第5話

「2年前、世界には突然ダンジョンが発生しました」


 壇上から、凛とした声が講義室に広がる。


「皆さんもご存じの通り、この日はダンジョン・ショックと呼ばれています」


「ダンジョンは、その名の通りゲームの中のような世界です。このダンジョンを調べに行った人達は、突然未知の力を使えるようになりました。...はい、そこの君。その力とはなんでしょうか?」


「はい!魔法です!」


「はいその通り。ダンジョンに足を踏み入れた全ての人間に、魔法と呼ばれている力が目覚めました」


「皆さん、RPGゲームとかやった事ありますか? まさにあんな感じなんですよ、魔法っていうものは。炎を出したり、傷を治したり、凍らせたり、まさにゲームのような現象ですよね」


「...そして、2年経った今でもその詳細は分かっていません。それなのに、世界はもうこの力に依存してるんですよ。狂気の沙汰ですよね~」


 世界中で発見されたダンジョン。そこから持ち帰った魔石と呼ばれる新しいエネルギー資源。そして、正体不明の現象である魔法。これらの新しい力が原因で、今も世界は混乱の真っただ中だ。


「そんな中で、政府は特にヤバいと認定した人達に、あるライセンスを発行しました。それがこの冒険者免許ですね~」


 彼女はポケットから金色に光る冒険者免許を取り出した。


 冒険者免許は、その等級によって色が違っている。F~Dまでが緑、C~Aが青、S~SSが金色という感じだ。


 ちなみにSSSになると色が真っ黒になる。...何の嫌がらせだよ。


「ダンジョンに無資格の状態で行く場合、その人は国から一切の保証を受ける事ができません。というか、普通に冒険者にぶっ殺されるので、皆さん普通に免許を取りましょうね~」


 ダンジョン内は、言ってしまえばほぼ無法状態のような感じだ。殺しや略奪など、あらゆる無法行為が横行している。そんな中で、かろうじてこの冒険者免許制度だけが、ギリギリの状態で秩序を保っている。


「最後になりますが、人間皆平等などという、寝ぼけた思想を口にする人達が最近増えています」


「残念ながら人間は平等などではありません。今の世界は、ガチガチの実力主義なので、その事をしっかりと頭に叩き込んだ上で、楽しいキャンパスライフをエンジョイしてください。以上です」


 現役のSSランク冒険者の発言に、全員がポカーンとした表情を浮かべていた。残念な事に、彼女の言っていた発言は全て事実だ。力=パワー。これこそが今の現状を表している。耳障りの言い、「平等」などという甘い言葉は、最早この世界では通用しないのだ。

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