あなたが好きです

有栖川龍輝

私が好きなのは彼なの

私はなんのために生きているんだろう。彼は薄汚れたアパートの一室のくしゃくしゃによれた布団に寝転びながらそう思った。最近私のそんなことばかりは私の脳内によぎる。さっき彼女にフラれた。私は彼女の絵馬とふたりで幸せに生きていくはずだった。しかし、彼女は「あなたは私を愛してくれない、ほかに好きな人が出来た」と私をふった。私は彼女を問い詰めて、相手の男のことを聞き出そうとしたが彼女は何も教えてくれなかった。


仕事から帰ってきて小一時間天井を見つめていた彼だったが、のそっと起き上がると、型番が古めのパソコンの電源を入れる。

「あれ?充電ないじゃん」彼がそう独り言をぼやいた。


そしてJINTALKというサイトを開く。

2022/4/25 23:52『杏奈ああああ、今日も疲れたよおおお』

2022/4/25 23:52『おつかれー笑、いつもお疲れだね』

2022/4/25 23:52『ありがと、ねえねえ聞いてよ、今日さあ…』


彼は数ヵ月前からこのサイトにはまっていた。このサイトは、お喋りを目的としており、使用者は好きな部屋に入ってお喋りすることができる。


彼はほぼ毎日このサイトを利用していた。所謂ネット友だち、ネッ友というやつだ。彼らが知り合うところは約2ヶ月前に遡る。

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