光目指して黒く

くもまつあめ

はじまり


 昔、世界が悪魔と唆された人間たちによって破滅寸前になったとき、神の国から偉大な魔法使い7人が遣わされた。そして人間の世界から選ばれた勇者と共に世界を救った。

長い戦いの後、魔法使いは勇者と共に人間の世界に残り人として生き、この世を守ることを選んだ。魔法使いたちは世界に散り、力は各地で魔法を使える証(あかし)と呼ばれる痕を持つ子が生まれることで受け継がれていった。

長い年月をかけ人間の間に魔法の力が行き渡り、証を持つ人間とそうでない人間に分れた。

魔法を使えるものはその力を活かして、そうでないものは知恵と技術を活かし暮らしている。

魔法は身近で便利をもたらす存在であり、また尊敬と畏怖の対象であった。


 エーベルス一族は、帝都アネカルから南西に位置する小さな地方都市エーベルスに暮らしている。

光の魔法の証を宿して代々解呪や破魔の力で人々を多く救っており、帝国内外からその力を求めて多くの人々がこの街を訪れる。

その中でも、トーマス・エーベルスの一家は突出して強い力をもっていた。

主トーマスは光の証を持ち、悪魔や霊につかれた解呪の魔法を得意としていた。

その腕は確かであり、強い信念と魔力で祓えない悪霊はいないと評判であった。

そのトーマスの妻マリアは魔法は使えないものの、医師でありケガや病気の治療に熱心だった。

誰にでも平等に優しく接するその姿に患者からの信頼は厚く毎日多くの患者が押し寄せた。

二人は総合医療所を開設しており、トーマスが魔法で、マリアが医学で人々に救いの手を差し伸べていた。


トーマスとマリアの間には四人の子どもが生まれた。

長男のヨシュア、長女のララン、次女のルルン、次男のカミールである。

長男のヨシュアは証が現れず、トーマスは落胆した。

しかし、当のヨシュアは全く気にもせず、すくすくと明るく育った。

その三年後、長女のラランは生まれた時から左耳の後ろに小さな証があり、光の魔法の使い手に多い銀髪をもって生まれてきた。

トーマスは大変に喜び、ラランを溺愛した。

魔法使いの後継誕生と一族の繁栄が約束されたと大変な喜びようだった。

ラランから二年後に生まれたルルン、その翌年に誕生したカミールにもそれぞれ背中と首に証があり、トーマスは鼻高々だった。

母マリアは子供に証があろうがなかろうが関係なく健やかであればよかったが、トーマスが子ども達を愛し誇りに思ってくれていることに満足し、幸福な毎日を送っていた。

このまま繁栄と幸せはいつまでも続いていくのだとトーマスは信じて疑わなかった。

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