第215話・No flames

 流石に、そろそろ否定的な意見も出てくる。だって、BGTは僕のファンでない人の目にも強制的に飛び込んでくる。そもそも、日本人アーティストに厳しい人も見る。欧米に強い憧れを持つがあまりに、日本人に対して否定的になる。そういう人は居ないわけではない。僕も、多少そういうところがあるかもしれないし……。


 だからといって、Utubeのコメントまでも否定的なわけではない。むしろ、そっちは肯定的な意見が溢れている。低評価ボタンだって、ほとんど押されていない。

 きっと、ごく一部なのだ。否定的な意見を持った時に、それをわざわざ行動に移す人は。いわゆる、ノイジーマイノリティである。

 夜は進み、放送開始の時間になった。


「おちびちゃんおかえり! 手は洗った? うがいした?」


 挨拶はいつもどおりに、それに今日は僕たちの側から伝えるべきことも、特にこれといったものはない。本当に雑な雑談の日である。


「やっほーKC! お疲れ様! 今日も放送楽しんでいってね!」


 そう思ったのは、束の間の出来事だった。


銀:リン君! ママ! やっほー!

デデデ:今、リン君のアンチスレでやばいのが暴れてる……ちな、多分リン君のファン側の人……。


 僕は、デデデさんのそのコメントを見て、急いでアンチスレを開いてみた。

 すると、彼の言うとおり、本当に一人暴れていた。僕への批判をする人の、IP強制開示スレへの書き込みを淡々とアンカー付きで返信しているのだ。それは、ただただ不気味だった。だが、これといって何かを言うわけではない。だから、単純に不気味なのだ。


 そして、批判の言葉は弱い物へと変わり、そして最後には彼らにこう言わせしめていた。『秋葉家は燃やせない……』と……。

 そんなことができるのは孔明お兄ちゃんクラスの頭脳の持ち主だ。ヘタをしたら、本人かも知れない。


 何かあると、脳裏に浮かぶのは孔明お兄ちゃんだ。だから、本当に彼は恐ろしいのである。


「アハハ……なにこれこわい……」


 比喩抜きで、本当に怖い。僕がこんなことをされたらと思うと、鳥肌が立つ。


「ダレガヤッテルノカナー」


 これ、絶対孔明お兄ちゃんだ……。そう思わずにはいられない、満さんの発言だった。


「ママ、棒読みになってるよ!」

「ソンナコトナイヨ!」


 ともあれ、アンチスレはそう時間が経たないうちに倉庫行きになってしまうのだろう。


Mike:This is NINJA!?

Alen:に、近いかもなw

里奈@ギャル:やっば、こっわ……

さーや:友達がリンちゃんに噛み付こうとしたときは、絶対に忠告しよ……

ダン・ガン:つか、これ絶対ママは誰がやったかわかってるじゃんw

お塩:リンちゃんLOVE勢には関係のないことさ……

わー!ぐわー!?:てかさ、否定的な意見もある程度許容されてるっぽくね?

ベト弁:確かに、これ、初めて見たしな……


 そう、こんな場面を見たのは初めてである。


「多分、住所特定とかやろうとすると、出てくるんだよ……」


 そう言えば、一瞬そんな流れになっていた。満さんが言うということは、その条件が正しいのだろう……。


「怖いね……秋葉家……」


 もう本当に……。


銀:リン君も秋葉家やろがい!!

Elsa:それよりさ、私はscreamの感想を本国民と共有したいんだけど?

チャイが好きィ!:本国民ってなんぞ? screamは、よかったよ! どっちかというとリンちゃん主体の作曲でしょ? 今度、リンちゃんの作曲でバンドやろうぜ!

お塩:チャイがまともな誘い方した!? screamはさ、耳の痛い歌だよ。でもさ、そういう気遣いって必要だと思うんだよね。特に我々、芸能人。

初bread:全くだね! もう、覚えるほど聞こうと思う! 我々は、一般人より仮面が剥げやすいし。

わー!ぐわー!?:仮面って表現が面白いよね! ネットが仮面舞踏会に見えてきた!

Elsa:説明しよう! 本国民とは……日本国民+本家がある国の略称である。なお、今考えた模様……。

デデデ:Elsa氏、日本語堪能すぎやしませんか?


「みんなありがとう! 感想嬉しいよ! そう、結構僕が主体で作った歌なんだ!」


 ある程度、リズムに合わせるために単語選びを特殊にしたりもしたらしい。でも、普通に通じていたし、これでもいいのだと思う。


「でもね、リン君ママに作曲してるところ、全然見せてくれなかった!」


 と、ママが言い出して、僕はびっくりだ。見たかっただなんて、知らなかった。


「言ってくれれば見せたのに……」

「だって、全く知らなかったもん! なんか、数字が……あ!」


 数字がたくさん書いてある紙。それはパッと見、楽譜だと思う人なんてほぼいないだろう。気付ける可能性があるのは、満さんと立花お姉ちゃんだけだ。


「それが、楽譜だよ!」

「だよねぇ……去年見たのに、すっかり忘れてた……」


 ちなみに、僕は普通の楽譜も、困らない程度に読める。ただ、書くときはどうしてもヘルツで書いてしまう癖が抜けないのだ。


 ただ、これに付随して困った癖もついてしまった。見た数値が可聴領域内の音の周波数に収まっていると、脳内再生してしまうのだ。1000円の値札を見て、脳内にB5とC6の中間の音が流れているのは僕だけのものだろう……。


お塩:どんな楽譜!!??

チャイが好きィ!:ごめん、リンちゃんの楽譜多分読めない……。バンド、できないかな?

初bread:安心しろ、読める奴のほうが少ない。俺も読めない

わー!ぐわー!?:まぁ、リン君ワールドということで……


 放送も、やはり楽しい。ただ……僕は、また寝落ちしてしまうのだった。



―――――――――――――


読者の皆様へ。手前勝手ではございますが、新作が本当に日の目を浴びませんので今一度宣伝失礼します。


新作:空狐なクー子はリアルです! ~もふもふお稲荷ママ、大切な狛狐のために頑張ります! 神様のお仕事と配信業! VTuberって言っておけば、狐でも大丈夫なんだよね!?~


https://kakuyomu.jp/works/16817139557821716696


こちらの作品では満のようにママ属性を持った、お狐が主人公となっております。

本作弟Vでは果たせなかった、ケモ耳生やしまくる野望を叶えた作品となっています。

VTuber要素は少し薄まっていますが、本埜自身、自作の特徴となっていると思える優しさにあふれたキャラクターはむしろこっちこそが濃厚と思っています。

もふもふ優しいお狐ママに癒されたい! 神様として頑張る、お狐ママを見たい! だけど、どこかポンコツなところがある女神様をからかってみたい!

そんな方々に自信をもってオススメする作品です!

もうちょっと、本埜作品で暇を潰したい方もぜひぜひ!

お暇な折にご一読ください!


では読者の皆様、毎度お読みいただき心から感謝です!

これからもよろしくお願いします!

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