第17話 お金の価値
ハンターギルドの扉を開けた。まだ緊張していた。でもピミテテさんの顔が見えると安心できた。ピミテテさんが気づいて手を振ってくれた。
「アイさんはハンターギルドに慣れましたか」
「魔法も覚えてきたから依頼を受けたい。でも今日はお金の価値を教えてほしい。自素石が六種類あるのをプレシャスから聞いたのよ。どの程度の価値があるの?」
「お金を使ったことがないのですか。どのように暮らしているの?」
「森で食材を取って自給自足している。プレシャスがいるから楽しいよ」
「アイさんには常識を教える必要があります。お金の基準は銀貨一枚です。飲み物つきで夜の食事が取れる価値です。自素石の色つき小粒も同じ値段よ」
トリプルボアー三匹で、一日分の食事は心配なさそう。
「他にお金の種類は何があるの?」
「全部で六種類です。十枚で一つ上のお金と同じ価値になります。価値の低いほうから小銅貨、銅貨、小銀貨、銀貨、金貨、白金貨よ」
十枚で硬貨が変わるのは覚えやすかった。
「白金貨はどの自素石と同じ価値なの? どの程度の暮らしができるの?」
「色つき中粒と同じ価値です。ダンジョンにいる中位魔物の中でも、強い魔物からしか出ない貴重な自素石よ。普通に暮らすだけなら何日も暮らせる価値です。ハンターは装備にお金を使うから、すぐになくなります」
「私もいつかはダンジョンに行きたい。遠くのダンジョンでも依頼を受けられる?」
「街同士でハンターギルドは協力しています。他の街でも依頼を受けられます」
旅に出たら他の街でもお金を稼げそう。それにはプレシャスと一緒に依頼を受けられる力が必要ね。近いうちに依頼を受けて慣れたい。
「旅に出たときの楽しみができた。今日はもう一つ用事があるのよ。回復魔法を覚えたから効果や威力を試したい。かすり傷とか少し体調が悪い人はいない?」
「神聖魔法を覚えたの?」
ピミテテさんが驚いていた。
「宝石魔法よ。私の国では当たり前よ」
「アイが来ていたのか。もう少し早ければ、魔物退治を誘ったのに残念だ」
ライマインさんが近くに来た。袋をピミテテさんに渡していた。きっと自素石ね。後ろにはリリスールさんがいた。リリスールさんとは街中で会ったみたい。
「報酬は確認したら渡します。ライマインさんには余裕でしたか」
「かすり傷を負ったが、ポーションを使うほどではなかった。ほっとけば治る程度だ」
探していた人が来てくれた。あとは引き受けてくれるかどうかね。
「ライマインさん、お願いがあるのよ」
「魔物退治の依頼を一緒に行ってほしいのか。俺は構わないぞ」
「それもあるけれど怪我を治させてほしい。回復魔法を覚えたけれど効果や威力が不明なのよ。実際に試してみたい」
「今度は回復魔法か。驚きを隠せない。攻撃魔法もそのまま使えるわけだろ」
「色々な種類が覚えられるよ。防御魔法も覚えた」
「異国の魔法は凄いな。回復の実験台か。俺なら構わない」
ライマインさんが引き受けてくれて助かった。かすり傷だから、回復ができなくても命に影響しない。安心して試せる。
「試させてくれて嬉しい。かすり傷の場所を見せて」
左腕を出してくれた。ひっかき傷みたい。血で滲んでいるけれど固まっていた。
「魔法を唱えるね。真緑エメラルド」
左腕に手をかざした。ルースが出現して緑色の粒子が腕を包んだ。光が収まると、かすり傷がなくなっていた。
「問題なく回復している。俺よりもリリスールが専門だ。どのように感じた?」
「かすり傷なら見習い神官でも治せるけれど、回復早さは神官と同じくらいだよ。今は試しようがないけれど、あたいと同じ程度の回復ができそうさ」
「神官だったリリスールと同じ実力なら即戦力だ。ギルドマスターが喜びそうだ」
想定範囲内の回復効果や威力だった。結晶エメラルドは見た目で誤解を受けそう。魔法効果は疲労回復だから、試さなくても平気ね。
「無事にかすり傷が治ってよかった。回復魔法には慣れておく。せっかくだから神聖魔法をみてみたい。リリスールさん、魔法を唱えるところを見せてもらえる?」
「基本の魔法を唱えるよ。ヒール」
手を当てていた腕部分に白色の淡い明かりが包んだ。宝石魔法が粒子の光だった。神聖魔法は回復部分に明かりが灯った感じだった。
リリスールさんは私よりも一回り年上みたい。回復魔法で癒やしてもらうと子供時代の怪我を思い出した。母親がしてくれた、やさしい怪我の手当に思えた。
「効果発動の雰囲気は異なるのね。もっと神聖魔法を知りたい」
「常識を知るのはよい心掛けさ。神殿に行ったらどうだい。あたいの名前を出せば、詳しく教えてくれるはずさ。紹介状も書くよ」
「神殿で詳しく聞いてみたい」
リリスールさんに神殿の場所を聞いた。紹介状も書いてもらった。
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