そのあと

春嵐

第1話

彼がしんでから、数日が経った。

帰ってくると思って、待ってたけど。彼は帰ってこなかった。

ちいさな、葉書はがき。これだけ。彼の生きていた事実と、しんだという結果を結ぶのは。この葉書1枚。

特に、何をする気も起きなかった。

いつもは、この、ベッドの隣の下のところに彼が座ってて。わたしが立ち上がるときに、とりあえず蹴っとばしてた。勢いよく立ち上がっても、彼がいないので、ただ立っただけ。ぶつかる彼の感触がない。

彼のよくプレイしてたゲーム。陣取りとか、数値がどうとか、そういうやつ。わたしは敵を撃って倒すやつしかやらないから、彼のプレイを見てるだけ。途中経過で勝ってるか負けてるか理解できないから、いつも彼の顔を見てた。彼が笑ってるときは劣勢で、彼が眉ひそめて警戒してるときは優勢。

そういうひとだった。

負けてると楽しみだして、勝ってるときは周りに気を配ってて。

そんなひとが、しぬ、だろうか。

いや、もう、しんだのだから、事実として。

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