第40話 大聖女の出発
二刻の鐘よりずっと前に神殿へ到着した。
神殿に入ると神官に声をかけられた。マユメメイから話は伝わっていたようで、中庭へ案内された。
二十名以上の騎士や魔道士が待機していた。装備に統一感がある。一目で高級で高品質と分かる衣装だった。見た目重視ではなくて戦い重視だと私にも分かった。
集まっている騎士や魔道士は、マユメメイの護衛だと教えてもらった。
「間もなく大聖女様が来ます。この場所でお待ちください」
「イロハ様の石像前で待っているね」
石像の前に着くとイロハ様にお祈りした。心が軽くなって温かい気持ちになった。お祈りが終わった。立ち上がってプレシャスに顔を向けた。
「マユメメイが来る前に準備を始める」
「七色オパールだけは、使わないようにお願いします」
「同じ過ちは起こさない。追加魔法は一つよ。花びらスピネル」
オフの状態で呼び出した。宝石魔図鑑とスピネルのルースのみが浮いていた。衣装とハープはマユメメイが来てから出現させるつもり。
周囲の空気が変わった。人垣が左右に分かれた。奥からマユメメイが歩いてきた。普段と異なる服装だった。動きやすさに重点を置いていた。
マユメメイの周りには数名いた。タイタリッカさんとキキミシャさんもいた。マユメメイを含めて笑顔はなかった。
「もうすぐ出発するの。その前にアイの踊りで心を温かくしたい。踊ってくれる?」
「そのつもりよ。新しい魔法も使うから楽しみにしてね」
「一緒に行く部隊も踊りを見たいそうだ。構わないか」
タイタリッカさんが聞いてきた。
「それで人が多いのね。一緒に見ても大丈夫よ。イロハ様の前で踊れば、きっとイロハ様が祝福してくれると思う」
私の踊りには神聖魔法のような効果はない。それでもみんなには無事に戻ってきてほしかった。
マユメメイを先頭に隊列が作られた。
「アイの踊りを見せて」
目をつぶって集中した。心の中でイロハ様に感謝を述べた。目を開けてマユメメイに視線を向けた。マユメメイが緊張している。とびきりの笑顔を見せた。
「音色トルマリン。煌めきトルマリン」
ハープが出現して衣装も変わった。
「~花びら踊る街で~。オン」
音楽に合わせて体を動かした。私の周囲で花や花びらが舞い始めた。音符も踊るように浮かんでいる。みんなの無事を祈りながら踊った。
踊りで体に熱を帯びてきた。同時に心も温かくなってきた。イロハ様に抱きしめられた気分だった。イロハ様の温かさを感じなら踊り続けた。
音楽が終わると同時に踊り終えた。
みんなから拍手をもらった。マユメメイに視線を向けると、何処か遠くを見ている感じだった。私の視線に気づいたみたい。こちらに歩いてきた。
「素晴らしい音楽と踊りだったの。祝福部屋でイロハ様に会った気分なの」
「マユメメイが喜んでくれて嬉しい。踊った甲斐があった」
「大聖女様、そろそろ出発時刻です」
タイタリッカさんが呼びに来た。マユメメイが私の手を握った。しっとりしていて緊張しているのが分かった。自然とマユメメイを抱きしめた。
「無事に戻ってきてね」
「帰ってきたら、また踊りを見せてほしいの」
マユメメイが戻った。部隊の指揮官はタイタリッカさんみたい。指示を出していた。全員の動きに無駄がなかった。熟練した部隊だと分かった。
マユメメイたちが神殿をあとにした。無事に戻って来てほしいと祈った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます