんと時間見てよね!!ばかっ!」
なんだが…騒がしい2人の男の子が店にワタワタと駆け寄ってきたんだ。
ばかっ!っと吐き散らした男の子が、俺の近くに寄ってきて「…まだ、間に合いますかっ…?」と上目遣いで可愛く、俺に話しかけてきたんだ。この子の上目遣いも可愛いには可愛い。でも大丈夫、上目遣いをされても、紡の方が数倍も数十倍も可愛い。
「ごめんな、ちょうど今、終わったところなんだ」
「うわぁぁんっ…せっかく何日も楽しみにして来たのにぃ…!!」
「…航平、ごめんな…」
この上目遣いで、ちょっぴり小悪魔っぽい子は
話を聞けば、ここへ来るのをずっと楽しみにしていてくて、隣の男の子と来る予定だったが…色々あって、ちょっとだけ時間が間に合わなかったんだとか…
楽しみにしていたのに、こんなに悲しい顔をされると、どことなく放っておけない…けれど、俺に決定権はない…
何せ、ここの料理長は紡だ…俺が勝手にいいよとも言えない。
「凌空〜?どうしたのっ?」
外の騒々しさに紡も気になったのか、外へ出てきてくれて、2人の事情を伝えてあげたんだ。
そんな思いに紡はニコッとしながら
「2人とも、お腹空いてるでしょ?せっかく来てくれたんだから中に入って♪」と2人を優しく受けいれ、中へと通してあげたんだ。
もちろん、昼営業は終わっているから、入口の掛札はOPENからCLOSEに切り替えて。
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