ムエン。ゲンエ。

影神

解かれしモノ

和風造りな。


懐かしい家。


裏側には広い庭があって、、


ここは、私にとっても。


ワケのあるの家だった。


叔母さんは、有名な祓い屋だった。


本当に居るのか?


変な宗教かよ??


そんな意見が意図も簡単にも飛び出て来そうだが。


その者達の期待を遥かに裏切るかの様に。


叔母さんを頼る人は沢山居たし。


そういう世界が身近に在ることを。


少なくとも私も信じていた。


何故なら。


彼女が。


そう、信じていたからだ。


目に見えない者は信じない。


都合の良い事は、何の信仰もないくせに。


神様とやらに。


当たり前に、お願い事をする。


仮に。神様がいるのならば。


その他も存在しないとは、言いきれない。


私はと言うと。


神様は、信じないが。


その他は、信じていた。


何故なら。


こうして。


見えているのだから。。


私の価値観は、普通よりも真逆の考え方なのだ。


まあ。私の私情や考え方の話はどうでも良い。


叔母さんの話に戻ろう。


叔母さんは、皆から叔母さんと呼ばれている。


親しみを込めてなのか。


正直理由は分からないのだけれども、


そう呼ぶのが普通だった。


叔母さんは叔母さんなのである。


叔母さんは沢山の者を救い。


沢山の者を導いた。


でも叔母さんも人間だから。


どんなに良い人と呼ばれようとも。


どれだけ有能だったとしても。


歳だけには勝てなかった。


「あの人には関わるな」


と。私はよく両親に言われた。


それは決して私の身を案じてではなく。


ただの両親達の身勝手な偏見だった。


でももしかしたら。


いや。百歩譲って、、


心配してくれたと仮に仮定したとしても。


私はそれを一切受け入れる事は出来ないのだろう。


一部の人間から嫌な目で見られても。


どれだけ自分が危険な目になろうとも。


自分の信じた道を。


自分のやるべき事を成す姿は。


決して。


他者に馬鹿に出来るモノではないと。


子供ながらにして。


その事をきちんと理解していたし。


それだけ、


私は彼女の事が大好きだった。


「大丈夫かい??」


叔母さんは、大丈夫の意味を、


分かっているのだろうか。 


その言葉を聞かれた時には。


「叔母さんこそ、だよ?」


そう言い返せれば良かったのに。


まだ何も知らなかった私は。


心を閉ざしておく事しか出来なかった。


全ての元凶は。


彼女が死んだ事から始まった。


それからは、叔母さんとは殆ど会わなかった。


両親が会わせなくなったから。


といううのが一番だろうが。


叔母さんが忙しいのもあった。


何しろ同時に息子までもを亡くしたのだから。


いろいろとあったのだろう、、


もうここには来る事も無いと思っていた。


それなのに。。


私はこうして、この家に居たのだった。


この家が。嫌いだったハズなのに、、


今。家の中に居る。


この家には女性が5人と。


男性がひとり。


父親は、死に。


私の大好きだった姉さんが死んだ。


何度もしつこいが。


私にはそれが全てだ。


理由は、よく覚えてないが。


仕事絡みによる死だったそうだ。


叔母さんの補助として。


父親はサポートしていたらしいが、


他のきょうだい達は継がなかった。


父親は優しい人だった。


小さい頃にたまに会うと。


頭を撫でてくれたし。


姉さんには沢山可愛がって貰えた。


本当に。


大好きだった。


そんな2人がこの世から居なくなってからは。


親族から宗教だのオカルトだの色々言われ。


父親と娘が死んでからは皆が距離を置く様に、


次第に関わらなくなっていった。


この頃からだろう。


両親の陰口は増えていった。


きっと。母は。


弟が死んだ事が受け入れられ無かったのだ。


父も連れて悪口を言った。


だから。姉さんを含め。


嫌な思い出を甦らせるこの家には。


来るつもりなんて。無かったのだが、、


「やあ。


大きくなったね??」


親戚の母親に髪をくしゃくしゃにされた時には。


既に全てが手遅れだったのかも知れない。


いや、、これは。


"運命"だったのかも知れない。


ふと。家から出たくなって。


何て言うか。突発的な衝動に駆られた私は、


散歩みたいな事をしていた。


すると、突然。


いや、必然的にも。


ばったりと会ってしまったのだ。


叔母さんに。


最初は誰だか分からなかった。


もう、何しろだいぶ会って無かったのだから。


「元気にしてたかい?」


私に言っているのだろうか?


人間違いか??


そう。困り果てていると。


「お婆ちゃん??


えっ、、」


私の大好きだった姉さんと瓜二つの顔が現れた。


この家の長女との間に。


気まずい空気が流れた。


「久しぶり?


男になったか?」


そう馴れ馴れしく私の肩を叩いたのは、次女だった。


次女とは、よくゲームをしていた。


彼女も。


よく私と一緒に遊んでくれた。


次女も大して変わらなかった。


次女「姉ちゃん、、


荷物全部置いていくなんて酷いぜ?」


長女「ごめんごめん、、


お婆ちゃんが心配で。」


次女は相変わらずの男っぽい感じだった。


長女の方はあまり、、見たくなかった。


彼女は双子だった。


理由は言わずとも分かるだろうが。


端から見れば。彼女だ。


でも、彼女は居ない、、


どうしても思い出してしまう。


「うっ、、」


叔母さんは、いきなり倒れ掛けた。


『大丈夫?』


長女と手がぶつかった。


私は咄嗟に叔母さんを支えた。


次女「イチャイチャすんな!」


長女「違うよ!!」


何だか。懐かしかった。


親戚を含め。


自分の親も。


皆嫌いだった。


でも、私はこの家の人達だけは好きだった。


徐々に記憶が甦ってくる。


叔母さん「悪いけど、、


家までおぶってくれるかい?」


長女「タクシー呼ぶ、、」


それを遮るかの様にして次女は、


「ああ!


私。


予定あるんだったわ!!


早く帰らないとね?婆ちゃん!?


ほら!しゃがんで?」


強く肩を押され、脚を曲げる。


叔母さん「悪いね??」


「いえ、、」


叔母さんは、軽かった。


もう、本当に。


掴んで居ないと消えてしまうぐらいに。


次女の後を追いながら。


私はゆっくりと歩く。


叔母さん「皆は元気にしているかい?」


「すいません。


私はもう、関わりが無いので。。」


叔母さん「そうだったかい、、」


両親とも縁が切れ。


ある事無い事を言われるのが嫌になった私は。


自分から帰る場所を無くした。


独り暮らしは嫌じゃなかった。


やっと出来た。


それが素直な感想だった。


次女「着いたよー。


ただいまー?」


玄関の前には、男性と、女の子が居た。


「私はこれで、、」


ゆっくりと、叔母さんを下ろすと、


次女「ゲームしねえのか!?


前みたいにしようぜ?」


"前みたいに、、"


か。


私の顔色が良くなかったのか。


次女「わりい、、」


察した次女が謝ってきた。


言葉を返そうとすると、 


「あら。久しぶり??」


ガラガラと玄関を開ける音と共に。


後ろから抱き付かれた。


「こんなに大きくなってえ。


私の事覚えてる??」


親戚の母親に髪をくしゃくしゃにされる。


男性「母さん。やめなよ、、


お婆ちゃん。


なんで外になんか行ったの?


せめて僕にも声掛けてくれれば。」


叔母さん「ごめんねぇ?」


女の子「ばあば大丈夫??」


叔母さん「大丈夫だよ? 


良い子にしてたかい??」


女の子「うん。」


私を置いて。


皆は家の中に入って行った。


親戚の母親「夕飯食べていくでしょ?」


「大丈夫です、、」


親戚の母親「なあに。遠慮しないで!!」


背中を押され。強引に上げられた。


「お邪魔、、します。」


家は何処か懐かしかった。


雰囲気を。まだ覚えていた様だ。


親戚の母親「おっきくなって。 


何か飲み物でも、、」


次女「おーい。こっちー!!」


声のする方に視線を送る。


奥に明かりが見えるが、


廊下は真っ暗だった。


親戚の母親「遊んであげてちょうだい?


