ガチャ(仮)

あに

ガチャ

第1話 ガチャ

 なげぇよ……


『君の人生が変わるかも!ここをクリック!』


 こっちは漫画の続きが読みたくて、よくある三十秒広告見なきゃいけないのにこの広告は長すぎるだろ。しかも諦めて戻ろうとしても戻らないし、スマホの電源ボタンすら効かない。


「アホらし……スマホ壊れてしもた」

 ウイルスでも入ったか?

 ベッドにスマホを放り投げ、天井を見上げる。

 古い木造アパートに住んで五年、三十過ぎの男からスマホ奪ったらダメっしょ。

『だーかーらー、君の人生変わるかもっていってるでしょ!』

 スマホから垂れ流しの音声に苛立ってくる。

「だぁー、うるせぇなぁ!」

 枕をスマホに乗せて一息。


「……変われるもんなら変わりたいさぁ」


 イケてないおっさんのイケてない人生。


 せっかくの休みも家でゴロゴロ、漫画を読みつつ「俺ならこうするけどなぁ」「ここはグッといけよ!」などと独り言を言ってはいろんな漫画にハマっている。

 もちろん彼女もいないし、友人とはよくて半年に一回程度の生存確認。

 仕事は派遣で、労働に対する賃金にも文句はない。


 ない。


 ない……が、そのうち何か変わればいいなと思ってる普通のおっさん。


『……シクシク……シクシク』


 ……なんなんだよ。スマホから聞こえてくる泣き声。ただの広告の筈なのに泣き声に変わるとか。ホラーじゃねえか。


 そっと枕をどかしてみると、

『ずごじぐらぃ…ヒック……ばなじぼぎぃでよおぉ』

 スマホの中で顔中の穴から液体を撒き散らしながら広告の女の子が喋りかけてきていた。

「お、おう」



「んで?俺がクリックしてガチャればスマホは直るんだな?詐欺じゃねえんだな?」

 あれから広告の女の子の話を聞くと、どうやら広告ではなく神様の使いらしい。

『疑り深い!私と喋ってる時点でおかしいと思わないの?』

「分かったよ。んじゃポチッと」

 画面が切り替わり、よくあるガチャの画面?

 ガコンッ……

「なんだ……ノーマルかよ」

 パリン……シュゴッ……パリン……シュゴッ……

「お、お、演出凝ってるなぁ」

 白→赤→銀→金とガチャが割れて変化していく。

「おぉー虹じゃん」

 最終的に虹に変わって喜んでると、

 パリン……シュゴッ!!

 まっ黒に変わってしまったガチャ。

『パンパカパーン!超大当たりぃー!』

 スマホからの音がデカい!

「……虹の上が黒?意味不明だが」

『いいから開けてみ!人生変わるぜ!』


 意味不明だが画面をタッチすると、ガチャが割れる。


『GR スキル ガチャLv1

     神からの贈り物』


「ガチャからガチャ?……しかも贈り物って!?」

 

『ゴッドレアおめでとうございますー!それではよい人生を!』

 プンッ……

 スマホの画面は元の漫画サイトに戻っていた。


「……えっ?」

 嘘だろ?貴重な休みの一時間ほどを費やしてこれでお終い?


「……だるぅ」

 漫画の続きを読む気にもならずスマホをホーム画面に戻す。すると派手なアイコンが増えていた。


『GRガチャ』


 いや、勝手にダウンロードしてあるし、何の説明もないから……俺は無視して寝る事にした。


 

「あふぅぅ……結局あのまま寝てまったのか」

 スマホをみると夜中の二時。あの後は漫画を読む気にならずそのままベッドに身体を預けて寝てたようだ。


「てか、夢じゃなかったわけで……アイコンあるし」

 派手なアイコンはそのままだった。アイコンを消そうとスマホを弄るが何故か消えない。しょーがないので立ち上げてみる。


[初回ボーナス GR一個確定十一連ガチャ無料+スキル無限カードホルダープレゼント]

[ログインボーナス 一日目 百万G]

[期間限定ボーナス 一万G]

[神の使いボーナス 恩恵・ステータス二倍]

[神の使いボーナスオマケ デコピン]


 ゴスッ!

「ーーーーーーーーーー」

 スマホをみてたら指が出てきて額に強烈なデコピンをうけた。


「いたぁぁぁ!!」


 痛み引いてきて画面を見るとメールボタンが光っている。

『From 神の使い

 私を泣かせた罰です』

 ……この怒りはどこに放出したらいいのかわからずベッドに顔を埋め叫んだ。



「……腫れてんじゃねーかよ」

 額を触りプックリと腫れてるのを確認。あのくそ神の使いとやらは許さない。

 眠気も覚めたので気を取り直してとりあえずボーナスとやらを受け取っていく。

「てかよく考えたらファンタジー?ホラー?」

 スマホから指が出てくるとかありえないだろ。スキルとか書いてあるし、ステータスは?

 ブンッッ!

「のわっ!!って」

 思わずでかい声を出してしまったが、いまは夜中だ。しかし本当にステータスがでてくるとは驚いた。


名前 三村 秀

年齢 32歳

Lv 0

HP 10/20

MP 2/2

スキル 無限カードホルダー

ユニークスキル ガチャLv1

恩恵 ステータス二倍


 目の前に半透明な画面がある。よく漫画でみてたやつだ。

「レベル0って上がるの前提?てか、デコピンで半分もHP減ってるし……痛えわけだ」

 漫画や小説だとモンスターと戦ってレベル上げ?……いやいや、日本にモンスターがいるわけないし……出てくるの?


 とりあえずガチャ回せばいいんだよな?

「初回無料の十一連を……良いのでてよ」

 ゴロゴロ……ポポポポポポポポポポンッッ!


 スマホの画面にはよくあるガチャ画面から勢いよくカプセルが転がってきて、出てきた順に並んでいる。

 試しに白いカプセルを押してみると、ポンッと音を立ててカプセルが割れる。

『N 低級ポーション』

 ゲームだな。ポーションってよくある傷などを治すやつか……あとは白が三個、赤が二個、青がニ個、銅と金が一個。

「とりあえず開けていくか」

『N 解体用ナイフ』

『N 鉄の剣』

『N 銀貨十枚』

『HN オーク革の胸当て』

『HN ガララジャのウエストガード』

『R オーガ革の脛当て』

『R スキル・解体』

『SR スキル・二段ジャンプ』

『UR ユニークスキル・インベントリー』

 

 赤がHN、青がR、銀がSSR、金がUR。

「銅と金があるから銀は出てないのか、てか俺はこれから冒険すんのか?……ん?」

 スマホ画面が光っているので見てみるとガチャから黒色のガチャが一個出てきた。


 GR確定ガチャ十一連だから最後に黒がGRか……まぁ、最高レアだろうし何がでるかな?

『GR 人生が変わる!ハッピー異世界ご招待券』




「いや、いらねーし!いかねーし!」

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