第12石 ダイヤモンド
第56話 女神様の妹
目を開けた。また星空が見える宇宙にいた。イロハ様の空間に来たみたい。でも違和感があった。宇宙の一点に釘付けとなった。
「あの星は地球よね。イロハ様の空間とは異なる場所?」
心の中に熱いものがこみ上げてきた。忘れるはずのない姿だった。
目の前に少女が現れた。鏡を見ているみたい。
「私が呼んだのよ。あのままだと彩香の精神が危なかった」
考えるまでもなかった。本物のアイ様だった。
「懐かしい名前ね。本物のアイ様に会えて嬉しい」
「私も直接話ができてよかった。私の手違いで彩香を消滅させてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいよ。イロハお姉様の世界には慣れた?」
「最初は戸惑ったけれど楽しんでいる。未練がないと言えば嘘だけれど、今の生活に満足している。宝石魔図鑑も嬉しかった。だからアイ様は気にしなくて平気よ」
普通の人間では無理な体験をしている。魔法も使える。宝石魔図鑑で宝石が眺められるのも嬉しかった。イロハ様やプレシャスに出会えてマユメメイもいる。今の生活に後悔していない。
「喜んでくれて嬉しい。宝石魔図鑑も気に入ったようね。ただ宝石魔図鑑の一部に問題があったのよ。それが原因で彩香が危険になった。でも修正したからもう大丈夫」
「七色オパールの魔法?」
「今作ってある魔法では七色オパールのみね。ペンダントの宝石と共鳴したみたい。問題部分を直したから、どの宝石で魔法を作っても平気よ。念のために、精神が守れる加護をペンダントに与えた」
「ペンダントも大事にするね。七色オパールの効果や威力も変わったの?」
危険がなくても修正内容を把握したかった。
「心を清らかにして邪気を払う。イロハお姉様の世界なら呪い解除や異物除去よ」
「呪い解除は何となく分かるけれど、異物除去の効果がよく分からない」
「本来存在しない物質の除去よ。正常な人間や動物には効果がないから、間違って唱えても大丈夫」
「上位魔物を消滅させた効果はまだ残っている?」
「一日中連続で唱えていれば、下位魔物を消滅させられる威力よ」
魔物は自然界の突然変異だけれど、異物の認識は薄いみたい。宇宙から飛来した隕石などが異物になるかもしれない。
「魔物消滅は無理みたい。でも呪い除去は貴重ね。効果不明な魔法がもう一つあった。結晶エメラルドは精神と肉体の完治にしたのよ。でも変化が分からなかった」
「イロハお姉様の世界では、精神は魔力回復にあたるみたい。肉体は損傷回復ね。回復の程度は彩香の目で確かめて」
「確認してみる。魔力回復は貴重な魔法ね。イロハお姉様の世界では魔力管理が重要みたい。私が使う宝石魔法は連続で魔法が唱えられる。理由を教えてほしい」
「宝石魔法とは素敵な名前ね。宝石魔法は彩香の体力と気力を僅かに消耗させる。でも日常生活で無意識に消耗する量と同じよ。自然回復する量が上回るから、ほとんど無限に魔法が使えるはず」
心置きなく宝石魔法が使える。ただあまりにも連続で唱えたりしたら、常識外れに思われる。緊急時以外は、複数魔法の同時利用や連続魔法は控えたほうがよさそう。
「アイ様にもらった宝石魔図鑑は、私に合っているみたい」
「喜んでくれて嬉しい。彩香の精神をイロハお姉様の世界へ戻す準備が整ったみたい。彩香には迷惑をかけたから、願いがあれば聞くよ」
女神様にお願い事ができる。すでに宝石魔図鑑はもらっている。イロハ様の世界にない品物だと混乱を招きそう。私のみに影響する内容がよいかもしれない。
イロハ様とアイ様の世界がある。イロハ様はアイ様を溺愛している。無理かも知れないけれど、お願いしたい内容が決まった。
「宝石魔図鑑で転送魔法を作ったのよ。転送先に設置する魔方陣を、アイ様がいるこの空間に作りたい」
「構わないけれど、地上からは来られないよ」
あっさりと認められた。行き来は無理みたい。それでも魔方陣を作りたい。アイ様の世界は私のふるさとだった。何かを残しておきたかった。
「記念でも平気よ。許可してくれて嬉しい。さっそく作成する。鮮赤コーラル」
宝石魔図鑑が出現してルースが飛び出した。赤い粉が足元に積もった。問題なく魔法が使えた。
「血赤珊瑚の粉みたいね。この粉で魔方陣を作るつもり?」
「魔方陣の材料よ。次は魔方陣を作成するね。印スギライト」
地球の姿が模様となった。無事に魔方陣が完成した。
「まるで地球みたい。彩香の魔法をもっと見たいけれど時間ね」
アイ様には二度と会えないかもしれない。別れる前に聞いておきたいことがあった。
「イロハお姉様をどのように思っているか知りたい。イロハお姉様はアイ様が反抗期と思って悲しんでいたよ」
「イロハお姉様は愛しい人よ。でも最近は他の女神様から慕われて、私と話す機会が減った。イロハお姉様を嫌いになるわけないよ」
反抗期ではなくて、アイ様はすねているみたい。原因が分かってよかった。すねているのならイロハ様が何とかしてくれそう。
「アイ様からイロハお姉様に声をかければ、イロハお姉様は喜ぶよ。私もアイ様の気持ちをイロハお姉様に伝えておくね」
「彩香は私とイロハお姉様を繋ぐ絆かもしれない。もう時間みたい。イロハお姉様の世界を満喫してね」
「楽しんでくる。アイ様も元気でね」
アイ様が近くに寄ってきた。抱きしめられた。イロハ様とは異なる温かさがあった。懐かしい感じでもあった。
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