飲み物は後で持って行くから?」


頭を軽く下げて。


明かりの方へと向かう。


途中。


御札でびっしりに貼られた部屋が、


少しだけ照らされた明かりで見えた。 


私は何も見なかった事にした。


『目を合わせるな』


そう、身体が反応したから。


部屋は何だか懐かしかった。


大きな部屋で、下は畳。


中からは広い庭が見える。


「お邪魔します、、」 


襖をゆっくりと閉める。


次女「はいっ。」


座布団と。コントローラーを渡され。


一緒になって座ってゲームをする。


隣からの視線が。明らかに私を捉える。


女の子「この人だあれ?」


女の子は、距離が近かった。


次女「遠い親戚だよ。


えっと、3女。」


「どうも。」


軽く頭を下げる。


次女「母ちゃんの手伝い終わったの?」


画面を見ながら器用に話す。


3女「まだ。」


3女は、じっと私を見つめる。


一定の距離で見られる視線がきまずい、、


何か話した方が良いのだろうか。


こういうの自体が久しぶり過ぎて。


どうしたらいいのか分からなかった。


次女「良い子にしないと。


ばあば悲しんじゃうよ?」


3女「嫌だ。」


次女は、察してくれたのか、


次女「じゃあ。


行ってきな??」


3女「はーい。」


慣れたように3女を遣わした。


男性「あの。。


お婆ちゃんが呼んでます、、」


次女「じゃあ、変わって」


目線を後ろへとやる。


いつの間にか後ろの方で見ていた長女に


私はコントローラーを渡す。


長女「うん、、」


2人の視線は互いに合わない。


きっと。2人とも、、


わざと逸らしているのだ。


男性「こっちです。。」


再び御札の部屋を通る前に。


男性が襖を閉めた。


左には2階へと続く階段があり。


少し進むとさっき居たキッチンがあった。


「もう少し待ってね?」


そう、親戚の母親に声を掛けられた。


男性「母達が強引ですいません、、


お婆ちゃんも、何で今日なんかに、


外に、出たのか。


あっ。


申し遅れましたが、、長男です。


多分初めましてですよね?」


「初めまして、、」


多分小さかった子だろう。


あまり関わる事が無かった。


小さかったし。


親戚中の人気者だったから。


私達とは一緒に居た事は無かった。


話せる年齢でも無かったし。


今じゃ随分としっかりしている。


さっきの言葉に多少の違和感を感じながらも、


突き当たりを曲がると、扉があった。


トントン。


長男「入るよ?


来てもらったよ?」


叔母さん「ありがとう。」


ゆっくりと叔母さんは布団から起き上がる。


祖母さん「大丈夫かい??」


こうして。


話の最初くらいに繋がる。


祖母さん「すまないね、、無理に上げて。」


「いえいえ。」


長男は、部屋から出て行った。


叔母さん「やっぱり外は良いね?」


「はい、、


でも。


あまり、無理しない方が、、」


叔母さん「そうだね、、


もう。こればっかりは、、


仕方がないよね。。」


叔母さんが私の手を強く手を握って。


私の眼を見た。


そして、何か意味深な事を言った。


祖母さん「私の力が弱まれば。


あれの"封印"は解かれる。 


そしたら、皆をよろしく頼むよ??」


「えっ、、?」


何の事か。


その時の私にはまだ分からなかった。


トントントン。


親戚の母親「ご飯よ??」


叔母さん「あぃよ。


ういっ、しょっ、、」


身体を起こそうとしているのを優しく支える。


叔母さん「わるいねえ、」


3女「お婆ちゃん?」 


手には小さなテーブルに。


夕食のメニューが並べられていた。


叔母さん「あら。ありがとうね?


向こうで食べておいで?」


「はい。。」


再びキッチンの横を通ると、


親戚の母親「もうちょっとだから。


待ってね??」


と声を掛けられる。


「はい。」


さっきの事が気になりつつも。


畳の部屋へ戻ると。


何だか空気が違った。


次女「またあいつらか、、」


長女「、、。


お婆ちゃんがああなのにね、、」


向かいの廊下には、誰かの後ろ姿が少し見えた。


誰かお客さんが来てたのか。


テーブルには、日本酒と。 


いくつかの陶器のコップがあった。


次女が私に気付くなり、声色を変えた。


次女「婆ちゃんどうだった?」


「少し。調子が悪そうかな?」 


話ながら襖を閉めた。 


長女「やっぱり、、  


連れていかない方が良かったのよ、、


本当に。ずっと寝たきりで。


なのに今日に限って行きたいって、、」 


次女「まあ。


良いじゃん?


また逢えたんだし?


ね?」


何て言って良いのか分からなかった。


すると。


部屋がガタガタと揺れ始めた。


地震??


いや。違う。


鳴っていたのはさっき閉めた襖だった。


ガタガタガタガタ。


慣れた様に。


襖の前に次女が座って居た。


長女は離れた所に。


怖がる様な表情を浮かべていた。


ザァ、、


次女が襖を開けると。


何故かもう1枚の襖があった。


あれ、、?


1枚しか無かったはず、、


そんなことを考えて見ていると。


2枚目の襖の下には何故か、


ガラスのようなモノがあり。


こちらから。


向こう側がはっきりと見える様になっていた。


そのガラスには、


長い髪から黄色く光る目が。


こちらを見ていた。


それは明らかに異様だった。 


次女「出ちゃったか、、


仕方ない、、」


次女は、それを部屋へと入れようとする。


「開けちゃ駄目だ!!」


思わず声が出た。


襖が開かれると。 


それは、這うようにして。


私の足下の所までやって来た。


私は思わずテーブルの上に置いてあった酒を


それめがけてかけた。


ジュゥ、、


と。何が焼ける様な音がしたが、


「キカネエヨ?ソンナノ、、


ソレヨリモ。


アイツラガマタクルゼ?」


貪る様にして酒を飲む。


いや。浴びるのが正しいだろうか。


口から溢しながら。


高く持った酒を口へと入れる。


異様だった。


「バアサンナカンカヨンダラ。


アレハ。


シヌゾ??


ソレヨリモ。


サケヲモッテコイ。 


ヒサシブリニデレタンダ。


ワタシガアイテヲシテヤル。」


次女はキッチンの方へと走って行く。


「母ちゃん酒!!!」 


長女「どうして出てきたのよ、、?」


震える声で長女は話す。


「デデキタンジャナクテ、デラレタンダ。


ソレニ、ナツカシイニオイガシテナ??  


オマエ。


ミエテルナ?」


長女は驚いた声をする。


長女「えっ。


見えてるの、、?」


「サッキ、サケヲカケタダロウニ」


それは、私を倒して。


馬乗りになった。


長女「どうして??」


どうして。


いや。どうなってんだ、、


次女「酒持ってきたよ、、


って。


人様に何しとんじゃあああ!!!」


上の者は、まるで瞬間移動したかの様に。


天井を向いている視界の。


ギリギリで捉えられる別の場所に居た。


ゴツン、、


陶器は勿論。私目掛けて飛んできた。


次女「やべっ。」


長女「なにやってるのよ!!」


あぁ。。


意識が遠退いて行く。


酒を飲む姿が。


何だか。


姉さんに似ていた気がした。


まるで姉さんが。


ジュースを飲んでいたみたいだった。


気が付くと朝だった。


私は布団に入っていた。


腹が減っていたからか。


本能的に匂いのする方へ向かう。


親戚の母親「あらっ!! 


おはよう?


大丈夫だった??」


頭を優しく撫でられる。 


親戚の母親「はいっ。


朝御飯。」


渡されたお皿とお握りを持ち。


寝ていた場所へと戻る。 


「あれ、、」


私は、、


手に持った皿を見ると袖が違うのに気付く。


服が。


違う、、


それを見ていた親戚の母親は、


何かを思い出したかの様に話し出す。 


「あぁ。


濡れたから着替えさせちゃったわよ??」


頭痛と変な違和感を感じながら。


部屋へと戻ると。


長女と次女と。長男が居た。


長男「大丈夫でしたか!?」


長女「、、おはよう」


次女「おはよう!!」


御札の部屋は開いていて。


中には大量の紙切れが破れて落ちていた。


少しずつ。


回線が繋がってゆく。


「あぁ。。!!」


私は裸を見られた。


親戚の母親に!!


そして。 


「ウマイナ?」


私の耳元に居るそれは。


初恋の姉さんだった。 


ギュッ、、


無意識に。抱き付いた。

 

逢えた事が嬉しくて。


姉さんにくっついた。


バタン、、


体勢を崩し。


私が寝ていた布団に倒れる。


次女「それ。


中身が違うよ?」


長女「ちょっと。


朝からやめてよ、、」 


何故か長女は顔を赤くしている。


「オソワレルウ、、」


「中身が違う??」


布団に倒れながら私の貰った朝食を食べる姉さん。


お腹が捲れている所に直接触る。 


「生きてる??」


触っている感触はある。


姉さん「ナンダ。 


コウビカ?」


次女「わあ。


お兄ちゃん欲しかったんだよね。」 


長女「だから、やめてよ!!」


照れながら私の手を離す。


それを廊下から覗く様にして、


見ていた親戚の母親は、


手に料理を持ちながらニヤニヤと話す。


「あらあら。


複雑な感じ??


私がもう。


唾付けちゃったわよ??」


次女「じゃあ、次予約。」


長男「こんな家族ですいませんすいません、、」


こうして。


流れで私は。 


後に。


この家を守る事になったのでした。


3女「おはよう、、」

 

『おはよう』


それはまた、次回に。


「サケ。」


次女「まだ早いわ!!」





















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ムエン。ゲンエ。 影神 @kagegami

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