第179話 追憶「エピローグ」

 領都コウシャン。

 その一室。


「今年の魔法学校への入学者のリスト?」


「はい、やはり人数は少ないですね」


「しょうがあるまい、魔物の氾濫での被害も大きかったし、復興もまだ途中の所ばかりだ、魔法量を測定する方も領都の近郊に限られてしまったからな」


「ええ、ですが事前に測定して適性が認められている子供も居るはずなのですが、入学リストにありませんでした」


「それは、戸籍の再構築が進んでいない為だな。

 村や町の再統合や再配置で、何処に誰がいるのか判らなくなっている地域も多い」


「領都に居ると判らないことですね」


「まあな、それよりも領主様から指示が出ている、魔術師の運用方法を再検討する件はどうなっているかね?」


「まだこれからですね。

 でも、魔術師や魔導師に関しては国が基本的に管理するのですが、それを覆して良いのでしょうか?」


「それを考えるのは我々の役目では無い」


「はい、失礼いたしました。

 魔法学校への新入生に関しては、今まで通りで進めています」


「ああ、それで構わない、使えない者は早めにふるい落とすように」



■■■■



 私シーテを含む達視察団のチームは、今回の護衛を最後に領軍を退軍しコウの町の住民となる。

 その手続きを行うために領都に向かうついでに、魔法学校へ入学する子供達を護衛することになった。

 護衛は、その中にマイちゃんが居るのも理由の一つだ。

 だが、特別扱いは出来ない、私達が保護したことになっているのは商人達も知っているけど、子供達は知らない、マイちゃんにだけ構うと不公平感が出てしまうだろう。

 今後の学校生活に支障が出かねない。


 私は、戦闘が出来る魔術師として領軍に残ることを強く求められたが、固辞した。

 それと、私達が冒険で入手した魔法の武具は領軍が買い上げる事に成った。

 事実上の強制で、嫌なら辞めるなということだ。

 相棒とも呼べるほど使い込んできた道具だっただけに、後ろ髪を引かれたが新しい生活するため資金になると思って受け入れた。

 領軍に所属していたからこそ所持が認められていたような物だからね。



 領都への移動は、コウの町から野宿をはさんで東の村で1泊し、次は東の町までの間は野宿が続く。

 コウの町と東の町との間の村々が殆ど壊滅したか廃棄されたため。

 野宿は、その廃墟を利用して行うので、負担は少ない。

 東の町までは、荷馬車では5日前後かかる。

 普段は、馬に乗っての移動なのでその倍近い時間が掛かる。


 東の町の被害は酷い物だった。

 東の町の周辺にある村は半分以上が廃墟になっていた。

 東の町も遠目に見て、幾つもの戦いの跡が町中に残っていた。

 外壁も、いたる所で修復中だ。


 東の町で、東の町から入学する子供達の荷馬車と合流して数日休み、移動。

 荷馬車は6台になる。 町からの護衛の冒険者達は知り合いで、冒険者として活動している領軍の部隊の一つだった、偶然では無いだろう、実力は申し分ない。

 また、約10日近くかけて移動する。


 旅の中では、特出することは起きなかった。

 1度、オーガが1体現れたが、視察団のチームと護衛で難なく討伐されたくらいだ。

 私の魔術の出番は無かった。


 不安があるとすると、マイちゃんだ。

 他の子供達とあまり交流していない、まぁ、判らなくも無いけど、上手くやって欲しいと思う。






 コウの町を出発して20日近くを過ぎ、温かい風が吹くようになった頃、私達は領都コウシャンをその目前に捉えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る