ツルッといこうよ、つる美さん
雪ウサギ
1把 新生活
「よし!やっと自由だー!!」
大学入学を機にアパートへ引っ越してきたつる美は荷解きを終え、外で大きく伸びをした。
そして近所のうどん屋を開拓しようと動き出す。
新天地の見慣れない風景に心躍らせながら、歩いてると不意にどこからか声がした。
「君、美味しそうだね。」
「え!?」
突然のことで立ち止まり、誰かいるのかと周りを見渡すも人ひとりいない。
(うーん…もしかしたら疲れてるのかな。)
少し考えるも、自分の気のせいかもしれないというようにまた歩きだす。
すると背後から彼女の髪に、勢いよく何かが噛み付いた。
「へ!?いだだだっ!な、なに!?!?」
「あれ、うどんじゃない。」
つる美は髪を引っ張られ痛みに悲鳴をあげる。
そんな彼女をよそに、その生き物は想像していたものと違ったのかしばらくして噛むのをやめ呟いた。
「やっと離れた…って狐!?」
噛まれた髪を直しながら彼女が振り返ると、首をかしげ不思議そうに狐がこちらを見ている。
まだ自然が残る町中ではあるが動物が現れるのは非常に珍しい。
「も、もしかしてさっき喋ったのって…いやいや動物が話せるはずない!」
非日常的な状況に出くわし、彼女は狐を見たり考えたりと落ち着かない様子だ。
その隙に彼はつる美の前へくるとおもむろに話し始めた。
「さっき話しかけたのは僕だよ、初めて逃げられなかった。」
「ほ、本当に喋ってる!っていうか普通は噛み付いたら逃げるでしょ!」
目の前にきたしゃべる狐をまじまじ見ると、彼の言葉に呆れながらも返答をする。
「で、一体君は何しにここへ?」
つる美はなるべく同じ目線になるようにしゃがみ込むと、不思議そうに訊ねた。
彼は彼女の質問に回答をしようとしたが、それよりも先にお腹がなる。
「お腹空いてるのね。」
「山降りる時から何も食べてないからだ。」
つる美が音を聞いて微笑むと、彼は恥ずかしそうな様子で呟く。
「とりあえずうちそこだから、ついておいで。何か食べさせてあげるから。」
しゃべる狐に見兼ねた彼女は立ち上がり、手招きして自宅へと歩きながら誘導する。
まさか狐を招き入れることになるとは思ってもみなかっただろう。
彼はというと嬉しそうにしっぽを振りながら彼女についていくのであった。
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