第二部 第3話 mythology(神話)
AMS-711「イザナギ」アキラ・リオカ中佐の専用機だ。外観上は
イザナギの武装は2丁のハンドマシンガンのみだが、この銃底からは三日月のような実体剣が突き出ている。その位置は、グリップの手前にあり、あたかも銃を持つ手をカバーするかのようだ。完全に接近戦、それも超が付くほどインファイトでの戦闘が想定されたこのイザナギは、ダークブルーを基調とし、肩や肘、膝、ゴーグルやハンドガンなどを黒でポイントされている。
AMS-712「コノハナサクヤ」アイ・タマズサ中尉専用機だ。外観は「ラゲル・カスタム」だ。
指揮官機であることが前提で設計されているため、外見上に大きな影響を及ぼすことなく、各種センサー類、カメラ類の増設、強化が随所に施され、カラーリングはイザナミよりも一段濃いダークブルーが基調となっている。
AMS-713「シズカゴゼン」はリッカ・イズミ少尉の搭乗機だ。コノハナサクヤ以上に「ラゲル・カスタム」そのままな外観を持っている。カラーリングに関しては、イザナギよりも一段明るい青が採択されている。
この機体、他の
AMS-714「ジライヤ」がタクヒ・メイゲツイン少尉の乗機となる。この機体はブルーとダークブルーが配色されているが、通常の配色とは濃淡が逆である。外見上は「ラゲル・カスタム」だが、両腕が一回り大型化されている。これは専用武装である「黒王」を扱うことを前提とした処置だった。
「黒王」は超大型のナタ包丁のような兵装だ。その面積はMAを完全に隠してしまうほど大きく、峰の厚みは通常のMAの腕ほどもあるうえに、峯側先端辺りには、可動式のスラスターが装備され、これの取り回しを補助する。根本では本体からケーブルが前腕部に接続され、エネルギー供給が成される仕組みになっている。
AMS-715「カンゼオン」。この機体は他と異なる。その外観に採用されているのは、水陸両用MA「バラック」だがその目的は水陸両用ではない。バラックの頭部は円盤状の大きなものが横になっている(どら焼きを想像するとちょうどいい)が、この頭頂部が、まるで貝殻のように開く。通常は頭頂部から斜め後方に伸びているアンテナが基部で回転することで、内側中心から伸びているような形状になる。その様子はまるで、大型のパラボラアンテナを連想させる。その最大の特徴は電子戦闘特化機体である。そのジャミング能力は、設定如何でMAを停止させてしまうほどに強力な機体である。
通常の「バラック」は茶色を基調としているが、カンゼオンの機体色はやや明るめの青である。ただしこの機体、他の
このカンゼオンを操るパイロットはウル・ハガクレ伍長だ。ちなみにこのカンゼオン、腕はあるが手が無い。代わりに、左に大型のクローが、右には前腕に対艦用大型砲が伸縮式で収納されている。他にも、腰部後方から尻尾のようなロッドが伸びており、その先にはトゲのついた鉄球が、頭部パラボラの外側には三角形の砲門を持つビーム砲が存在しており、もしも四つん這いになれば、猫のように見えなくもない。
「尻尾生えとりゃ~すっ!」
「コレ、絶対ウケ狙いだよな?実際に使えるのか・・・?」
「いやいや、アンタのエモノだって大概でしょうよ・・・それこそ使えるの?」
「黒王もちょっと羨ましいな~。けど、カッコよさなら断然、俺様のイザナギだろ?正にオレ!ザ・オレ!」
「すいません隊長、おっしゃっている意味が解りません」
みなそれぞれに自分の機体、仲間の機体に思うところがあるようだ。唯一見た目で大きな特徴の無いアイが、若干不満そうな様子にも見える。
各機体には左胸部に共通したマークがあった。五芒星だ。黒地に青で描かれたそれは白で縁取られている。よく見ると共通ではない箇所がある。イザナギは上部、シズカゴゼンは左上、ジライヤが右上、カンゼオンが右下で、コノハナサクヤは左下のそれぞれ先端、三角の部分が白くなっている。恐らく、部隊内のポジションを表しているのだろう。
一見するとタクヒの言うように、ウケ狙いなのかと疑ってしまいそうになるが、冷静に考えればこの5機、それぞれの特性を活かせば確かな強さを発揮することにアイは気付いた。ジライヤの絶対防御と単体最大破壊力、シズカゴゼンの対多数牽制力と多様性、イザナギの突破力と先行機動力、カンゼオンによる情報収集能力と妨害力。そしてそれらを指揮する機体としてコノハナサクヤがある。パイロットの難点よりも、これら機体による部隊編成の魅力が上回ったと感じたアイは、実機を見るまでは保留としていた指揮役を引き受ける決断を下した。
「准将・・・
アイは隣に立つコールマンに視線を向けることも無く、立ち並ぶ5機のMAをうっとりとしたような表情で眺めながら、まるで独り言であるかのように口にした。その直後、自分の緩みに気付いたかのように気を引き締め、コールマンの方へ体ごと向き直る。
「この部隊の指揮役、お引き受けします」
「本当かね?それは助かるよ。ありがとう」
一見すると嬉しそうな表情に見えるが、実際にはアイが引き受けるであろうことを予測していたコールマンは、アイの心情変化を見逃すまいと意識を向ける。
「いえ、まだ不安は多分にありますが・・・」
「不安かね?」
「MAは最高ですよ、MAはね・・・。不安はパイロットの方ですよ」
おそらく、パイロット個々人の技量としては、コールマンにとって申し分ないのだろう。しかし、彼らの個人ファイルを見たときに感じた部隊としてまとめることの大変さを思い出したコールマンは、アイが同様の不安を持っていることに苦笑する。
「ああ、それは・・・ね。うん、手伝うからさ、頑張ろうよ、うん」
アイの口からは若干の笑いと同時にため息がこぼれ出た。
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