見つける前に摘み取った恋へ
赤猫
第1話
遅咲きの恋と言う言葉があるがどうも私の恋は咲くどころか摘まれた後だった。
私がそれを恋と自覚するのが遅すぎた。
そんな単純なこと。
「いやぁ私、先輩のこと好きだったみたい」
「好きだったみたいって…何?フラれた?」
卒業式を終えて尊敬していた先輩を送りだした帰り道つい言うつもりがなかった言葉を音にした。
本当に言うつもりはなかった。つい信頼している幼馴染である彼に言ってしまった。
口が軽いな私も気を付けないとうっかりして秘密にしといてねって友人が言っていたゲームの課金額を言ったりして、人間関係の破綻に繋がるかも。
口は禍の元とか言うくらいだし。
「告白はしてないよ…でも先輩見送ってから他校の彼女さんらしき人門の前で待っててさ、先輩を取られたくないって思ったときにはもう、遅かったってだけ」
「ふぅん」
興味がないのか彼は適当に相槌を打っている。
一応失恋か分からないけどフラれた身なんですけど??
「もっと真剣に聞けよ!」
「やだよめんどい」
「泣くぞ今!ここで!」
私がそう言うとすごく面倒臭そうな顔をしてくる。
「…分かったよ。相談料でアイス」
「ガリガリ君で良い?」
「ハーゲンダッツ」
「ぶっ飛ばすよ」
高いアイスをご所望してくるなんてこいつは鬼か。
最近一人焼肉して豪遊したから私の懐は極寒レベルで寒い。
そんなこと言ってもなんだかんだで聞いてくれる彼は本当に優しいと思う。
私は本当に恵まれてるなぁって毎度のことだが思っている。
「でね、その彼女さんらしき人と先輩が手をつないだ瞬間私の初恋という名の試合の終了を知らせるゴングが鳴ったわけよ」
「ほぉほぉ」
「本当に気づくの遅かったなぁ…」
もう少し早く気づいていたらアピールとかやってたのに、もう少しテニスする以外のことやっておけよ私。
…そうは言っても彼女がいたのは変わりないからフラれるのほとんど確定みたいなところあるけどね。
「遅かったなって他校に彼女さんいるからフラれるのほぼ確定じゃん」
「夢の無い事を言うなよ少年」
私もそうは思うがそんなストレートに言わなくても。
「夢はいつか覚めるんだよ」
「そりゃそうだけどね…あ、コンビニ寄ろ」
「りょーかい。ハーゲンダッツ楽しみだなー」
くだらない会話を挟みながら、失恋の話してるの私くらいだろうな…。
マジで私こいつにハーゲンダッツ奢らないといけないのか…?
「先輩のどういうところ好きだった?」
「そうだな…まず優しい」
「うわ王道」
「うるさいよ事実だから仕方ないでしょ」
「で、他には?」
先輩のどこが好きか考えると悩んでしまう。
「多すぎて悩む…あ、でもあるな一番好きだなって思った理由」
「なになに?」
「頭なでてくれてその時の笑顔が好きだった」
「そっか」
彼は相槌をしてから何も言わなくなった。
気が付くとコンビニに入っていた。
「あれそれパピコじゃんどうしたの?視力落ちた?」
ハーゲンダッツを買うと言っていた奴の手にはパピコがある。
「そんなわけあるか、俺の視力は毎年両目とも2.0だ」
「おお、すごい。何でパピコ持ってるの?」
「高いアイスを女に奢らせる男はいないだろ」
「いるじゃん、お前」
私がそう言って指を指すと軽くげんこつを食らった。
「女子に暴力してやんのー」
「はぁ?こんなん暴力に入るかよ」
「入るよーだ!…それ買うんでしょ?寄越せ奢る約束してたから買ってくる」
私は彼の手にあるそれをもらってレジに行こうとしているが渡してくれない。
無理やり取ろうとするなら5㎝という身長の壁を実感させられる。
「わ・た・せ!」
ジャンプして奪おうとするが取れない。
「俺が払うから待ってろって」
「馬鹿野郎、私が奢るってつってんだろ。寄越せよ巨人!」
私たち以外にもお客さんがいるのに私たちはぎゃあぎゃあと騒いで馬鹿だなと少し思ったが、私はそれでもいいのかな?って思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます