第23話
「えっと、こっちの方向でいいのかな」
腕時計に表示された地図を参照しながら、私は指定された武器販売店を探していた。あの悪夢の依頼のときに、私の武器やアイテムは全てロストしてしまった。冒険者にとって、武器やアイテムは貴重な資産だ。そのどちらも全て失ってしまった私は、本来なら再起不能だ。だが、今回も師匠が手を回してくれたようで、なんと指定の武器販売店で私の武器を見繕ってくれるという話だ。
あまりにも手厚いサポートに、申し訳なさが半分、何故私なんかにここまでしてくれるのかという疑惑が半分といった感じだが、私のような無能な人間に何かを期待してくれているのは確かだ。その期待にだけは応えなければならない。
そのまま地図に従い歩いていると、繁華街の方向ではなく、いかにも怪しいという感じの裏路地へと誘導される。しばらく案内に従って歩いていると、木の陰から突然1匹の黒猫が現れた。その猫がこちらに向かってゆっくりと歩いてくる。
(......怖い)
私は本能的に、そんな気持ちを猫に感じていた。才能や力が無い私でも分かる。この猫は、何かがヤバい。
「...合言葉は?」
当たり前のように猫は人語を喋った。驚愕の事態に頭がクラクラとするが、考えるのは後回しだ。今はその質問に答えなければならない。
「リンゴは超最高!...です」
師匠から聞いた合言葉をそのまま猫に伝える。それからふと、猫から感じていた謎の圧力が消えた。ハアハアと、私はただただ呼吸をしていた。
「話は聞いてる。ついてこい」
黒猫がトトトと歩き出したので、私もその後に続いて歩く。するとしばらくして、巨大な洋館のような建物が目の前に現れた。猫と私がその建物の前に近づくと、ギギギという音と共に、巨大な扉が開かれた。緊張しながら、その建物の中へと入る。
(わわ!す、凄い...)
初めに感じた感想がそれだ。なんというか、フロア全体が巨大な射的場のような感じになっている。1階、2階と、見るからに高級そうな様々な武器がズラッと揃えられており、武器の種類によって間取りなども異なっていた。
「ようこそ。裏武器販売店<黒猫の館>へ」
「ひゃあ!?」
気が付くと、いつの間にか物凄く美人な女性が私の後ろに佇んでいた。長い黒髪に、金色の瞳、頭部に生えた猫耳がピクピクと動いていた。
「お前がミカ・ミラーか」
「は、はい!師匠... いえ、アップルマンの紹介でここに来ました」
「...ふむ、本当にそこら辺に居る有象無象のクソザコにしか見えないが、あいつもいったい何を考えてるんだか」
「...はい?」
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