第20話
あれから数日がたった。
エルは順調に回復し、リハビリを重ねていた。
最初は眠っていて落ちた筋力を取り戻すのに数日かかり、やっと歩けるようになった。
そこから素振りや筋トレをしようとしたが、まだ早いと治癒術師に止められていた。
1週間がたったころからやっと治癒術師からの許可がおり、素振りや筋トレを始めた。
筋トレをしていると、様々な冒険者から様々な筋トレの方法を教えてもらった。
素振りをしていると、様々な剣士から打ち合いを申し込まれ、さらには様々な剣の型を教えてもらった。
この剣士たちはエルが勝ったことに対してまぐれではないのか疑っていた。しかし、打ち合いをする中で実力で勝ったことを理解し、自分の持っている型を教え始めたのだ。
これは紛れもなくエルの努力が報われた証だった。
エルはもともとは貴族だった。しかし、家族は自分たちと違う世界を見ているという理由だけで彼を家から追放した。
追放されたエルは、スラムで生きていくしかなかった。
スラムでの生活は苦しかった。それでも生きるために冒険者になった。
冒険者になった彼は最初は苦労した。
それでもあきらめなかった。一生懸命に依頼をこなした。
そしたら人に恵まれた。周囲の環境が良くなった。
それをよく思わない人たちに絡まれた。
そして戦うことになった。
その戦いに勝った。
そんな彼をギルドマスターや商会長、受付嬢、高ランク冒険者は見ていた。
そんな彼を彼よりはランクが高いだけの冒険者は見ようとしなかった。
馬鹿にしていた。
彼を気にしなかった。
そんな彼らはエルが強くなったことを知らなかった。
エルが入院した時、ざまあみろと思っていた。
しかし、事の顛末を聞いて、彼らは考えを改めた。
今では、ギルドの職員だけではなく、冒険者の全員が彼を見るようになった。
エルは、心のどこかでは追放した家族を、馬鹿にしてきたスラムの人たち、冒険者たちを見返そうと思っていた。
そんな気持ちが無くなっていた。
それはなぜか。
それは、彼が冒険者ギルドに運ばれた際、なぜエルが治癒院に運ばれたのか、冒険者たちに説明があった。
その説明は、冒険者たちを驚かせるものであり、エルへの認識を改めるものになった。
そして、彼が寝ているときはお見舞いはせず、治癒術師に様態を聞くだけにしていた。彼が戻ってきたときに、彼を指導し、さらに強く鍛え上げようと冒険者たちは結束した。
そんな彼らに触れた結果、彼らを見返すというおもいは無くなり、彼の努力が向くわれた結果となった。
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