アップルマン~史上最強の配達人~
骨肉パワー
1章 最強の配達人
第1話
「ふいいい~ 疲れたぜぇ...」
夜勤のアルバイトを終えた俺は、格安のアパートでゴロゴロとしていた。ダラダラゴロゴロと、ただひたすらに怠惰で無意味な時間を過ごす。だがしかし、心の奥底ではもう、気が付いていたのだ。今の俺には、足りないものがある。
___金だ。
だからこうやって、ピカピカの大学1年生である俺は、深夜の時給の良いアルバイトに精を出しているというわけだ。確かに小金は稼げる。...稼げるが、それも日々の生活費や雑費などで消えていく。所詮兼業では、そこまで大した金は稼げないというのが現実だ。...結局のところ、それこそ人生を変えられる程の大金が欲しいのなら、宝くじでも買うしかないわけだ。
「...あ~。...なんか面白い事でも起きねえかなぁ...」
毎日登校して、毎日バイトして、毎日非現実的な事を考える。同じことの繰り返しだ。
___そんな退屈な日常に、俺は心底うんざりしていた。
ふと、腕時計で時間を確認してみると、画面には深夜の4時と表示されていた。明日も2限から講義がある。少しは寝ておかないとな。
そうして腕時計の電源を切ろうとした瞬間、腕時計が異常なレベルで光始めた。
「なっ...何だ!?」
10回ほどピカピカ!と光った後、何事もなかったかのように落ち着いた。シーンとした静寂と、ドクドクと鳴る自身の心臓の音だけが聞こえる。
「...故障か何かか? バックライトの設定がイカレたとか?...いや、でもこんな強く光った事なんて一度もないぞ」
そう思って、恐る恐る腕時計の画面を見てみると、なんだか画面がおかしくなっている事に気が付いた。...おかしい、俺は普段、メインの画面には時刻しか表示していないはずなんだが...。
「何だ?この画面は...」
画面には、何かの洞窟のような背景が表示されていた。よくよく見てみると、UIもおかしくなっている。
「......」
試しに画面をタッチしてみると、突然メッセージが表示された。
☆始まりの洞窟 Lv.1に挑戦しますか?☆
「うおお!?な、なんだこりゃ?」
画面にはYesかNoかの選択肢が表示されていた。そのまま画面は動かない。...つまり、こいつは俺の選択を待っているという事だ。
「...どうするよ?」
俺は自分自身にそう問いかけた。
何か、とんでもない事が起こっているんじゃないかと、冷静な心の中の俺が警鐘を鳴らす。...だがそれと同時に、俺の中の少年心が叫んでいた。
___行くしかねえだろぉ!?おい!!
燃え上がる衝動を抑える事ができない。脳のパルス信号とは別に、俺の指は勝手に動き出していた。
「...馬鹿じゃねえのか、俺はよ」
賢い人間だったら、きっとこんな場面でYesなんて選ばないだろう。そりゃそうだ。ただでさえこんな異常事態が起きているのに、これ以上リスクを増やすなんて、本物の阿呆がする事だ。...だが俺は、そんな馬鹿げた選択にこそ価値を感じていた。
___そうだ。きっとこれこそが、俺がずっと待ち望んでいた、チャンスだ。
___俺は時計に表示された、Yesの文字をタッチする。
「さあ、どうなるよ!?おっ!? おおおおお!?」
目の前の景色がグニャグニャと歪んだと思った次の瞬間、俺はわけのわからない洞窟に立っていた。
「やっべえ!やっべえぞこれ!?」
どうやら俺の腕時計に、とんでもなくファンタジーな機能が実装されてしまったらしい。...実に素晴らしい事だ。
「ん~ なんというか、ほんとにゲームのダンジョンみたいな感じだな」
洞窟の壁には松明が嵌め込まれていて、視界は明るい状態だ。通路の奥には、何か不思議な色をした箱が3つ置かれていた。何だろう?宝箱か何かだろうか。
俺は松明の明かりを頼りに、洞窟の奥へと進んだ。
「...んん。ここで行き止まりか」
3つの宝箱が置かれているスペースから先の道はなかった。つまりここが終点だ。
「何か看板が立っているな ...読んで見るか」
~人類で初めてダンジョンに挑んだ勇気ある者へ~
危険と知りながらも、未知を求め、前に進む者を私は尊敬する。
君の勇気を称えて、3つの選択肢を用意した。
どれでも好きな物を1つ選ぶといい。
その選択が、君の人生に鮮やかな光を灯す事を祈ろう。
「よく分からないが、この宝箱貰ってもいいみたいだな」
3つの内好きな物を選べるとなると、悩んでしまうのが人間というものだ。
「さて、どれにしようかな?」
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