第8話
翌日の休み時間
俺の席辺りには人だかりができていた。
原因は隣の席の七瀬さんだ。
昨日この学校に転校してきた七瀬さんを一目見ようと今日も多くの生徒がこの教室に来ている。
その為俺は席に座ることが出来ずに教室の隅で、その光景を眺めていた。
「握手してください!」
「いいよ!」
「いつも応援してます!」
「いつも応援ありがとう!これからも応援してね!」
「七瀬さん!サインください!!」
「いいよ!ここで良いかな?」
七瀬さんは一人一人丁寧に対応していく。
きっとこれも彼女の人気の秘訣なのだろう。
(それにしても席替えの時、この席に決まった時は最高に良い席だと思ったのに、こんなに座れないほど人だかりができていたら全然良い席じゃないじゃん。でも、別に七瀬さんが悪いわけでもないししょうがないか……)
そんなことを考えていると予鈴のチャイムが鳴る。
「みんな、ごめんね〜予鈴なっちゃったから授業の準備しないと……」
「いえいえ。私達も授業があるのでこれで戻ります。」
「うん。ありがとね。」
そう七瀬さんが言うと集まっていた生徒達は次々と自分の教室に帰って行った。
俺はそれを確認し、自分の席に戻る。
「ごめんねぇ〜天沢君。」
「何がだ?」
「いやぁ〜人だかりで席座れなかったでしょ?」
「別に七瀬さんが悪いわけじゃないし……しょうがないよ。」
「そう言ってもらえると助かるよ〜多分次の休み時間もこんな感じになっちゃうと思うから天沢君には迷惑かけるちゃうと思うけどよろしくね。」
「ああ。わかった。」
「そんなことより毎回あんなに一人一人丁寧に対応していて疲れないのか?」
俺は先ほどの光景を見ていて気になったことを聞いてみた。
「わざわざ来てくれたみんなには悪いけど、結構疲れるよ〜」
「じゃあなんでしてるの?」
「正直すごく大変だし、受け答えするのを止めようと思った時もあったよ。多分、この学校の人達全員に嫌われても私の人気が著しく落ちるかって言われたらそんな事ないと思うし……でも、私は私を応援してくれる人を大切にしたいんだ。大きなことを成し遂げるにはまず目の前の小さな一歩一歩の積み重ねが大切だと思うから、まずは目の前で私を応援してくれている人達にもっと私を好きになってもらえるように私は頑張り続けるって決めたから………」
「その心がけは良いことだね。」
「でしょ〜どう?天沢君も私とバンド組めばみんなから好かれる人になれるよ〜」
「遠慮しておくよ。大変みたいだし。」
「くっ……余計なことを言わなければ良かった………」
断りはしたが七瀬さんのファンに対する接し方は言葉で言うのは簡単だが、実際のところなかなかできるものではないので素直にすごいと思った。
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