プロローグ

プロローグ


 二回目だった。彼女が初めて生まれたのは…………。


 一回目は誰も残らなかった。

二回目も誰も残らなかった。


約束の時を誰一人迎えることができていない。ここで生まれ落ちたものはみんな消えた。

 最初から始めた。

でも変わらない。分かれ目から始めても結果は同じ。いつもいつも消えていった。約束の時には程遠いと言うのに…………。


 変化が起きたのはあの時だろうか…………?

 はじまりからちょうど…………。

 一滴の雫が落ち、波紋を広げた。



 そして…………。



 東の先、地平線から少し上に姿を置く日が光を地に降らす。


 一人の幼い少女が家の中を歩いていた。

家中の扉を開けては閉める。誰かいないか確認しているようだった。でも、その場所には彼女以外の人の気配が全くない上に人が居たという形跡すら全く存在していない。幼き少女が探す人物たちがはじめから居なかったような…………。

 すべての扉を開け終わっても誰も居なかった。

胸元で両手をきつく握り締める。髪に隠れた奥から光る何かが、見え隠れした。玄関へと向かう。


そして、また初めから繰り返す。家に入って直ぐにある扉を開けて中を探し、誰も居ないことを確認したら部屋を出て扉を閉める。次の扉に向かい同じ行動をする。

 何度も何度も…………。

誰も居ないその場所で。




 幾度同じ行動を繰り返したのだろうか。いつからか家の中には静寂が戻っていた。

いくつもの乾いた雫の跡が木製の床に残る。涙も枯れ、感情の抜け落ちたような顔を窓から差し込む月明りが照らす。幼い少女は誰かが居たはずの部屋の片隅で力なく倒れていた。だらりと投げ出された手が誰かを求めるように伸ばされる。空を切ったそれが床に落ちた。

唐突に体を起こし、立ち上がる。ふらりふらりとおぼつかない足取りで家の外へと通じる扉へと向かう。

 倒れ込むように扉にぶつかりながらも、開けて外へと歩みを進めた。

月の光、星の光が遮られ、辺りが暗闇に包まれる。


『おねえちゃん…………!!』


 声が響く…………。



 誰にも届かぬその声は声の主と共に闇に飲まれていった…………。







〈あとがき〉

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