前世の記憶を持って生まれたけど、早く大人になりたい
Rapu
第1章 目覚め
第1話 僕の名前は
――この世界にダンジョンが出来て、数百年が過ぎた――
世界では、ダンジョンを攻略しようとする国や、ダンジョンで得られる資源を目当てに共存を考える国もあったが、人里離れたダンジョンで魔物が溢れ出し、今では魔物が溢れる世界になってしまった。
小さな村や町は廃墟となり、主要な都市は魔物の侵入を防ぐ為に高い
そして、魔物から取れる魔石をエネルギーとして利用する技術が開発され、電気の代わりに魔石が使われるようになった。
今では電化製品だった機具は勿論のこと、飛行機や列車・車までもが魔石とソーラーパネルで動いている。
食料は――肉は家畜とダンジョンで
この国も例外ではなく、ダンジョンから溢れた魔物によって小さな町は廃墟と化し、いくつかの都市は城郭都市となった。
今では、町の近くに農作物を作るエリアを確保しようとしている。
※ ※ ※
う~ん、気持ち良く
目を開けると、白っぽい天井が見えて、周りは木の柵に囲われている。
――何処だ?
起きようと柵に手を伸ばすと、届かない……? 手が変だ……プヨプヨした小さな手でまるで赤ちゃんのような……あぁ、そうか、君が生まれたんだね。フフ。
――待っていて、
だけど、この身体だと何も出来ないな。先ずは情報を集めないと、どの国で生まれたのか確認しないとね。
ん? 誰かが近付いて来る。
若い女性が、柵の上から僕に微笑んで抱き上げた。
母親か? 彼女は、肩までの黒髪で黒い目をしているから、西の国の人間だろうか?
「
……僕の名前はユウトか。彼女が微笑みかけるその横で、兄妹だろうか? 黒髪の男の子と女の子が目をキラキラさせて僕を見ている。
「ゆうと、大きくなったら遊んでやるからな。あっ! ゆうとが俺を見てる!」
「ゆうとの目は、まだ見えていないのよ~。もう少ししたら、見えるようになるんだって~」
「そうなのか? でも、俺を見ていると思うけどな」
「……アァ」
見えていると言いたかったが話せなかった。『強化魔法』を
そうだ、ステータスをチェックしておこうか。
――――――――――――――――
名前
年齢 0歳
HP 10/10
MP 10/10
攻撃力 5
防御力 6
速度 3
知力 150
幸運 99
スキル・鑑定S ・身体強化F(S) ・生活魔法 ・片手剣F(S) ・盾F(S)
・両手剣F(S) ・短剣F(S) ・火魔法F(S) ・風魔法F(S) ・土魔法F(S)
・水魔法F(S) ・光魔法F(S) ・闇魔法F(S)・雷魔法F(S) ・氷魔法F(S)
・無属性魔法F(S) ・時空間魔法F(S)
――――――――――――――――
何だ、このステータス……酷いな。
生まれたての人間はこんなにもステータス値が低いのか? 前世で覚えたスキルは全てあるけど、『鑑定』以外のスキルが『F』に落ちている。その横の(S)ってどういう意味だ……?
(S)の部分に触れると、『鑑定』が発動して説明が出た。
【現在、ステータス値が低い為『F』の状態。必要なステータスが育つと、スキルは自動的に『S』までランクが上がる。使用するほど上がりやすい】
なるほど。ステータス値が低いから『F』なのか。このMPでは、ほとんどの魔法が使えないだろうな。それに、この小さな体では何をするにも負担が掛かりそうだ。
あれ……さっき目が覚めたばかりなのに、もうウトウトしてきた……ファ~。
「先生、ゆうとがあくびをしているよ? もう眠いのかな」
「ふふ、赤ちゃんは寝るのが仕事だからね」
……先生? この女性は母親じゃないのか。
あぁ、意識が……沈んで行く……。
◇◇◇
はぁ~、目が覚めた……。
周りの様子を注意深く見る……起きていられる時間が短いからね。他にも数台のベッドがあって、この前とは別の女性が隣のベッドで赤ちゃんにミルクを飲ませていた。
ミルクはいいけど、下の世話をされる時は居たたまれなくなるので、自分に『闇魔法』の『スリープ』を掛けてやり過ごすんだ。
ここは孤児院らしく、先生と呼ばれる女性が2人いて、この部屋には僕以外にも赤ちゃんがいる。
後は、
どうやら僕は孤児のようだけど、下手に貴族や王族に産まれなくて良かったと思う。しがらみも無く自由に動けるからね。
早く動けるようになりたいから、先ずはHPとMPが増えるように鍛えようか。
周りを驚かせるのは
『身体強化F』と言っても、MPが10だと体を少し強化するくらいしか出来ないんだろう。HPも10しかないから、直ぐに疲れて眠くなるんだろうな……ファ~、起きたら続きをしようか……。
その後も、目が覚めると『風魔法』でそよ風を吹かせたり、夜だと『光魔法』や『火魔法』で小さな灯りを付けたりした。
直ぐに魔力が切れて眠くなるけど、赤ちゃんだからいつ寝ようが問題ないのが良い……フア~。
◇◇◇
やっと5歳になった……長かった。
部屋が余っているのか、赤ちゃんがいる大部屋から一人部屋に移されたのには驚いた。ただし、この部屋にはドアがなくて、誰でも部屋に入れる。
寂しかったら大部屋に移るらしいけど、行きたくない。魔法のランク上げが出来ないからね。
後、凄く残念なことがあった――食事だ。
肉はあるんだが、野菜が不足しているようで、サプリメントと呼ばれる錠剤で栄養を補っている。
毎日の食事は肉とスープで、朝だけサプリメントを飲む。大人になったら、1日2回飲むらしい。
子供が食べる肉だからか、薄切り肉と細かいミンチと呼ばれる肉が出て来る。味は、まあまあかな。
パンやご飯は出て来たことがない。野菜は……玉ねぎとニンジンが、時々スープに浮いている。ジャガイモもあったかな。
今、この街の近くに農作物を作るエリアを少しずつ増やしているらしく、先生達は野菜が食べられる回数が増えたと喜んでいる。
――あぁ、『彼女』の手料理が食べたいな。
「先生、僕の親のことを教えて欲しい」
「そっか~。悠斗くんは、お母さんとお父さんのことを知りたいのね……」
僕の母親は、産後の肥立ちが悪くて僕を産んだ後、間もなく亡くなったそうだ。父親は誰か分からず、僕は生まれて直ぐに孤児院に預けられたと教えてくれた。
ここにいる子どもは、みんな似たり寄ったりらしい。
「先生、教えてくれてありがとう。他にも聞きたいことがあるんだ」
「悠斗くんは、まだ5歳なのにちゃんと話せて、偉いわね~。ふふ」
ああ、魔力を上げるために『身体強化』の魔法をいつも全身に掛けている状態だから普通に話せる。今ではステータス値もだいぶ上がったよ。
「先生、この国と街の名前を教えて欲しい」
「ふふ、悠斗くん、ここは日本と言う国で神戸という町よ」
「えっ……『日本』?」
ここは……僕が住んでいた世界ではなく、『彼女』が生まれた世界なのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます