第6章 離婚届
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当たり前だけど、それからヒトミと顔を合わせることは無くなった。俺も気ぃ遣って遅くまで残業して深夜に帰るようにしたし、ヒトミはちゃんと自分でごはんを作って食べてるようだった。何となく勘づいたのか、シゲチーが俺たちの関係を心配してくれた。でも俺はシゲチーに相談するのは違うと思って、何も言わんかった。これは家族の問題だ。だから相談できる相手は、世界にたった一人しかいねえ。
GLAYのライブがある筈だった日、つまり受験の前日、俺が休日出勤を終えて深夜に帰宅すると、居間の机の上に便箋が置かれてた。いかにも中学生が使いそうな可愛らしい便箋で、ハローキティがハートを抱いたシールで封がされてた。人生で一度だけ貰ったことのあるラブレターによく似てた。ヒトミからの手紙らしい。封を切ってそっと中身を取り出すと、三つ折りの紙が二枚出てきた。片方は緑色の紙で、どうやら離婚届ってやつらしい。署名欄にはすでにイズミの名前が書いてあってびっくりした。もう十五年も会ってないにも関わらず、それはイズミの筆跡で間違いねえと思った。もう一枚はピンク色の紙で、ヒトミの丸っこく小さな文字がぎっしり書き込まれた手紙だった。俺は椅子に腰かけて、ゆっくりとそれを読むことにした。
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