掌編・短編集
夏目一馬
夢 一
こんな夢を見た。
二人で縁側に腰を掛けていた。黄金色でぼやぼやしていた太陽は、いつの間にか真っ赤な丸になっていた。蝉の声に寂しくなってぼうっとしていると、隣に座った女が寂しいですね、と声をかけてきた。ええ、とのみ答えて、またぼうっとしていると、今度は、あなたはいつまでここにいますか、と尋ねてきた。いられるものならずっといますよ、と、再び斜陽に目を向けた。
少しずつ、それでも目に見てわかるように真っ赤な夕陽は地面に向かって落ちていた。真っ黒な烏がその赤を横切った。もう、行かなければなりません、と女は立ち上がった。なぜです、ほら、まだあそこにある百合も咲いていませんのに、と留めようとした。会わなければならない人がいるんです、と。それならしょうがないですね。肩の力を抜いた。あなたはあの花が咲くのを待っていればいいんですよ、私がいてもおかしいですから、と苦笑した。そうでもないような気がしたが、ぼうっと真っ赤な丸を眺めていると、とくに気にかからないことのように感じた。
一人で縁側に腰を掛けていた。ゆっくりと空を振り仰いでぼうっとしていたら、さっきまで全身を空中に浮かべていた丸は、いつのまにかその半身が地面に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます